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「3年間で新規事業をVAIOと同じ規模に育てる」VAIO新社長就任会見開催

~開発にまで踏み込んだスマホ・タブレットも検討

VAIO代表取締役社長に就任した大田義実氏

 VAIO株式会社は19日、6月8日付けで同社代表取締役社長に就任した大田義実(おおた よしみ)氏の記者会見を開催。この中で大田氏は、3年後となる2017年度までに、PC以外の新規事業の規模をPCと同じ程度にまで引き上げる計画を明らかにした。

 今回の会見で語られたのは、大田氏の経歴、今後の経営基盤の固め方、VAIO PCの海外展開、新規事業の開拓など。大田氏は1952年生まれ。30年近く商社畑で過ごした後、2010年からは会社経営に携わるようになり、2つの会社の再建とバイアウトを完了させた経緯を持つ。

 会見内容は、概ね笠原氏のインタビュー記事ですでに詳しく語られているので、そちらに譲るが、概要は以下の通りとなる。

経営

 1年目は会社の外枠やインフラ作りに費やした。2年目は、会社の中身、すなわち収益性に向けた力作りを行ない、飛躍に向けた布石を敷く。同社が現在持つ、設計・製造技術、経験豊かな人材、ブランドを従来通り活用しながら、新たに自社内に営業部を新設し、設計からサポートまで一貫した体制を社内に作り、社員にも売上責任に対する意識付けを行なう。また、営業部には設計・開発出身の技術営業部隊を設け、販売パートナーの営業にも同行させ、VAIO製品の強みをきっちり啓蒙するとともに、現場の声を開発に直接聞かせる。一方、販売数量を追うことはせず、収益ベースで丁寧な仕事を行なう。

VAIO海外展開

 VAIOの米国とブラジルへの展開を行なう。北米はtranscosmos Americaと提携し、VAIOが製造するVAIO Z Canvasの英語モデルを10月5日より発売する。また、Microsoft Storeでの取り扱いも開始し、全米の店舗での展示・販売を行なう。

 一方、ブラジルではPOSITIVO INFORMATICAと提携し、VAIO PCを販売するが、VAIO商標を持ったPCの製造まで含んだ委託(VAIOのブランドだけを貸与する)とすることで、慣れないブラジルでの事業のリスクを軽減する。今後もアジアを中心に拡大狙うが、全てパートナーとの提携に基づいた発展を行なう。

新規事業

 かねてより定評のあった製造能力を、パートナー企業の受託生産にも活用。VAIOの安曇野工場には、PCだけでなくペットロボット「AIBO」時代に培ったロボット製造技術もあることから、6月より富士ソフトのロボット「Palmi」の受託製造を行なっている。

 さらに、その受託製造の中から、新規事業の芽を見つけ、自社の事業へと育てていくことを目論む。現状の安曇野製造ラインはVAIOと受託製造で100%の稼働率となっているが、新規事業の展開にあたっては、ラインを増設する。

 大田氏は2017年度もPCの事業規模は現状から微増に留まると見ている。そう言った状況の中、会社の存続とリスク分散のため、PC以外の事業の柱を打ち立てていく。2017年度には新規事業の規模の割合をPCと同じ程度にまで引き上げていくという。

 また、日本通信のと協業で発売したスマートフォン「VAIO Phone」について大田氏は、「評価は(良いものも悪いものも)いろいろあるが、我々としては通信事業に出るきっかけ作りになったと考えている。ただし、今後はもっと主体性を持った商品開発を行なう」と述べ、完全自社開発を含め、より開発にまで踏み込んだスマートフォン・タブレットの製品作りも視野に入れていることを明らかにした。

(若杉 紀彦)