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阪大石黒教授ら、対話感のある卓上サイズ会話ロボット「CommU」と「Sota」を開発
~制御にはRaspery PiとEdisonを採用
(2015/1/20 16:51)
大阪大学 大学院基礎工学研究科教授の石黒浩氏と准教授の吉川雄一郎氏らは20日、ヴイストン株式会社と共同で、JST戦略的創造研究推進事業(ERATO)の「石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト」において、社会的対話ロボット「CommU」と(コミュー:CommunicationUnity)「Sota」(ソータ:Social Talker)を開発したと発表し、東京・お台場の日本科学未来館にて記者会見を行なった。
多様な視線表現機能を駆使し、ロボット同士の対話に人間を巻き込むことで、これまでは難しかった「人間が対話に参加している感覚(対話感)」を覚えることができるロボットだという。今後、ソフトウェアならびにコンテンツの開発環境を整備し、人間の生活環境における情報提供・生活支援・コミュニケーション支援・学習支援などの実証をすすめ、普及を目指す。
また記者会見では、JST戦略的創造研究推進事業CRESTで開発され、日本科学未来館でそれぞれ科学コミュニケーターならびにロボットアナウンサーとして常設展示されている2体のアンドロイド「オトナロイド」と「コドモロイド」が新しいロボットを紹介した。アンドロイドとロボットだけの報道発表は世界初だという。
ロボット同士の対話に人間を巻き込む
今回発表されたロボットは、複数のロボット同士の対話を人間に見せることを基本に、その対話に人間が割り込んで、対話に参加している「対話感」を実現することを想定している。ロボット同士の対話において、ロボットが人間に向かって喋っているのか、ロボットに対して喋っているのかが区別できるところ、そして対話参加者であるロボットや人間を無視しているように見えないところがポイントだという。厳密に音声認識をするのではなく、話し終わりだけを認識して、なんとなく話を続けることができる。
コミューは180×131×304mm(幅×奥行き×高さ)、重量は938g。Sotaは160×140×282mm(同)、重量は800g。どちらも足はなく、上半身だけの卓上サイズのロボットだ。カメラ、モノラルマイク、スピーカー、LED、Wi-Fi、HDMI、USB端子などを備えている。
コミューの自由度は14(内訳:胴体2、腕2×2、首3、目3、まぶた1、口1)。制御はRaspery Pi TypeB+。眼球部を使って視線方向や表情を変えることができる。これによって人間に似た社会的振る舞いを実現できるという。
普及型としてコミューを元にヴイストンが開発したソータの方は眼球がなく、腕の自由度も落としたより簡易な構造となっている。自由度数は8(内訳:胴体1、腕2×2、首3)。制御はIntelのEdison。ソータのデザインはロボットクリエイターの高橋智隆氏が手がけた。人間と関わるためのロボットプラットフォームとして一般家庭への普及も目指すという。
社会的対話ロボットの実証へ
ロボットだけの会見の後、質疑応答には石黒教授らが登場した。「人は適応能力が高く、自分がしゃべらなくても代わりに誰かがしゃべってくれれば対話感が持てる」というのが新発見だったという。ロボットのモーターの速度は遅いが、動きが必ずしも人間同様に素早くなくても対話感が持てるという。1対1でしゃべると人間は必ず自分の方が上位だと思う傾向があるが、ロボットが2体以上の対話の中に人間が歩み寄ることで、これまでにない感覚を得ることができると述べた。
記者からは、対話応用として、同調的対話だけではなく反論的対話も可能なのかという質問があがった。それに対して、ヴイストンの大和氏は、「ロボットは質問されたら答えなければならないものだと思われているが、必ずしも答えなくてもいいのではないか」と答えた。吉川氏は、的外れな反論が出ないようにするための方法として、例えば「話が途切れたところでロボットが唐突に自分の意見を言うと、文脈を読まない存在になってしまうが、その後にすかさずに2台目のロボットがそうかもしれないねと相づちとサポートをしながら話題をシフトさせていくといったこともできるのではないか」と述べた。石黒氏も、単なる同調ではなく、反論的な対話感を持たせることもできるだろうと述べた。
今後、コミューとソータを使って対話感を実現するための社会的振る舞いの実装を進める。同時にソフトウェアならびにコンテンツの開発環境を整備して、ロボットプラットフォームとしての成熟を図る。コンテンツはユーザーによって生成することを期待しているという。普及を目指すソータの販売予定価格は10万円以下を目指す。販売予定台数は年間3,000台。基本的に事業者向けを想定し、7月以降の先行予約販売を検討する。確定は5月頃になるとのことだ。部品点数も倍以上あるコミューは研究用になるため、販売価格はソータの5倍以上になるという。
また、自閉症スペクトラム障害など、コミュニケーションに障害を持つ子供たちが通う発達障害専門クリニックの診察室にロボットを導入し、社会的対話ロボットとの対話を用いた療育プログラム開発を通じて、社会への普及を進めていく予定。対話コンテンツの制作はヴイストンと石黒氏らの研究グループが協力して進める。