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GLOBALFOUDRIES、モバイル半導体需要に応える「Foundry 2.0」構想
(2013/2/7 15:59)
GLOBALFOUDRIESは7日(日本時間)、都内で記者会見を開催し、来日したアジット・マノチャ(Ajit Manocha)CEOが、同社の今後のビジョンなどについて説明した。
同氏はまず、近年非常に活発であるモバイルデバイス市場について言及。世界人口が70億人であるのに対し、携帯電話(スマートフォンに限らない)の数は60億超であることを挙げた。その一方で、インターネットユーザーは20億人に限られている。インフラを見ても、携帯電話の契約者数は増えているものの、インターネットを利用するユーザーや、固定インターネット回線の契約者数はまだ限られている。それだけ、携帯電話のようなモバイルデバイスへのニーズが高いことを指摘した。
コンピューティング自体もスマートフォンへ集約されつつある。例えばナビゲーションシステムやソーシャルネットワークの利用、カメラ、ゲームなどを代表とするモバイルアプリケーションは、コンピュータで実行されるアプリケーションそのものである。それらの実行のためには、高速データ通信や高精細スクリーン、マルチコアプロセッサ、薄型軽量化へのニーズがあり、低消費電力、高性能、高機能が、これまでのPCへのニーズ以上の速度で、モバイル端末に求められてきているとした。
モバイル機器の進化と実現においては、PCがこれまで歩んできた最先端技術以上の速度が求められている。特に低消費電力、高性能、高機能、薄型軽量化といったニーズはいずれも相反する要素であり、半導体の最先端プロセスが求められる。例えば近い将来的には、アプリケーションプロセッサにWi-FiやBluetooth、FM、GPS、NFCなども取り込まれるだろうが、最先端の半導体製造プロセスでこそ実現するものであるとした。
これまで、半導体最先端製造プロセスが利用される過程を見ると、まず最初にコンピューティング、その次にワイヤレス技術、さらにその後にコンシューマやそのほかの製品が利用し、およそ2年ずつの“山”でサイクルが続いた。しかしながら今回のモバイルデバイスの波は、最先端プロセス(主に28nmを指すと思われる)でワイヤレス技術を用いる山を前へと押しやり、それがコンピューティングと重なったことで非常に大きな需要の山となっている。
その一方で、28nm以降の最先端製造プロセスを提供できるメーカーが少ない。調査会社によると、最先端プロセスの領域でファウンダリ市場を見ると、年間37%の成長が予測される。今後は32/28/20nmプロセスにおいて、高性能スマートフォンやタブレットで必要とされるウェハの数が毎年60万枚増えるだろうという予測もある。しかしながら、製造キャパシティが追いついていないのが、現在の半導体業界を取り巻く実態である。
またファウンダリには、クラウドコンピューティングや自動車、NFC、アナログ、FinFET、2.5D/3Dパッケージング、デザインの最適化など、市場や顧客からの要件への対応が求められる。技術的な面では、電力密度やバッテリ寿命、設計、人材。経済的な面では、設計および製造コスト、開発コスト、地理的なリスク、IP知的財産権の保護やビジネスモデルなどが、今後の課題となっている。
この突出したモバイルの半導体需要、そして特に今後ファウンダリが直面するさまざまな課題に対しての解決の糸口として、アジットCEOは「Foundry 2.0」構想を提唱する。
近年、銀行と航空業界が提携する、あるいはセミコンダクタとバイオメディカル業界が提携するといった業態は当たり前になりつつある。ファウンダリ業界でも同様の変化が起きるだろうというのが、Foundry 2.0への移行である。
従来のファウンダリは、変化のペースが遅い、グローバル人材が利用できない、複数のソリューションに対応できない、システムと方法が硬直化する、独立したチームからは最善のソリューションが生まれないといったさまざまな問題があった。対しFoundry 2.0では、パートナーそして別の顧客との連携を深め、「仮想的に垂直統合型メーカー」として顧客にサービスを提供することで、これまでGLOBALFOUNDRIESだけでは実現できなかったシステム/SoCアーキテクチャの設計、SoCの組み込み、SoCのIP、ウェハのテスト、パッケージおよびアセンブリ、最終テストなど実現。早期、深く、オープン、包括的に取り組み、成果を共有することで、技術革新や新技術の共同開発、製品の早期市場投入を実現するという。
今後のロードマップについては、2013年に20nm、2014年に14nm、2015年に10nmを導入する。また、デバイスのアーキテクチャ、パッケージング、450mmウェハ、露光技術についても積極的にチャレンジしていく。ラボで培った技術をファブに移行するためにも、既にニューヨークのFab 8構内に共同開発用のスペースを設け、20億ドルを投資し、マスク/シリコン/パッケージングまでの開発エコシステムを強化する。
また、ドイツのFab 1、シンガポールのFab 7、ニューヨークのFab 8という3カ所のファブを運用することで(地震などの天災による)地理的なリスクを最小化し、300mmウェハの生産能力を拡大するとともに、10nmに向けての開発モデルを確立。これによって今後拡大する半導体の需要に応えていくとした。
最後に同氏は、売上や運用、顧客ベース、信用度の向上や改善、拡大など、Foundry 2.0構想がうまく機能していることをアピール。特に日本の企業においては現在、半導体産業の転換点に来ているとし、このビジネスモデルを採用してもらうことで、日本ならではの最先端イノベーションを活かし、成功に導けるのではないかと語った。