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究極の軽さを求めたLAVIE Hybrid ZERO開発者が語る技術の粋

〜新開発のヒンジやタッチパネル、超軽量キーボードの開発秘話も披露

11.6型2in1のHybrid ZEROの開発などに関わったNEC PCのメンバー

 NECパーソナルコンピュータ株式会社(NEC PC)は21日、今月の13日に発表された11.6型2in1の「LAVIE Hybrid ZERO」に関する技術説明会を開催した。

 11.6型着脱式2in1で世界最軽量となる「約798g」を達成したHybrid ZEROシリーズだが、そのコンセプトである“軽さ”をどのように実現したのか、NEC PCで第一商品開発部に所属するLAVIE Hybrid ZEROの開発メンバーらが壇上に立ち、技術解説を行なった。

NEC PCは今回のLAVIE Hybrid ZEROにおいて、11.6型着脱式2in1で世界最軽量の約798g、11.6型タブレットでも世界最軽量の約398gを達成した

着脱式2in1という新しい形のHybrid ZEROに投入された多くのアイデアと技術

NEC PC 第一商品開発部 設計技術部 梅津秀隆氏

 LAVIE Hybrid ZEROは、その前身であるLaVie Zの頃から、3世代に渡って常に世界最軽量を求めて進化し続けてきた。そうして誕生したのが第4世代となる今回の着脱式2in1のHybrid ZEROだ。タブレットとしてのハンドリングを重視し、その重量を突き詰めるために着脱式の機構を採用した。

 11.6型のLAVIE Hybrid ZERO(以下Hybrid ZERO 11)を設計したNEC PC 第一商品開発部 設計技術部の梅津秀隆氏は、軽さをコンセプトとするHybrid ZERO 11を作る上で、2in1では一般的な360度回転するヒンジ機構を採用してしまうと本体重量が上がってしまうことや、軽量なWindowsタブレットを作るのはARMのSoCを搭載したAndroidタブレットなどと違い、圧倒的に難易度が高いといったさまざまな問題に直面した。そうした課題を解決するために、今回のHybrid ZEROでは今までになかったものを改めて作る、というスタンスで開発に挑んだという。

11.6型Hybrid ZEROに用いられている技術

 梅津氏は試作機として第3世代のHybrid ZERO(13.3型)を用いて検討を進め、その過程で軽量な着脱式2in1が必要とする要素を浮かび上がらせていった。その中で、FFF構造に代わる軽量で非光沢のタッチパネルの開発、着脱は容易だが剛性のあるドッキング機構、インターフェイス類をタブレットに集中させないための最適な配置などが必要であることが見えてきたという。

11.6型脱着式LAVIE Hybrid ZERO誕生までの道のり
試作機を通して見えた着脱式PCの必要要件

 タッチパネルは、13.3型のHybrid ZEROでも使われているFFF(Film-Film-Film)構造から、新たに「FF2」(Film-Film)構造を開発。FFFでX方向とY方向検知用に設けていたPET電極フィルムを1つの層にまとめ、上下に電極を配置することで薄型化を図り、重量を約5分の1に、厚みも約3分の1減らすことに成功した。

 また、液晶パネルとタッチパネル間の隙間をなくすダイレクトボンディングでは、従来比で約5分の1という薄さで接合。筐体に直接バックライトフィルムなどを組み込み、金属フレームを使わない筐体一体型の設計により、軽さと薄型化を実現した。強度を補うためにバックライトフィルムの下にはマグネシウムリチウム合金のミドルフレームが用いられている。

 軽量化を進める上で、バッテリの重量も無視できない存在だ。Hybrid ZERO 11では厚みがある従来品が使えず、新規にバッテリセルを開発した。細かいながらもバッテリの固定方法をネジ止めからフック方式に変えて軽量化を図るといった地道な努力も行なわれている。

超薄軽量タッチフィルム「FF2」
ダイレクトボンディング+筐体一体型LCD設計
軽量化してもベゼルとバックカバーの強度は従来通り確保
軽量化と小型化のためにバッテリセルを新規開発

 Hybrid ZEROと言えば、軽量かつ剛性のあるマグネシウムリチウム合金による設計だが、液晶のバックカバーと内部フレームに鍛造でマグネシウムリチウム合金を採用。キーボード側に関しては、本体だけでなく、ヒンジに鋳造でマグネシウム合金を用いている。

