MSI VGA担当副社長Jeremy Liaw氏インタビュー
~GeForce GTX 680では水冷タイプなどを複数モデルを計画中

Jeremy Liaw氏



 台湾Micro-Star International(MSI)で、ビデオカード部門であるVGA-OBM Multimedia Sales Divisionを統率するJeremy Liaw氏(Assistant Vice President)がこのたび来日し、インタビューする機会を得た。

 MSIは弊誌読者ならほとんどがご存じの企業だと思うが、マザーボード、ビデオカードなどの基板系から、ノートPC、液晶一体型PC、サーバー、車載PCなど完成品も手がける総合PCメーカー。本社は台湾にあり、中国の深センと昆山の2カ所に工場を持つ。2010年度の売上高は約900億台湾ドル(約2,500億円)に達する。同じ基板系でも、マザーボード部門とビデオカード部門は分離されており、Liaw氏(以下、敬称略)は後者のトップを務める。

【Q】ビデオカード部門の直近の売上高および出荷枚数を教えてください。

【Liaw】ビデオカード部門には、OEM部門とチャネル部門の2つがありますが、全体での年間売上高は約120億台湾ドルで、このうち約60%がチャネルになります。出荷枚数は750万枚で、ここ数年の出荷量はほぼ横ばいとなっています。

インタビューはMSIビデオカードの代理店であるアスクの事務所にて行なわれたアジアパシフィックMultimedia Sales Department Section ManagerのVickie Yu氏(左)とエムエスアイコンピュータージャパン株式会社営業部部長の陳明期氏(中央)も同席した

【Q】日本市場での出荷枚数はどれくらいでしょうか。

【Liaw】チャネル(ただしホワイトボックスを含む)でおよそ2万枚です。

【Q】総出荷枚数からすると、日本市場はかなり小規模に見えますが、MSIでは日本市場をどのように見ているのでしょう。

【Liaw】日本は世界のどの市場とも異なっています。特に新製品そしてハイエンド製品に対する関心が非常に強いです。そのため、自作市場については台湾よりも小さいのですが、平均単価は高い傾向にあります。我々は日本市場を世界におけるベンチマーク市場だと捉えており、日本でブランド価値を築くことができれば、世界でも成功できると考えています。

【Q】日本市場におけるブランド価値を築くため、どういったことをしようと考えているのでしょうか。

【Liaw】それについては、我々は日本ですでに一定レベルのブランドイメージを築けていると考えており、引き続きこのイメージを維持したいと考えています。

【Q】日本市場でのシェア目標はありますか。

【Liaw】我々はむやみやたらにシェアを増やそうとは考えていません。シェアが増えると、付随的にやらなければならないことも増えてしまいます。これも今の地位を維持することが重要だと考えています。

【Q】MSIにとってのライバルはどこでしょうか。

【Liaw】全世界には50からのVGAブランドがあります。これらすべてが我々のライバルだと考えていますが、もう少し具体的に言うと、それらのうちの約1/3にあたるTier1と呼ばれるGPUメーカーにとっての最優先メーカーが直接の競合になるかと思います。

【Q】ここからは製品についてお伺いします。ビデオカードの差別化はどのように行なっているのでしょうか。

【Liaw】我々の設計思想は、「高品質のための設計、高性能のための設計」というものです。基板や、ヒートシンクや、ファン、コンポーネントなども独自に設計しています。

 たとえばRadeon HD 7970搭載の「R7970 Lightning」は、Propeller Bladeと呼ばれる羽の角度を途中で変化させた10cm角のファンを採用しており、これにより26dBAという静音性を実現しながら、風量を稼いでいます。この点については特許も取得しています。

 また、同製品では「GPU Reactor」と呼ばれる特殊な基板を装備しています。これで、電圧/電流を調整することで、安定したオーバークロックが可能になります。実際、この製品を使い、デフォルトの1,070MHzから1,800MHzというオーバークロックの世界記録を樹立しました。

R7970 Lightning。ファンの刃先に加工してあるのがわかる背面のMSIロゴのキャップを外すと、GPU Reactorが現われる

【Q】液体冷却の製品は出さないのでしょうか。

【Liaw】実は現在、GeForce GTX 680で液体冷却の製品を開発中です。詳細はまだ話せませんが、GPUだけのものと、CPUの水枕もついたものの2種類を検討しています。このほか、GeForce GTX 680でもTwin Flozr 3搭載品や、ハイグレードのLightningブランドのものなどを予定しています。

【Q】現在、MSIでのGeForceとRadeonの割合はどれくらいでしょうか。

【Liaw】地域や、時期によって多少の変動はありますが、およそGeForceが7割、Radeonが3割となっています。

【Q】マザーボードとセットにしたバンドルパッケージの予定はないのでしょうか。

【Liaw】当然ながら我々のビデオカードとマザーボードは互換性の問題がないので、組み合わせて使うことは推奨しますし、何かしらのインセンティブを伴ったバンドルパッケージもやりたいとは思います。しかしながら、ユーザーによってどのマザーボードとビデオカードを組み合わせたいかは、十人十色なので、その選択が非常に困難です。そのため、基本的にはばらばらで販売し、ユーザーに選択の自由を与えたいと思っています。

【Q】最後に日本のユーザーに一言お願いします。

【Liaw】先にも申しましたとおり、我々は日本をベンチマーク市場だと捉えており、この市場に真剣に取り組んでいます。今後もハイエンド製品については、どの地域よりも早く日本に投入したいと考えています。

【Q】ありがとうございました。

(2012年 3月 29日)

[Reported by 若杉 紀彦]