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産総研、常温大気中で金属同士を接合する技術を開発

6月26日 発表

 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)集積マイクロシステム研究センター大規模インテグレーション研究チームは、常温大気中で金属同士の高強度接合を実現したと発表した。

 加速度センサーやジャイロセンサー、ディスプレイ用ミラーデバイスなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のパッケージングには、厚膜金属メッキで形成した封止枠やバンプ電極による金属同士の接合が用いられている。厚膜メッキ表面は粗さが大きいため、接合時に300℃以上の高温でプレスして変形させ、密着させる必要があった。しかし、MEMSには微細で繊細な機械可動部があるため、加熱加圧によるダメージを避けるべく、低加圧低温でのパッケージングが求められていた。

 産総研は、2013年にシリコンなどの半導体ウェハを原子レベルで表面平滑化するプロセスを開発。今回、この技術を応用し、原子レベルで平滑な表面形状をメッキ表面に高精度で転写して超平滑なメッキ表面を形成することで、MEMS基板を常温大気中でパッケージングすることに成功した。

 具体的な手法は、超平滑に研磨された仮基板上に、薄い犠牲膜層(50nmのチタン)を成膜し、その上に厚膜金メッキパターンを形成し、金メッキパターンと封止基板上の金属膜を熱圧着法で接合。その後、薬液に浸し、犠牲層だけを選択的に溶解すると、封止基板に表面が超平滑な金メッキパターンが転写されるので、この超平滑メッキ表面とMEMS基板上の金属薄膜を常温大気中で接合する。接合の強度は、平均で256MPaと、200℃で熱圧着したのと同等の強度を得られた。

 今後は、接合部の金の使用量を低減させ、金を用いない接合技術を開発することでパッケージングコストの低減を図る。

開発した接合プロセス
従来方法による金メッキ表面(a)と、今回開発した技術による金メッキ表面(b)の原子間力顕微鏡像。bは荒さがほとんど見受けられない
常温接合されたサンプルの接合強度

(若杉 紀彦)