 薄型化を突き進めてはいるが、熱設計も疎かにはしていない。稼働時の高温化防止のために高性能なグラファイトシートが活用されており、各部品の温度上昇とタブレットの表面温度の上昇を防いでいる。ちなみにグラファイトシートを使うことで、ファンを搭載するよりも2g以上軽量化できるという。

 発熱の大きな問題となったのは意外にもカメラで、Intelの3DカメラことRealSenceの処置が重要となり、梅津氏はHybrid ZERO 11の開発で苦労したことの1つとして、そのエピソードを語った。部品のサイズは小さくできないため、これについては開発チームで集中的に検討が行なわれた。開発チームは3Dカメラを基板から遠ざけて配置したり、アンテナと重ねて配置するといったやり方を試みたが、そうなると当然ベゼル幅が厚くなってしまい、薄型化できない。苦肉の策として、LTE対応モデルは3Dカメラ非搭載とした。そのため、Hybrid ZERO 11のLTE対応モデルには3Dカメラが搭載されていないのだ。

マグネシウムリチウム合金での鍛造
マグネシウムリチウム合金が使われている箇所
グラファイトシートを使って温度上昇を防止し、ファン搭載比で2g以上軽量化
RealSenceカメラは無視できない熱源となったため、LTEモデム(アンテナ)とは排他実装にした

 ヒンジ周辺の作成にも苦労したとのことで、Hybrid ZERO 11はキーボードがリフトアップするようになっているが、これはキーボードの傾斜角度を適切に設けて使いやすさを向上させるために、机と接するドッキング部分が下に飛び出すようになっている。また、ヒンジにタブレットを接続した際に、本体が転倒しないように重量配分や支点の位置調整などをトライアンドエラーで繰り返し詰めていったという。

リフトアップ構造
転倒防止と軽量化の両立
容易に着脱可能に
ミドルフレームには、マグネシウムリチウム合金での鍛造では未知の領域である0.4mmに挑戦

 梅津氏は、Hybrid ZERO 11の開発に新しい試みや多くの苦労があることを語り、その上で4年連続の世界最軽量を実現しているLAVIE Hybrid ZEROの開発背景を真摯に説明してくれた。

「200g以下が絶対条件」という要求から作られたフラットカバーキーボード

フラットカバーキーボードのリフトアップ機構を手に持つNEC PC 第一商品開発部 技術戦略部の杉本繁伸氏

 LAVIE Hybrid ZERO 11にはオプションでフラットカバーキーボードが用意されており、標準のモバイルバッテリキーボードから付け替えることでタブレットと合わせて約585gという軽さと、11.1mmという薄さを実現する。このフラットカバーキーボードの開発を担当したのが、同社の第一商品開発部 技術戦略部に務める杉本繁伸氏だ。

 杉本氏は、究極の軽量2in1を実現するHybrid ZERO 11の開発メンバーとして、「重量200g以下でキーボードを作って欲しい」と要求仕様を伝えられたそうだ。当然タブレットをカバーする役割も必要で、スタンドとしても利用できなければならない。そしてキーピッチはモバイルパワーキーボードと同じ17.5mmが必須。ただ、軽量化を最優先してポインティングデバイスの搭載は度外視したという。

当初から200g以下、3mm厚以下のキーボードを要求された
フレットカバーキーボードを作るに当たって、スタンドの重量軽減と、キー入力のクリック感を得るという2つの課題があった

 杉本氏は段階的に試作機を作成し、その度に改善すべき課題を見つけ、完成度を高めていった。最初の試作機はキーボードとスタンドが別設計になっているもので、重量328g、厚さ3mm。ゼロストロークのせいでキーを入力した感じがまったく得られなかったそうだ。

 この状態からどうやって今の形に持っていったのか。杉本氏は重量の劇的な軽減のためにはキーボード側のメカニズムだけで実現できる小型の軽量スタンドが必要と考え、キーボード(カバー)から引き出して自律するスタンドを考案した。これはタブレットを支えるサポートプレート、サポートプレートを支えるサブプレート、そして土台のベースプレートの3つのプレートから成り、バネを組み込むことでスタンドを引き出した際に自律するようになっている。

 また、ストロークのないキーボードでは打鍵が硬すぎて使い物にならないということで、キーのクリック感を出すために厚みがほとんどなくてもキーストロークを持たせられないかを検討。そこで携帯電話(ガラケー)のボタンに用いられている「メタルドームスイッチ」を採用した。ただ、これだけではキーボード表面がフラットなので触っているキーの位置が分からない。そのため、ポリウレタン表皮によるエンボス加工を追加している。さらに、メタルドームスイッチはスイッチの有効範囲が狭く、大きいキーでは押しても入力されない箇所が出てきてしまうため、それぞれのキーをきちんと独立して入力できるように、スリットを設けたサポートシートをメタルドームスイッチの上に被せている。

