ニュース
シャープ、タブレット活用の学習システム「STUDYFIT」
~児童ごとに学力向上を図るICT活用教育
2015年4月24日 06:00
シャープ株式会社は23日、タブレット端末を用いた児童用のデジタル学習システム「STUDYFIT」を発表した。STUDYFITは、シャープと株式会社日本標準が共同開発して作った小学生向けのデジタル教材を活用し、Windowsタブレットを通して学習を行なうシステム。STUDYFITには、児童が苦手とするポイントを発見し、授業の理解状況を把握、教師の指導を支援するといった仕組みが取り入れられている。
デジタル教科書教材協議会によれば、現在全国115の自治体がICT(情報通信技術)を推進/活用しており、実際に東京都荒川区や佐賀県武雄市などの6自治体では、タブレットを1人1台使用したICT教育を行なっている。STUDYFITもICTによる教育の一種である。
シャープは以前から、Interactive Study、STUDYNOTEなど、STUDYシリーズによる教育のICT化を推進している。同社の辰巳剛司氏は、現状のICT教育には課題が山積みと語り、単純な教材の不足、教材をダウンロードするためのネットワークの帯域不足、授業や雑務で多忙な教師のさらなる負荷、新たに授業を設けなければならないための通常授業への影響について指摘した。
同氏はこれらの課題に対する解として、STUDYFITは、小学校直販教材の大手である日本標準と電子書籍技術を持つシャープが共同開発したデジタル教材であること、学習履歴の送信のみに通信を利用するため、ネットワークに負荷をかけないこと(教材データの受け渡しはSDカードなどでも代用可能)、自動採点と自己採点方式の採用で教師への負荷をかけないこと、そして5~10分で行なえる問題構成のため通常授業への影響を与えないことを特長として挙げた。
STUDYFIT導入による学力アップ
シャープは佐賀県に協力を仰ぎ、佐賀県多久市内の公立小学校の3校(5年生6クラス、計186人)でSTUDYFITの実証研究を行なった。実施期間は2014年11月下旬~2015年3月までで、教材として国語と算数が用意された。
11月時点で行なわれたテストでは、国語と算数の総合正答率がそれぞれ67点と55点だったのに対し、STUDYFIT導入から約3ヵ月後の2015年1月の結果では、国語が75点で算数が68点に上昇した。前回から+8点と+12点の結果が出たことに対し、佐賀県多久市の横尾俊彦市長は「現場では1、2点上げるだけでも大変な苦労であり、大きな成果だった」とSTUDYFITの結果を振り返る。
シャープの辰巳氏は、今回の実証研究の興味深い点として、成績の上位・中位・下位の生徒たちの学力到達状況の底上げについても言及。実施前は、国語の成績上位層が28%、下位層が33%だったのに対し、実施後では上位層が33%に増え、下位層が24%に減ったというデータを示した。これは算数についても同様の結果が出ている。
横尾市長の話では、STUDYFIT導入前は実際にこういった教材を扱えるのか教師たちから不安の声が上がっていたが、導入から早い段階で手応えを感じた教師が多かったと言う。STUDYFITによるテストは10分ほどと短時間で済むことから、今回の検証では早朝の授業前にテストを実施していた。このことに関して横尾市長は、1日の始まりである早朝にテストを行なうことで集中力が付き、学習のリズムができたと語る。また、クラス全体がザワつきがちな朝に、テストの導入によってクラスが静かで落ち着いた雰囲気に変化したことについてうれしい副産物だったとのエピソードも紹介した。
日本マイクロソフトによるサポート
STUDYFITの協力者として、日本マイクロソフトも参画しており、今後はICTセミナー「Windows in the Classroom」でのSTUDYFITの紹介や、クラウドプラットフォーム「Azure」を利用したSTUDYFIT評価版の全国展開(先着30校予定)などを行なっていくと言う。日本マイクロソフトの中川哲氏は、今回の実証研究結果に関して、生徒の成績が上位から下位層に分かれる中で、STUDYFITにより下位層の生徒を中位層へと引き上げるための良い環境が構築されたと、STUDYFITの効果について語った。
STUDYFITでは、デジタル教材、児童用アプリケーション、教員用アプリケーション、Windowsタブレット、サーバー、通信環境が提供される。導入費用は児童1人あたり年間5,000円、教員用管理システムに1校30万円かかるとのこと。導入に関する商談の開始は5月より行なわれる。