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Bluetooth SIG、Bluetooth Smartで無線を日用品に浸透
~次期AndroidでSmart Ready標準対応へ
(2013/5/28 14:30)
Bluetooth規格の推進団体であるBluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は28日、都内で記者会見を開き、米国より来日したグローバルインダストリー&ブランドマーケティング ディレクターのエレット・クローター氏が、Bluetoothを取り巻く市場の現状と将来について説明した。
Bluetooth SIGは1998年に設立され、当初のメンバー企業は5社のみであったが、現在は月に200社が新規メンバーとして参加し、2013年3月現在約18,000社を抱える大きな団体となっている。アジア太平洋地域だけでみても約6,175社のメンバーがおり、うち日本は881社が参加している。ソフトウェア開発のA&W、ハードウェア開発のエイディシーテクノロジー、ネットワーク装置を開発するセレボのほか、周辺機器でお馴染みのバッファローやエレコムなどもメンバーとして挙げられる。
Bluetooth搭載デバイスは、これまで累計で100億台を出荷した。2013年に25億台が出荷される見込みだが、2014年には30億台、2016年には37億台、そして2018年には45億台の出荷を見込み、2018年時点で累計310億台もの出荷に膨れ上がる予測を立てた。
過去を見渡すと、2010年~2012年でBluetoothオーディオ製品の出荷が451%増えたほか、全体の製品登録数がこの2年間で79%も増えたという。しかし今後は、Bluetooth Smart/Smart Readyで導入した低消費電力モードによって、スマートフォンなどの機器をハブとしてあらゆる機器が接続可能になるため、アプリケーションを駆使したアクセサリ、「アプセサリ」と呼ばれる製品が爆発的に増え、ユーザーの日常に浸透していくだろうとした。
「アプセサリ」と呼ばれるデバイスは、さまざまなアクセサリのような製品にBluetoothチップを埋め込み、そこで得られる小容量の“無意味な”データパケットを、スマートフォンやタブレット、PCなどのデバイスのアプリケーションを駆使して“有意義”なデータに換えることを指す。
具体例としては、歯ブラシに加速度センサーとともに搭載し、歯磨きをした時間や力の入れ具合などを取得して、デバイス側に転送して子供の歯磨きの時間の管理に役立てるといったことから、ゴルフクラブにも加速度センサーとともに搭載し、スイングのフォームや速度などをデバイス側でチェックする、心拍計に搭載し、デバイス側で運動時の心拍数を図るといった用途まで、採用が見込まれている。
コンセプトとしてもうすぐ製品化の候補に上がっているものとしては、“電池にBluetoothを内蔵し、スマートフォン側から電池の電源供給をオン/オフする”、“キーホルダーのようなものに内蔵し、スマートフォン側で所在場所を探す”、“サッカーボールに内蔵し、ボールの速度や回転などをコーチが監視する”といったものまであるという。
つまりアプセサリによって、Bluetoothはユーザーの日常で使われるさまざまな製品に搭載されるからこそ、企業の新規参入が増え、そしてユーザーのBluetooth購入使用頻度も増えていくだろうとした。
しかし先述の通り、アプセサリはスマートフォンなどで稼働するアプリケーションがなければ何も意味を成さない。Bluetooth Smart/Smart Readyに初めて対応した製品としてAppleの「iPhone 4S」があったが、近年のスマートフォンのシェアを見るとAndroidも大きな割合を占めている。そこでBluetooth SIGはGoogleと協力し、次期のAndroidでBluetooth Smart/Smart Readyを標準サポートすることをコミット。これに伴い、Bluetooth SIGでも開発者向けのポータルでホワイトペーパー、開発用のSDKなどのリソースを提供していくとした。
Bluetooth 4.0とBluetooth Smart/Smart Readyの関係とは
本誌ではBluetooth 4.0やBluetooth Smart/Smart Readyの関係がどのようなものなのか、これまで解説して来なかったが、改めて整理しておく。
まずBluetooth 2.1/3.0/4.0といった“バージョン”であるが、あくまでも仕様書のバージョンである。このためメーカーは製造するデバイスに応じて、この仕様書に準拠した機能を個別に、または一括に有効化できる。バージョンの後ろに付加する+EDR/+HS/+LEといったものは、メーカーが仕様書の中にあるオプションを選んだものである。
ただし、Bluetooth 3.0以前と4.0は互換性を持たないのがややこしい点だ。4.0はボタン電池などでも駆動できるよう、パケットサイズを非常に小さくしているため、完全に別設計のチップが必要になる。このため、Bluetooth SIGでは「Bluetooth Smart Ready」と、「Bluetooth Smart」と呼ばれる2つのロゴの策定に至った。
Bluetooth Smart Readyは、GATT基盤アーキテクチャを含むBluetooth 4.0仕様で開発されるのが要件であるほか、Bluetooth 3.0以前のデバイスと通信するための「デュアルモード低エネルギー無線」を搭載しなければならず、さらに消費者による機器のソフトウェア・アップデートを可能にしなければならない。つまりハードウェア/ソフトウェアともに対応する必要があり、これに最初に対応したのがiPhone 4SとiOS 5だった。
過去にPCやスマートフォンなどでもBluetooth 4.0+LEを搭載したものが登場していたが、Bluetooth Smart Readyに対応しているとは限らない。Smart Readyに対応させるためには(基本的には)OS側の対応が欠かせないからだ。PCであればWindows 8、スマートフォンであればiOS 5以降、BlackBerry 10以降、そしてAndroidの次期バージョン以降が対応するという。Windows 7でBluetooth 4.0+LEのモジュールが使えても、ドライバやプロトコルスタックにアップデートの仕組みがないからである。
一方、Bluetooth Smartは、GATT基盤アーキテクチャを含むBluetooth 4.0仕様で開発され、「シングルモード低エネルギー無線」さえ搭載していればロゴ準拠となる。簡単に言ってしまえばBluetooth 4.0専用デバイスだ。先述の通り、Bluetooth 4.0は3.0と互換性がないので、3.0のホストで4.0のデバイスを認識させることはできない。
以上のことから分かるよう、Bluetooth Smart Readyは基本的にホストアダプタ、Bluetooth Smartはデバイス側に使用されるロゴだと思えば良い。もしBluetooth Smart Readyロゴ付きのデバイスがあるのであれば、(一部省電力機能が使えなくなる可能性があるものの)Bluetooth 3.0のホストアダプタとは通信可能であるが、Bluetooth Smartのロゴのみがついたデバイスは、Bluetooth SmartのホストまたはBluetooth Smart Readyのホストとしか通信できないわけである。また、Bluetooth 4.0+LE対応と謳っているホストやデバイスなら、使えるかどうかはソフト側次第であるといったところだ。