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日本科学未来館、常設展「アンドロイド-人間って、なんだ?」を公開
~「コドモロイド」、「オトナロイド」等を常設展示。ロボットコーナーも拡大
(2014/6/25 12:57)
日本科学未来館は、人間に似せたロボットであるアンドロイドを体験できる常設展「アンドロイド-人間って、なんだ?」を6月25日(水)から公開する。新たに展示されるロボットは、子供の姿をした遠隔操作型アンドロイドの「コドモロイド」、同じく成人女性型の「オトナロイド」、そして特定の人物の要素を削ぎ落とした「テレノイド」の3種類。人間に似せたアンドロイドを作ることで人間らしさの本質を研究している大阪大学特別教授の石黒浩氏が監修を行なった。
「コドモロイド」と「オトナロイド」は新たに作られたロボットで、今回が初公開となる。肌はいずれも特殊なシリコン製で、空気圧アクチュエータによる人工筋肉で動作する。日本科学未来館では「ロボットを通して改めて『人間』という存在を照らし出す場であるとともに、来場者がアンドロイドとの対話や操作の体験ができる、世界的にもユニークな展示」だとしている。
コドモロイド
子供の姿に似せた遠隔操作型ロボットの「コドモロイド」は、世界初の「アンドロイド・アナウンサー」として展示される。見学者は、3階「零壱庵」コーナーに設置されたスタジオから、コドモロイドが地球上のさまざまな出来事や宇宙天気予報を「コドモロイド・ニュース」として配信する様子を見学できる。世界中のニュースを複数の声色や言語で読むことができるという。展示協力は独立行政法人 情報通信研究機構(宇宙天気情報センター)、株式会社NHKグローバルメディアサービス。
株式会社セント・フォース所属のアナウンサー・中田有紀氏のもと、アナウンスの「研修」を受けた。なお、読むニュースは敢えてシビアなものを選んでいるという。見学もスタジオ「零壱庵」のスリットから覗き込んでみるようになっていて、アート的要素の強い展示である。
コドモロイドはこれまでのアンドロイドよりも小型化しており、一部機構も簡略化されている。自由度は30。任意の自由文を、複数の声色で読み上げることができる。音声合成エンジンは株式会社エーアイ製。
オトナロイド
成人女性型の「オトナロイド」は、科学コミュニケーターとして未来館に採用される遠隔操作型アンドロイドで、呼吸をしているときの胸の動きや手の揺れなど、無意識の動きも再現する。見学者は「オトナロイド」を単に見るだけでなく、操作したり対話したりすることができる。展示では自律で自然な動作を行なう通常モードのデモに加え、科学未来館のコミュニケーターによる実演、そして一部は見学者による操作体験が行なえる。一般の見学者に許される操作は感情表出を喜び、怒り、悲しみの3種類から選ぶといった限定的なものだが、操作によってアンドロイドに乗り移る体験などを通じて、アンドロイドをより直感的に理解できるようになるとしている。
オトナロイドの自由度は41。脚部は動かない。こちらもボイスチェンジャーなどを通した対話や自由文の読み上げができる。オトナロイドの左目にはカメラが入っていて、操作者は外部の俯瞰カメラ映像に加えて目線映像を見ることで対話者と目が合いやすくなっている。従来は、研究室でしか体験できなかったことを未来館で体験できるようにしたという。モデルは、アンドロイド演劇などに出演していた女優の方。
テレノイド
人間型のミニマルデザインとなっている「テレノイド」は、コミュニケーションにおける必要最小限の人間らしさを追求するためのロボット。見学者はテレノイドと触れ合いながら対話したり、操作したりできる。
なお、これらのロボットはJST CREST(戦略的創造研究推進事業)の「人の存在を伝達する携帯型遠隔操作アンドロイドの研究開発」の一環として開発された。頭部しか動かないが、人は案外さまざまな情報を読み取れる。
「アンドロイド」を通じて「人間とは何か」を考える
日本科学未来館展示企画開発課 課長の内田まほろ氏は、「長年の希望であった石黒先生のアンドロイドを満を持して展示できる。新しいメンバーを迎え入れるような気分で興奮している」と述べ、この展示は「人間とは何かを本気で考える」ものだと語った。単に見るだけではなく3体のアンドロイドと会話に参加したり、抱きしめたり触ったり、アンドロイドに乗り移る体験をしてもらうことで、「アンドロイドが『コミュニケーション・ツール』としての可能性を持っていることを堪能してもらうとともに、ある瞬間にアンドロイドに感情移入してしまったり、どこから人間と認識してしまうのか、考える体験をしてもらいたい」という。
またこの展示は実証実験という意味あいもあり、のべ数十万人とのやりとりを石黒浩氏らに調査・研究してもらって次の研究に繋げてもらい、機能をバージョンアップしていくことも考えていると語り、「これだけのロボットが動いていて、スタッフとして働いており、体験もできる場所は未来館だけ。アンドロイドとの対話で人間とは何かを考えてもらうと共に、ロボットと暮らす未来を思い描いていただければ」と語った。
石黒浩氏は「人は人を認識する脳を持っている。人にとってもっとも理想的なインターフェイスは人である」と語り、過日のソフトバンクによるPepper発表についても言及。「スマートフォンやPCが世の中に普及し始めたときを思い出す」と述べ、「ものすごい数が出ると人はいろいろな使い方を考えるようになる。あっという間に新しいロボットが世の中にあふれるかもしれない」とコメントした。
そして「人間を理解するプラットフォームとしてアンドロイドを作ることは意味がある。いろいろなロボットが普及すればアンドロイドも役に立つロボットとして使われるようになるだろう。実際に作ってみるといろいろなことが分かる。意識とは何か、心とは何かなど、さまざまな感情が生まれる。やがて機械と人間の境界もなくなるかもしれない。人間とは何であるか、自分の価値はどこにあるのかと1人1人が自分で考える時代が来るようになる」と語った。
日本科学未来館 館長の毛利衛氏は「オトナロイドは日本科学未来館の48番目の科学コミュニケーター」だと述べ、「コミュニケーションが上手だとファンができる。オトナロイドは、どれだけリピーターを増やすか。競争は激しいです。お客さんが来るかどうかではっきり分かります」と語った。
さらに「オトナロイドならではのことも期待している」と続けた。たとえば来館する子供たちの中には、科学や技術は大好きだが、あまり人と話したくないという子供もいるという。だが「オトナロイドとだったら打ち解け合って話せるという子供が一人でも出たらすごいなと思います」と期待を述べた。