株式会社BCNは7日、都内で記者会見を開催し、デジタル家電に関する動向について発表した。本稿では、発表の中で注目されたPCおよびタブレット、スマートフォンに焦点をあて紹介する。
BCNアナリストの森英二氏はまず、デスクトップ/ノート/タブレット(Windowsのみならず、AndroidやiOS搭載も含む)といったPC市場全体の状況について解説。「デスクトップPCやノートPCの単価下落もさることながら、Nexus 7を筆頭とする低価格タブレット製品が好調。このため9月と10月は前年比で台数ベースで増加したものの、金額ベースでは10%前後の下落となった」とした。
タイプ別では、ノートPCが台数ベースで持ちこたえているものの、デスクトップが台数/金額とも前年比で大きく割れ、構造変化が起きている。これはタブレット市場の拡大がもっとも大きく影響しているとした。
メーカー別シェアでみると、ノートはNEC、東芝、富士通、ソニーなど国内勢が健闘しているが、デスクトップは日本エイサーの躍進が目立つ。森氏は「ディスプレイがない低価格タイプで国内メーカーを抑えているのではないか」と分析している。
ノートPCの中でタイプ別に見ると、やはりA4ファイルサイズスタンダードノートが主流で8~9割で推移しているものの、Ultrabookが高い平均単価であるにもかかわらず、10月の台数ベースで約6.5%のシェアを確保した。森氏は、「2011年11月に初めて投入されたUltrabookは、当初ASUSの製品のみであったが、現在は10社が合計64製品投入している。選択肢が増えたことで市場が伸びている」とした。
PC市場全体の動向 | デスクトップ市場は縮小 |
デスクトップPCでは海外勢の躍進が目立つ | Ultrabookの健闘 |
一方、10月26日に発売されたWindows 8についての動向だが、11月22日~11月28日の週で台数構成比は4.7%、11月29日~11月4日の週で約6.4%だった。これはWindows Vistaが発売された2007年1月29日の週(構成比51%)と、Windows 7が発売された2009年10月19日の週(構成比26.8%)と比較すると大幅に移行が鈍い状態となった。
森氏は「29日の週はiPad miniやNexus 7 32GBモデルの発売と重なりシェアを奪われた」、「夏のWindows 7モデルの在庫処分により新モデルとの価格差が広がり、値頃感が薄れた」のも原因であるとした。
特に旧モデルの在庫処分価格について詳しく分析すると、スタンダードノートPCの新旧モデルの価格差は、XPからVistaへの移行時で34.5%、Vistaから7移行時で49.7%にとどまったのに対し、7から8移行時で77.6%もあった。
スタンダードノートPCの中で特に売れている「LaVie S」シリーズを例に上げると、旧モデルの「LS150/HS6W」が51,200円だったのに対し、新モデルの「LS150/JS6W」が91,000円だった。両モデルの違いはOSのみで、スペックはまったく同等。消費者はこの価格差でWindows 7搭載の旧モデルを購入するといった流れになっているという。
これはデスクトップに関しても共通で、ディスプレイ一体型PCを挙げると、XPからVista移行時の価格差は35.9%、Vistaから7移行時は41.2%だったのに対し、7から8移行時は75.2%に広がっている。
Windows 8への移行とVista/7の時との比較 | スタンダードノートPCの7/8価格差 |
一体型PCでも7と8では価格差が大きい | タッチ対応製品の推移 |
この状態に関しては、「発売時において国内メーカー各社は、キーボードがつかない純粋なWindows 8タブレットをリリースしておらず、キーボードから外せる、またはLet'snote AX、VAIO Duo 11のようにディスプレイ部が変形するといったギミックのノートをリリースしている。キーボードやギミックがつくと必然的に純粋なタブレットより高くなり、各社はWindows 8のリリースにあわせて平均単価をやや押し戻そうとする動きがみられる」と分析している。
タブレット端末に関しては引き続き好調で、台数は前年比で54%増で推移。年末にかけてAmazonも「Kindle Fire」を投入することから、搭載OS別でみるとiOSの独走に終止符が打たれるのではないかとみている。画面サイズ別では、iPad miniやNexus 7により、8型未満が活気づいているとした。
好調なタブレット市場 | タブレット市場におけるAndroidの躍進 | 画面サイズ別のタブレットシェア |
スマートフォンの市場は伸びが鈍化し、販売台数構成比でみると8割前後止まりとなった。また、直近の状況は、iPhone 5の投入により、auとソフトバンクがNTTドコモを抑え、販売台数構成においてもiOSの比率が高まった。また、テザリング対応端末の売れ行きも好調で、消費者が回線の一本化により運用コストを下げようとする傾向がみられるという。また、LTEやWiMAXに対応した端末の売れ行きも好調であるとした。
スマートフォンの推移 | スマートフォンの搭載OSとテザリング対応端末の割合 | 次世代通信規格対応のスマートフォンの販売状況 |
(2012年 11月 7日)
[Reported by 劉 尭]