エルピーダメモリ、坂本社長が事業継続と社長続投に意欲を表明
〜20nmでまともに生産できるのはエルピーダともう1社しかない

会見の冒頭に謝罪するエルピーダメモリの坂本幸雄社長(左)と白井康雄CFO

2月27日 開催



東京証券取引所で会見に臨む、小林総合法律事務所の小林信昭弁護士(左)、坂本社長、白井CFO

 エルピーダメモリは、2月27日、会社更正法の適用を東京地方裁判所に申請したとして、同日午後6時45分から、東京証券取引所において、同社の坂本幸雄社長、白井康雄CFO、小林総合法律事務所の小林信昭弁護士が会見を行なった。

 質疑応答では、坂本社長の経営責任や、日本でのDRAM事業の限界を指摘する厳しい質問が飛んだが、坂本社長は、「DRAMの火を消したくない」、「DRAMの会社をもう一度立ち上げていきたい」、「私自身、会社の行く末を見届けなくてはいけない」と、事業継続や社長続投の意志を示した。

 会見の冒頭に坂本社長は、「弊社は本日夕方、東京地方裁判所に会社更正法の手続き開始の申し立てを行なった。関係者のみなさまにはご支援をいただたにも関わらず、多大なるご迷惑、ご心配をおかけし、心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

 会社更正法の申請に至る経緯について、坂本社長は、「2007年頃からDRAM価格が下落しはじめ、2008年秋にはリーマンショックに起因する世界的な経済環境の悪化による大幅な影響を受けて、さらにDRAM価格が下落。2009年3月期には1,780億円の純損失を計上した。2009年には世界トップクラスのDRAMの開発設計技術を有していることが評価され、経済産業省から産活法による事業再構築計画の認定を受け、以降、産活法の下で経営再建を図るべく努力をしてきた。しかし、DRAM業界における競合が激しく、DRAMは価格は1年前の3分の1となったこと、対米ドルの劇的な円高が続いていること、タイの洪水によりDRAMの需要が停滞したことなど、当社を取り巻く経営環境は、産活法の認定を受けた当時と比べて劇的に変化した。その中で、価格競争力の強い製品への集中や、集中購買による米ドル建てでの取引拡大による為替リスク軽減などを推進したものの、経営状況に変化はなく、2011年度第2四半期には488億円の純損失、第3四半期には421億円の純損失となるなど、経営の厳しさが増し、弊社は、債務の支払いが困難な状況に至った」とし、「このような状況の中、会社更正法に基づき、裁判所の監督のもと、事業再建を図ることが債権者のみなさまをはじめとした関係者にとって最良であるという結論に至り、やむなく本日、東京地方裁判所に対して会社更正法手続き開始の申し立てを行なった」と経緯を説明した。

 また、今後の見通しとして、「会社更正法申し立て後も、従来通り、事業を行ない、広島工場も引き続き操業していく。DRAM事業の専門性は、今後もスポンサー選定において重要であり、事業価値の毀損を可能な限り防止し、円滑、迅速な事業再建を果たすべく、債権者の理解を得ながら事業を行なっていく」などと語ったほか、「今後、事業再建のためスポンサーを選定することも視野に入れているが、裁判所などの監督のもとに進めていく。役員、従業員は一丸となって、会社再建に奔走していく。債権者を始めとする関係者に対しては、多大なご迷惑をおかけし申しわけなく思っているが、弊社の現状を理解していただき、更正手続きへの理解をお願いしたい」とした。

 また、国民負担による出資を受けたことにも関わらず、今回の会社更正法申請に至ったことに対しては、「非常に申しわけなく思う」と語った。

 なお、坂本社長は、従業員のリストラを行なわない姿勢を明らかにした。

 坂本社長によると、会社更正法への手続きを決定したのは27日午後3時であり、「今日までにいろいろなところからのオファーが出てくるということになっており、それを待っていたが、具体的なコミットメントではなかった。こうした中で会社を再生するにはリスクがあること、今のマーケット状況を背景に長期的なキャッシュフローをみてもリスクがあると判断し、小林弁護士と相談し決定した」とした。

 また、約1カ月前に発表された2011年10〜12月期の決算発表時には、資金繰りは3月までは問題ないと発言していたことに対しては、「その時には3月までは大丈夫だと考えていた。しかし、その先をみると、資金がかなりショートしてくるのがわかった。また、金融機関からのリファインナンス(借り換え)が難しいことが理解できた」などと説明した。

会見中の坂本社長

 さらに、「日本の半導体のマーケットシェアは過去には70〜80%の時代もあったが、今は15%程度になっている。大きな理由は、日本の開発力が衰えていること、為替が円高に振れていることに尽きる。為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替が、完全に競争力を失わせている。70%の差はいかんともしがたい。それを除けば、エルピーダのDRAMの損益は圧倒的にいい。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ。そのくらいのところまで来ている」と語り、「ここまで為替が振れるというのは私の経営判断ともいえる。だが、ここまでになるとはとても考えられなかったのが現実」とした。

 会見の中では、「今の時点で、それ(=為替や政府の企業支援における韓国企業の差)を言っても負け惜しみになるので、言うこと自体が私を弱くする」と語り、「今後は今まで以上に開発を加速したい。彼らが作っていないような製品をもっと出していきたい」とした。

 また、坂本社長は、「会社の行く末をちゃんと見届けなくてはいけないと考えている。責任とってやめるのは簡単だが、きちんとするという覚悟を持ってやっていく」と社長続投について言及。小林弁護士は、「一般的に会社更正法では、従来の経営陣は退任することになるが、本件は、DIP型での会社更正法の申請となっており、従来の経営陣が引き続き経営を担うということができる。DRAM業界の高度な専門性が背景にあり、半導体に素人の管財人で経営ができるのかという点もある。抜本的な経営責任を果たしていくことにつながる」とした。

 また、日本でのDRAM事業が限界に達しているのではないかといった指摘については、「性急すぎる議論」と反論しながら、「為替が1年後にどうなるかわかるか」と逆に記者に質問する一幕もあり、「PCだけのDRAMではなく、これが携帯電話用のDRAMに変わっていく」と語ったほか、「この市場で生き残って行くには30%程度のシェアが必要。1年後あたりをめどに獲得したい。20nmプロセスでまともに生産できるのはエルピーダともう1社しかない。30nmを超えたところから技術は大きく変わってきている。今回の更正法の申請が明らかになった後にも、世界中のお客様から、更正法の中でもエルピーダがんばれと言われている。その技術がないと我々は製品が作れないともいわれている。今まで以上に社員はがんばってくれるはずであり、韓国の会社以上の開発力を持っていると考えている」などとした。

 一方で、坂本社長は、「マスコミは、我々が提携の話をしているときにも、まだNDAの契約をしていない段階にも関わらず、すぐに記事を書く。それがどれだけ我々の提携関係を阻害していたのか。世界の会社では、そんな記事が出たら提携の話はなくなる。きちんとしたデータや、きちんとしたことがわからないうちに記事を書くということは、日本のメディアのレベルが落ちているということだ」と苦言を呈する一幕もあった。

(2012年 2月 28日)

[Reported by 大河原 克行]