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理研ら、次世代メモリに向けた磁気構造の制御法を理論的に解明
~トランジスタ微細化限界の壁を破る新技術に道筋
(2013/9/9 14:13)
独立行政法人理化学研究所は9日、東京大学大学院工学系研究科、青山学院大学理工学部物理・数理学科との共同研究グループが、電子スピンが渦状に並んだ磁気構造である「スキルミオン」が、制限された空間で電流を流した時に現われる動的特性を、理論的に解明したと発表した。
半導体は、ムーアの法則に従い、18カ月ごとに2倍のペースで集積度を増してきたが、早ければ10~20年後にはトランジスタが原子のサイズにまで小さくなり、それ以上微細化できなくなる限界に達する。そのため、さらなる性能向上には、これまでとは異なる原理に基づいたデバイスを開発することが必要となる。
同グループが着目したのは、スキルミオンと呼ばれる電子スピンが渦状に並んだ磁気構造。スキルミオンは、制限されていない(無限に広い)空間では、10^6A/平方m程度の比較的小さな電流密度で駆動するため、低消費電力な磁気メモリに応用できると期待されている。しかし、なぜ、小さな電流密度で駆動するのかが分かっていなかった。また、回路のような制限された空間でのスキルミオンの挙動を調べることは難しく、回路上でも小さな電流密度で駆動するのかは不明だった。
そこで同グループは、磁気構造の時間変化を記述する微分方程式を用いてシミュレーションを行ない、スキルミオンが制限された空間では、無限に広い空間の場合と違い、摩擦力や、不純物のピン止め効果による影響を強く受けることが分かった。また、これまで困難だったスキルミオンの生成を、回路に微少な切れ込みを入れて電流を流すという単純な方法で実現できることを突き止め、スキルミオンを応用したデバイス設計に道筋を拓いた。
今後はスキルミオンを室温で実現する物質系の開拓や、100nm程度の構造にスキルミオンを閉じ込めて、電流や光照射で制御する方法の開発を目指す。