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レノボ、世界で初めてXeonを搭載した「ThinkPad P」を解説

〜2つのクーラーを無駄なく使う機構。タッチパッドも3ボタンに

ThinkPad P70

 レノボ・ジャパン株式会社は17日、モバイルワークステーション新製品「ThinkPad P」シリーズ、およびビジネス向けデスクトップ「ThinkCentre M」シリーズを発表した。これに伴い、都内で記者説明会を開催した。

モバイル版のXeonを世界で初めて搭載したThinkPad P

高木孝之氏

 モバイルワークステーションの「ThinkPad P70」および「ThinkPad P50」について、コンシューマ製品事業部の高木孝之氏が解説を行なった。

 ThinkPad Pシリーズは米国で8月に発表された製品。IntelはSkylakeの投入に合わせて、モバイル向けのXeonを発表したが、ThinkPad Pシリーズはこれを世界で初めて搭載した製品となる。

 ThinkPadのラインナップ詳しいユーザーであれば、「ThinkPadのモバイルワークステーションはWシリーズではないのか」という質問が真っ先に挙がるだろう。高木氏によると、今回の改名の背景には2つの理由があるとする。

 まず、ThinkStationシリーズのワークステーションモデルではPを冠している。これは「Power、Performance、Professional」といった意味合いが含まれている。これをモバイルにも広げ、ポートフォリオを今後拡張していくというコミットメントを含めて、ThinkPad Pとしている。

 もう1つが性能のオーバーラップで、これまでのWシリーズはThinkStation Pシリーズの下位モデルにはやや及ばない性能であったが、今回のThinkPad Pは最大で64GBのメモリや、Maxwellベースの高性能GPUを搭載することもあり、P300 SFF/P300 Towerを超える性能を実現している。モバイルワークステーションとしての性能は新しい領域に入っているとし、改名を決断した。

 ThinkPad Pの開発に当たって、開発チームが目指したのは「史上最強のThinkPad」である。仕様詳細は関連のニュース記事を参照してもらいたいが、モバイルとしては世界初のXeon、Maxwell世代のQuadro、最大64GBのメモリ、NVM Express SSD対応、Thunderbolt 3/USB 3.1、4Kディスプレイ、キャリブレータの搭載などを特徴として挙げた。

世界で初めてモバイル向けXeonを搭載した
ThinkPad Wから改名した理由
想定する性能レンジとしてはデスクトップのThinkStation P300を超えるという
ThinkPad Pシリーズの開発思想
ThinkPad Pの仕様

 その上で、これらのパーツの性能がきっちり発揮されるよう、レノボならではのこだわりを5つ取り入れ設計したという。

 1つ目は「FLEX Performance Cooling」技術。ThinkPad PシリーズではGPU用およびCPU用に2つのファンを搭載しており、それぞれがヒートシンクとヒートパイプで繋がっているが、ThinkPad PではGPUとCPUのヒートシンクの間もヒートパイプで繋げた。これによりCPU/GPUヒートシンク間の熱移動が可能になり、放熱効果が向上した。

 現代的なアプリケーションでは、CPUかGPUかどちらかに処理が偏ることが多いが、この構造であればもう片方の冷却機構が無駄になることはない。また、これにより冗長性を持たせることも可能になり、もし片方のファンが故障しても作業を継続できる(性能は低下するが)。

 このFLEX Performance Coolingにより、「Automatic Turbo Boost」と呼ばれる技術も実現した。これはCPUが高負荷の時に、Intelが定めるTurbo Boostの仕様範囲内でなるべく高いクロックを維持するようにするもの。同社の測定によれば、CPUを使い4.39GBのMP4動画を4Kから1Kにトランスコードする場合、10.3%の性能向上が確認できたという。レノボは「価格が高いCPUを買うことなく、効果的な投資ができる」としている。

レノボならではのこだわり
FLEX Performance Coolingの概要
CPUとGPUのヒートシンクをヒートパイプで繋げ、相互の冷却機構を利用可能とする
なるべく高クロックを維持できるようにするAutomatic Turbo Boost

 3つ目はバッテリ駆動時の性能向上。レノボの調査によると、モバイルワークステーションはせっかくバッテリが付いているのにもかかわらず、結局ACアダプタに接続しっぱなしで利用するユーザーが多かったという。その理由を訊くと、モバイル性というより、性能が大幅に低下するためだという。

 そこで、競合他社のミドルレンジのGPUを搭載する同等構成の17型モバイルワークステーションを用意し、3DMarkテストしたところ、ACアダプタ接続時の性能を100とした場合、“A社”は22.6%、“B社”は58.4%まで性能低下していたことが分かった(いずれも開発当時のため、前世代機)。そこでThinkPad P70ではバッテリ駆動時になるべく性能が落ちないようチューニングし、ACアダプタと比較して87%の性能を実現したという。

 モバイルでも容量64GBのメモリを実現したのもこだわりの1つ。近年はワークステーションで取り扱うデータ量が大容量化しており、3Dデータの緻密化に加え、フォトリアリスティックな画像の実現、マテリアル情報の取り込み、4K解像度などがその一因であるとした。

 同社のテストによると、「AutoCAD Revit」で容量1.6GBのファイルを開いたところ、その約20倍の32GBのメモリ、「SolidWorks」でも2.6GBのファイルを開いたところ、同じく約32GBのメモリが使用されることが分かった。ユーザーにストレスを感じさせないためには、64GBメモリの搭載が必至の課題であったとし、独自設計で実現したという。

 最後の5つ目ポイントは、やはりThinkPadが持つ堅牢性や利便性であるとし、MILスペック準拠の筐体や、定評のキーボード、多ポートを持つドッキングステーション、および2,048レベルのペンオプションを用意していることを挙げた。

