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MIT、視力補正機能を持ったディスプレイ技術を開発

〜目ではなくディスプレイに眼鏡をかけさせる逆転の発想

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)および、カリフォルニア大学バークレー校の研究者らは7月31日(現地時間)、視力の悪い人向けに自動的に補正する機能を持ったディスプレイ技術を開発したと発表した。

 これは、裸眼立体ディスプレイの技術を転用したもの。裸眼立体ディスプレイでは、左目と右目に対して微妙に角度の異なった映像を映し出すことで、奥行きを表現している。これに対し、視力補正ディスプレイが、ユーザーの瞳孔の異なる部分に微妙に異なった映像を投影する。

 視力が悪いというのは、目の焦点距離と対象物の距離をうまく合わせられない状態を意味する。この状態では、本来網膜の1点に結像すべき像が、その周囲にまで届いてしまうため、目に映る像がぼやけるのだ。

 そこで、この新技術は、ディスプレイ側で正しい焦点距離における映像をシミュレーションすることで、目の焦点距離が合っていなくても、ピントが合った映像を目に映るようにさせる。例えば、50cm先のディスプレイを視力の悪い人が見ると、焦点が70cm先になっていたりする。これに対し、デバイス側が計算を行なうことで、デバイスが目から70cm離れていたときに映るであろう画像を表示するのだ。例えるなら、目ではなく、ディスプレイに眼鏡をかけさせる形になる。

 この手法の課題は、目に届ける仮想画像の単一画素をシミュレーションするには、ディスプレイ側で複数の画素を使う(強制的にぼやけさせる)必要があり、画像の解像度が大きく下がってしまう点にある。

 しかし、研究者らは、異なる視角をシミュレーションするために必要な画像同士の間には大きな冗長性があることを発見した。この冗長性を利用しない場合、例えば1画素を4画素を使って表現(ぼやけ)させるので、解像度は4分の1になる。しかし、冗長性を使うことで、隣接する単一画素のぼやけた部分を重ね合わせられるようになり、解像度の低下を防げるのだ。

 現在のプロトタイプでは、意図しない瞳孔部分に対して光が届かないよう、画素をマスキングするため、ディスプレイ上にピンホールを並べて配列した透過パターンを置いている。これによって、ディスプレイから発せられる光量が半減してしまうと言う課題があるが、これについては、3Dディスプレイのように、2枚の液晶を使うことで解決する目処が立っている。

 この技術は、電子書籍端末、スマートフォン、PCなどさまざまなデバイスに応用できる。もちろん、ほかのものを見たとき、眼鏡をかけていないのでぼやけた世界が映ることになるが、デジタルデバイスと接している時間は日々長くなっており、眼鏡やコンタクトレンズの面倒くささと天秤にかけた時、ほかはぼやけてても、スマートフォンやPCがくっきり見えればいいという人も少なくないだろう。

 また、一般に人は加齢とともに遠視になる傾向があるが、カーナビにこの技術を用いた場合、距離が離れた路面や車は裸眼ではっきり見え、距離が近いカーナビは裸眼のままでもカーナビ側が視力に応じた補正を行なってくれるという使い方も想定されている。

 ディスプレイの高解像度化はとどまるところを知らないが、OSがうまくDPIを制御できない場合、文字が小さくなってしまう場合もあるなど、さらなる高解像度化を疑問視する声もある。しかし、この技術のように複数の画素で1画素を表現する技術は、高解像度化をうまく活用する新しい方法と言えるだろう。

(若杉 紀彦)