Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は11月8日(米国時間)、Windows 8においてBluetooth 4.0がネイティブサポートされたことを発表した。これによりBluetooth 4.0に対応したPCを利用することで、超低消費電力の次世代製品への接続が可能になる。
Bluetooth 4.0はアップルの「iPhone 4S」とともに登場した新規格で、低消費電力技術(Low Energy=LE)が新たに盛り込まれている。これにより医療や健康、スポーツ、フィットネス機器などにおいてBluetoothが搭載可能になる。
8日に都内で開かれた記者会見では、Bluetooth SIGのChief Marketing Officerを務めるスーク・ジャワンダ氏が、Bluetoothの普及および4.0による新たな市場開拓について説明した。
改めて説明するまでもないが、Bluetoothはシンプルで安全な無線通信技術である。ABI Researchの調査によると、2012年までのBluetooth搭載デバイス累計出荷台数は90億台、Bluetooth SIGメンバーの企業数は17,000社、そして2012年単体で見ても20億以上の機器が出荷されるという。
当初Bluetoothは高品質なストリーミングが行なえる無線通信技術として、ヘッドセットやワイヤレスヘッドフォン、ハンズフリーなどで利用されてきた。そして2011年にiPhone 4SとともにBluetooth 4.0が発表/発売され、低消費電力と多様なプロトコルで、さまざまなアプリケーションへの適応を広げている。
特にBluetooth 4.0に盛り込まれた低消費電力化技術は、Wi-Fiにはない特徴であり、転送データをシンプルかつ最小限に抑えることで、コイン電池1個程度の電力でも稼働できるようになっている。このため腕時計やヘルスケア製品などへ容易に搭載できるようになる。
しかし、Bluetoothデバイスから送信されるデータはシンプルでコンパクトゆえに、基本的にそのままでは使えないので、PCやスマートフォン、タブレット端末といったデバイス“ハブ”を通して、ディスプレイに表示してユーザーに見せたり、インターネットと接続してクラウドに転送することで初めて有意義になる。
Bluetoothの特徴 | 家庭内で使われるBluetooth機器 | Bluetooth対応機器の出荷状況 |
Bluetooth機器の対応アプリケーションの広がり | Bluetoothの中心となるPC/タブレット/スマートフォン |
ジャワンダ氏は例として、Bluetoothを歯ブラシに組み込むことで、子供が歯磨きをする時間や力の入れ具合、どの歯が磨かれているのかなどをタブレット端末で管理できるようになる。またゴルフクラブの先端に加速度センサーと一緒に内蔵することで、スイングの速度や正確さなどをスマートフォンで見ることができるようになる。あるいは血糖値測定器に盛り込むことで、PCで日々の血糖値の管理を行なったり、フィットネス機器に入れてTVと連動することで、その人の運動量にあわせたトレーニングが可能になるなどとした。
Bluetooth搭載の歯ブラシ | 子供の歯磨きに関するデータをタブレット端末などで管理できる | ゴルフクラブに搭載することで、スイング速度を計測できる |
血糖値測定器に搭載し、PCでデータ管理を行なう想定 | 主治医もオンデマンド、またはリアルタイムで血糖値の管理ができる | フィットネス機器への応用も可能 |
また、コンシューマ向けのBluetoothは通常10m程度の通信しかできないが、より強力なアンテナを装備することで1kmの距離でも送信も可能になる。将来的には駐車場にBluetoothを組み入れることで、駐車スペースの空きを自動的に管理し、付近のどの駐車場に開きがあるのかを車のドライバーに知らせるといった仕組みも容易に実現できるとした。
このようにBluetooth 4.0の低消費電力化や、その汎用性の拡大により、さまざまなニーズに応えられるようになり、2013年にも1日あたり700万台のBluetoothデバイス、2013年だけで25億台のBluetoothデバイスが出荷されるようになるだろうとした。そして2017年には累計で270億台を超すBluetoothデバイスが世界に出回るだろうとした。
駐車場への応用 | Bluetooth対応デバイスの今後 | さまざまな場所でBluetoothが使われるようになるだろうと予測 |
道蔦聡実氏 |
発表会には、カシオ計算機株式会社 副主管の道蔦聡実氏が呼ばれ、Bluetoothのボードメンバーとしての活動を紹介。Bluetooth 4.0の規格化とPUIDプロトコルの規格化に際し、日本企業が当初から関与した「Made with JAPAN」の規格であるとアピールした。
具体的には、時計メーカーのカシオ、シチズン、エプソンなどが参入。特に時計メーカー各社は規格策定に大きな影響を与え、「時計として、ACアダプタを通して充電するような使い方はできないし、時計のデザインを損なわない小型化も重要である」とし、低消費電力、低ピーク電力、最適化したスペック、モノクロLCDやアナログなど、小さな表示方法への対応などを行なった。
また、バイブレーターなどでユーザーに「気付き」を与える機能、時計の操作をしなくても見られる一覧性、メンテナンス不要性などを重視しつつ、ファッション性やライフスタイルにマッチするコンパクト設計を行なったという。
Bluetooth 4.0とともに規格化されたプロファイルとして、時刻と時間帯の補正を行なうTIP(Time Profile)、着信音の音止めを行なうPAS(Phone Alert Status Profile)、着信のお知らせを行なうANPS(Alert Notification Profile)、携帯電話の捜索を行なうFMP(Find Me Profile)、置き忘れを防ぐPXP(Proximity Profile)を挙げ、いずれもシンプルなプロトコルで実現しているとした。
Bluetooth 4.0の標準化によるメリットとしては、携帯電話、タブレット、PCへのBluetooth 4.0の普及に加えて、デバイス価格の低価格化、ソフト開発者の増加、アプリケーションの増加などが得られるとした。
Made with JAPANともいえるBluetooth 4.0 | 4.0策定時は規格化の当初から時計メーカーが参入 | 時計にBluetoothを取り入れるための要件 |
Bluetoothを搭載した時計の“役割” | 規格化されたプロファイル | 標準化によるメリット |
実際にカシオから発売されたBluetooth 4.0対応時計「G-SHOCK GB-6900」シリーズには、グローバルスマートフォンの時計と同期することでタイムゾーンを修正する機能、メール着信お知らせ機能、時計のボタンを押すことでiPhoneから音を鳴らし発見する機能、PCとペアリングし、離席時に自動的にログオフ、着席時に自動的にログインする機能を装備。将来的には、より小型化したモデルを実現するとともに、時計のボタンを押すことで緊急医療機関に通知する機能などが実装できるという。
スマートフォンと連動することでタイムゾーンを修正する機能 | iPhoneを見つける機能 | PCの自動ログインとログアウト |
緊急アラートとしても利用可能 | Bluetooth 4.0対応のG-SHOCK |
また、発表会には、さまざまなOS上でBluetoothスタックを開発するAdvanced and Wise Technology シニアセールスマネージャーの大貫志門氏、ワイヤレステクノロジー株式会社 株式会社ブルーネクストジャパン 代表取締役の森山正吾氏、株式会社バッファロー サプライ・メモリ・メディア事業部の原敬三氏も招かれ、各社のBluetooth搭載製品や関連技術についての説明が行なわれた。
(2012年 11月 8日)
[Reported by 劉 尭]