 今回Pシリーズに限り、トラックポイントのボタンに加え、新たにタッチパッド側も3ボタンとなった。これはCADソフトなどでセンタークリックを使って拡大/縮小操作を行なうためだとしており、「特に日本からの要望が多く、実装に至った」としている。

バッテリ駆動時の性能も約9割を維持
モバイルでもメモリ64GBをサポートする理由
ヘビーユースに耐える堅牢性と高い利便性
製品特徴
ThinkPad P70
ThinkPad P70左側面。スマートカードリーダ、USB 3.0、光学ドライブなどが見える
Thinkpad P70右側面。音声入出力、USB 3.0、ExpressCard/34スロット、SDカードスロット、Mini DisplayPortなどを搭載
ThinkPad P70の背面。Thunderbolt 3(USB 3.1/Type-C)およびHDMI出力、Gigabit Ethernetを備えている
ThinkPad P70のキーボードはテンキー付きだ。また、タッチパッドも3ボタンを搭載する
キーボードバックライトを搭載。Fn+スペースキーで有効になる
ThinkPad Pシリーズ対応のドッキングステーション
試作機はXeon E3-1505M v5とQuadro M5000Mを搭載していた
ThinkPad P50
ThinkPad P50はカーソルキーの下に指紋センサーを搭載する
ThinkPad P50の場合、ExpressCard/34スロットは左側面に備えている
ThinkPad P50の背面。USB 3.0やHDMI出力、Gigabit Ethernet、Thunderbolt 3を搭載する
ThinkPad P50の天板。Lenovoのロゴが目立たなくなっている
Skylake世代からLenovoのロゴが一新されている

ThinkCentreもラインナップ名を整理

大谷光義氏

 同時発表されたThinkCentre Mシリーズについて、同社 コマーシャル製品事業部の大谷光義氏が解説を行なった。

 大幅なアップデートがあったThinkPad Pと比較すると、ThinkCentre Mシリーズは細部の改良など、マイナーチェンジに留まっている。ただしラインナップ名については3ケタの数字となっており、これまでvProへの対応を示す「p」サフィックスがなくなり、スリム型の「SSF Pro」は「Small」に改名されシンプルとなった。

 ThinkCentre Tinyシリーズは今回で3世代目となる。筐体サイズは変更されておらず、Alt+Pショートカットキーによる電源起動や、Powered USBポートの装備、PC用/モバイル用ヘッドセットへの対応はそのまま継続。新要素としては、ツールレスで開けられるネジオプションの追加や、ダストシールドによる37%の防塵性能の向上などを取り入れた。

 ダストシールドは、網目がすごく細かいフィルタで、本体前面に嵌めることで防塵性を高める。Tinyのような小型フォームファクタでは効果が絶大で、同社の測定によれば、同等条件化では入るホコリの量こそ12.9gから8.14gと約37%減でしかないが、CPU温度は5.5℃、HDD温度は7℃も低かったという。

 一方で液晶の「T」シリーズも、Tinyシリーズが容易に装着できるよう、スタンドが進化した。新たに用意されたクランプブラケットは、わずか2ステップでTシリーズの液晶に取り付けられ、本体を液晶背面に設置できる。

ThinkCentre Tinyシリーズの遷移
利便性の維持と向上
新たにツールレス筐体も選択可能になった
ダストシールドを新たに用意
ダストシールド装備によるホコリ侵入量の削減、およびそれに伴う温度上昇防止の効果
ThinkCentre M900/M600 Tiny
M900 Tiny。手に持てる大きさと重量。前面に電源ボタン、USB 3.0×2、音声入出力を搭載
背面はDisplayPort出力×2、USB 3.0×4、Gigabit Ethernetなど
ダストシールドを装着したところ
本体内部。さすがにぎっしり詰まっている
CPUはもちろんLGA1151。その気になれば換装も可能だろう
ThinkVision TシリーズのスタンドもTinyを装着できるよう改良された。クランプブラケットは2ステップでマウントできる
ThinkCentre Tinyを装着したところ

 ThinkCentre M900 Smallも同様にダストシールドを搭載し、入るホコリを42.9%低減する。ただし内部空間は余裕があるため、温度低下はTinyほどの効果はない。それでもCPUで2.5℃、HDDで4℃の差があったという。

ThinkCentre M900 Smallの進化点
Tiny同様、ダストシールドをオプションで用意した
ThinkCentre M900 Smallの実機
ダストシールドのアップ。細かい網目が入っていることが分かる
ThinkCentre M900 Smallの内部
電源ユニットに搭載されるエアフローリフレクター。常に上部に排気させることで、対面設置のオフィスで目の前の人に排気が行くことを防ぐ

 一体型の「ThinkCentre All-In-One」シリーズは、上位のM900zで新たにツールレス筐体を採用した。そのほか共通で、タッチしやすい角度に倒せる「UltraFlexスタンドII」や、日本のユーザーから要望が多かったキャリーハンドルの搭載、カメラロックスイッチ、物理ボタンなどを特徴とする。

ThinkCentre All-In-Oneシリーズの遷移
ThinkCentre All-In-Oneシリーズの概要
UltraFlexスタンドIIを標準搭載し、タッチ操作しやすい角度に調節できる
スタンドはツールレスで着脱可能
物理ボタン、キャリーハンドル、カメラロックスイッチの搭載
ThinkCentre M800z All-In-One
ThinkCentre M900z All-In-Oneはツールレスで背面カバーを開けられる
ThinkCentre M900z All-In-Oneのインターフェイス部
UltraFlexスタンドIIの標準装備で、タッチ操作しやすい角度に調節できる

(劉 尭)