立ち上がるスライド式の小型軽量スタンドを考案
メタルドームスイッチでクリック感を再現

 こうした施策により、現在のフラットカバーキーボードが完成。最終的に重量は187gになり、厚みは3.5mmとなった。200g以下という要求から13gも引き下げたことになる。

紙のモックで実現性を検証。ちなみにこの紙のモックは杉本氏が家にいる時に夜なべして作ったという
各構成パーツの重量を見積もっている。見込みで201.7gになった。そして製品版では約187gに
フラットカバーキーボードの構造と構成
モックでは操作性に難があったキーボード
キーボードの表皮をマイクロファイバーからポリウレタンに変更。エンボス加工でキーがクッキリと浮かび上がるようになった
メタルドームスイッチにおける押下時の正確性を上げるためにスリットを設けたサポートシートを追加している
完成

 杉本氏は今回のフラットカバーキーボードの開発について、自分の席がよく役員たちが行き来する通り道に面していることから、毎回通り際に「200g切れるのか」と話しかけられ、開発が終わるまでプレッシャーを与えられ続けたといった別の意味での苦労話も披露してくれた。

Hybrid ZEROの新色をLAVIE Direct限定モデルとして用意

Web限定のプレシャスゴールドモデル

 今回の説明会では、Hybrid ZERO 11のLAVIE Direct(Webモデル)専用色となる「プレシャスゴールド」がラインナップに加わったことも発表された。第1世代のムーンシルバー、第2世代のストームブラックに続く新色とのことだが、色だけでなく仕様面でも店頭モデルより豪華にできるといった違いがある。

 このDirect限定モデルの「LAVIE Direct HZ(D)」では、CPUにより高性能なCore m5-6Y54(1.1GHz)を選択できるほか、メモリを8GB搭載可能。LTEモデムを付け加えられるようになっている。なお、このハイスペック仕様の本体色はプレシャスゴールドのみというわけではなく、ストームブラックも選択できる。ただし、ムーンシルバーはない。税別直販価格は174,800円からとなる。

 また、このほかにもNEC Direct限定キャンペーンとして、LAVIE Direct HZ(D)購入者を対象に先着300個限定でHybrid ZERO 11が入る専用の「ハンドメイドフェルトクラッチケース」を提供。製品名が示す通り、手作りになっており、単体購入では6,000円かかるが無料で入手できる。Hybrid ZERO 11以外にもNEC Direct限定モデルが用意されており、ハイスペックを求めるユーザーにお勧めとのことだ。

3色を比較
シルバーとアップで比較
カバー側をシルバーと比較
限定特典のクラッチケース
反対側
広げたところ

11.6型LAVIE Hybrid ZEROの実機写真

 以下、説明会場に展示されていたHybrid ZERO 11の実機写真を掲載している。

11.6型のLAVIE Hybrid ZERO。一番左がブラックモデルで、それ以外はシルバー。一番右はLTE対応のHZ330。HZ330にはブラックモデルがない
キーボード正面
背面のカバー
左側面
左側面キーボード部分
右側面
右側面キーボード部分
タブレットとモバイルバッテリキーボードを分離
モバイルバッテリキーボードの正面
ヒンジ部分
ヒンジ全体
タブレット固定部分のアップ。ヒンジ中央に接続端子がある
タブレット左側面
タブレット右側面
タブレット上面
タブレット底面。左右にロック機構、中央に接続端子がある
タッチフィルムのアップ
ガラスは使われていないので非光沢(ノングレア)
フラットカバーキーボード
厚み
裏面
キーボード部分のアップ。真っ平らではないことが分かる
スタンドは手動で引き出す
バネが入っており、引き出した後は自動的に起立する
スタンドの背中側
スタンドを下から
少しだけ引き出したところ
タブレットを支えるヒンジ部分
マグネットにより前と後ろの両側に張り付く
フラットカバーキーボードをタブレットに装着したところ
タブレットを載せたままスタンドを引き出す。後はタブレットを倒すだけ
スタンドを出さなければカバーに、反対側に折ればタブレットモードで使える
タブレットにフラットカバーキーボード(左)と、モバイルバッテリキーボードを付けて比較
基板全体
基板のアップ
グラファイトシートが貼付されている
マグネシウムリチウム合金のミドルフレーム
アンテナ

(中村 真司)