AMDが開発中の次世代プロセッサTrinityのパッケージ。左からデスクトップPC用PGA、ノートPC用PGA、ノートPC用BGA |
会期:1月10日~13日(現地時間)
会場:米国ネバダ州ラスベガスコンベンションセンター
AMDは、2012 International CES会場において、報道関係者に対して同社の最新製品をデモした。AMDはCES開幕の初日となる1月10日(現地時間)に、新しいノートブックPC向けGPUとなるRadeon HD 7000Mシリーズを発表したが、それに引き続き第2四半期には製造プロセスルールを28nmに微細化したハイエンド向けの製品をリリースすることを明らかにし、併せて搭載したノートブックPCを公開した。
また、AMDはTrinityの開発コードネームで知られるAMD Aシリーズの次世代製品に関して、若干のアップデートを行ない、パッケージにはBGAを用意し、最も低いTDPで17WのSKUを用意していることを明らかにした。
●Radeon HD 7000Mの下位グレードは現行コアを利用、上位グレードは新コアで第2四半期にAMDが発表したRadeon HD 7000Mシリーズには、大きくいって3つのグレードが用意されている。具体的には以下のようになっている。
【表1】Radeon HD 7000M(AMDが公開した資料より筆者が作成)Radeon HD 7600M | Radeon HD 7500M | Radeon HD 7400M | |
対応するセグメント | 薄型パフォーマンス | メインストリーム | バリュー |
製造プロセスルール | 40nm | 40nm | 40nm |
Direct3Dバージョン | 11 | 11 | 11 |
コアクロック | 450~725MHz | 500~600MHz | 600~800MHz |
メモリクロック | 800~900MHz | 800~900MHz | 800~900MHz |
メモリ | DDR3/GDDR5 | DDR3/GDDR5 | DDR3/GDDR5 |
メモリバス幅 | 128bit | 64bit | 64bit |
SP数 | 480 | 480 | 480 |
HDMI | 1.4a | 1.4a | 1.4a |
Eyefinityディスプレイ数 | 最大6 | 最大4 | 最大4 |
3D立体視対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
BD 3D対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
DisplayPort 1.2対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
TDP | 35W以下 | 25W以下 | 20W以下 |
Radeon HD 7000シリーズと言えば、年末にリリースされたRadeon HD 7970がすぐに頭に浮かぶ読者は少なくないだろう。しかし、今回発表されたRadeon HD 7000Mシリーズは、Radeon HD 7970のモバイル版ではない。
今回発表されたRadeon HD 7000Mシリーズは、開発コードネームでLondonと呼ばれてきた製品で、内部のコアアーキテクチャやダイなどは、Radeon HD 6000Mシリーズとして発表された製品と同じで、ソフトウェアなどによる機能のアップデートが施されたバージョン、つまり“リネーム版”ということになる。
AMD自身も、今回発表されたRadeon HD 7000Mシリーズが、5つあるセグメント(エンスージアスト、パフォーマンス、薄型パフォーマンス、メインストリーム、バリュー)のうち、下から3つをカバーするに過ぎないといっている。では、上から2つのセグメント向けの製品はどうなるのかと言えば、そこには第2四半期に投入される追加のモデルによってカバーされることになるという。
AMD モバイル単体グラフィックス事業部製品マネージメント課長 オジェン・オギ・ブリック氏は「我々は第2四半期に次世代コアを採用した製品を追加する。次世代コアは28nmプロセスルールで製造され、Direct3D 11.1に対応するなど、デスクトップPC用のRadeon HD 7970の流れを汲んだ製品になる」とした。そしてそれら製品はエンスージアスト向けとパフォーマンス向けのセグメント、つまりRadeon HD 7600Mシリーズの上位グレードとして投入されることになるという。
【表2】Radeon HD 7000Mの位置づけ(筆者作成)対象市場 | 発表時点 | 第2四半期以降 |
エンスージアスト向け | - | 次世代コア |
パフォーマンス向け | - | 次世代コア |
パフォーマンス薄型向け | Radeon HD 7600M | Radeon HD 7600M |
メインストリーム向け | Radeon HD 7500M | Radeon HD 7600M |
バリュー向け | Radeon HD 7400M | Radeon HD 7600M |
28nm | 40nm |
28nmプロセスルールのRadeon HD 7000シリーズには、Tahiti(Radeon HD 7970)、Pitcairn、Cape Verdeという3つのダイがあることを明らかにしているが、通常最上位の製品はノートPC向けに投入されることはないので、Pitcairn、Cape Verde相当のダイがモバイル用として投入される可能性が高い。
今回AMDは、28nmプロセスルールのモバイル向けGPUを、リファレンスデザインのノートPCに入れた状態で公開しており、パフォーマンス向けのGPU、エンスージアスト向けのGPUそれぞれが動作していた。ブリック氏によれば、新しい省電力機能によりアイドルパワーが削減されるほか、ディスプレイ周りの機能が拡張され、デスクトップPC向けのRadeon HD 7000シリーズでサポートされている機能がモバイル版でも対応するとのことだった。
AMDがCESで公開したノートPC向け28nmGPUの概要。投入は第2四半期になる | AMDのノートPC向け28nmGPUを搭載したリファレンスデザインのノートPC。左側がパフォーマンスセグメント向けのGPUを搭載し、右側がエンスージアストセグメント向けのGPUを搭載している |
●今年の半ばに計画されているTrinityには、BGAパッケージと17WのSKUが用意される
AMDは今年の半ばに開発コードネームTrinity(トリニティ)で知られるAMD Aシリーズの次世代製品を投入することをすでに明らかにしているが、CESではTrinityのプロセッサそのものと最新のデモが公開された。
Trinityのデモそのものは、すでに昨年(2011年)のCOMPUTEX Taipei、AFDS、IDF期間中の記者会見などで公開されており、今回はそのバージョンアップというものになる。デモでは、ノートPCから2つのディスプレイ出力を行ない、合計3つのディスプレイが同時に表示可能というものだった。1つの画面でゲームをプレイしながら、ノートPCのディスプレイでは動画を再生し、もう1つのディスプレイでは動画のエンコードを行なうという動作を1台のノートブックPCでこなしていた。
AMDが公開したTrinityのプロセッサには3種類のパッケージが用意されていた。1つはデスクトップPC用のPGA、2つめはノートPC用の小型PGAパッケージ、3つめが薄型ノートPC用のBGAパッケージだ。
AMDの関係者によれば、Trinityでは最も低いTDPで17Wになるという製品を用意しているとのことだ。現在のノートPC向けAMD AシリーズのTDPは35/45Wの製品だけになっており、Intel製品で言うところのULV版に相当する17Wという製品は用意されてこなかった。しかし、AMDが17W版を用意することで、事実上Intelの独擅場になっているより薄型のノートPCにもAMD Aシリーズが入れる可能性がでてきたといえ、OEMメーカーの選択肢が増えることになることは歓迎して良いだろう。
なお、今回AMDのプロセッサに関するアップデートはこれだけで、ロードマップなどに関しては2月2日に米国で行なわれるアナリストミーティングで発表されるという説明があった。従って、2月2日に改めてチェックする必要があるだろう。
(2012年 1月 13日)
[Reported by 笠原 一輝]