日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は、8月から法人向けノートPCの国内生産を開始したことに伴い、生産を担当する昭島工場を報道陣向けに公開した。
岡隆史氏 |
国内でノートPC生産を開始した理由を、同社取締役副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括・岡隆史氏は次のように説明する。
「デスクトップPCとワークステーションは国内生産を行なっていたものの、ノートPCについては集中生産体制を取った方が、コストメリットが大きいとしてワールドワイドで集中生産していた。しかし、我々日本法人からすると、国内生産であれば短納期が実現し、お客様の要望に応じた細かいカスタマイズが可能になり、納入後すぐに使って頂けるようになるといったメリットがある。足かけ6年間、ノートPCも国内生産したいと本社にリクエストし続けてきた。その結果、リニアに法人マーケットでシェアを拡大し、実績ある日本法人からのリクエストならばと、今回国内生産が認められることとなった」。
国内でノートPCを生産することで、従来は2週間かかっていた納期が5日間に短縮される。「納期が9日間短縮されることで、営業体制が強化され、さらなるシェア向上にもつながるのではないか」(岡副社長)と営業戦略的にもプラスと見込む。
昭島工場での生産は1999年7月、法人向けデスクトップPCから始まり、2001年7月にワークステーション、2006年6月にx86サーバー、2007年3月に個人向けデスクトップPC、2010年6月に一体型デスクトップPCと来て、今回法人向けノートPCの生産が始まった。
東京生産のあゆみ | 東京生産のメリット | 東京生産と海外生産の比較 |
東京生産のメリットについて、パーソナルシステムズ事業統括PSGサプライチェーン本部・本部長で昭島事業所長の清水直行氏は、「東京生産のメリットは納期短縮に加え、品質の向上とサービスレベルの向上」と説明する。
清水直行氏 | サービス向上例 |
海外生産に比べコスト的にはやや劣る部分はあるものの、製品への信頼度は大幅に向上。さらに、BIOS設定、資産管理タグなどのハードウェア側の設定、顧客が設定したマスターイメージを工場でインストールするソフトウェアのプリロード、バックアップメディア作成、BIOSバージョン管理などのソフトウェア設定、指定品の同梱など顧客の要望に合わせて、柔軟性の高い設定を行なうCIS(カスタムインテグレーション)を行なうことでのサービスレベルの向上が実現する。
公開された昭島事業所の3階部分は、部材倉庫がある4階からピックアップされた部材の組立を行なっている。
100%受注生産体制をとる約6mの最終組み立てラインは、その日の受注内容に応じてデスクトップ、ワークステーション、ノートPCのいずれかを組み立てる。100%受注生産であることから、日によって生産するものが全く異なるが、それに対応できることが特性となっている。
「今回、ノートPCの生産を開始するにあたり、特にラインの新設等は行なっていない。ノートPCはデスクトップPCに比べ、利用するネジが小さい傾向があるため、工具類については新たに用意したものはあるが、ラインの内容については手を加えていない」(清水所長)。
ラインは2交代制で、生産量に応じて最長で24時間生産を行なう。ラインの数は1月に増設され、6ラインになっている。
最終組立の後は、顧客のオーダー情報に合わせてきちんとマシンが動作するのかをテストするプリセットラインに送る。顧客のオーダーによって全く異なる中身だが、プリテストツールを動かすことで、担当者がマシンごとの違いを意識する必要がない。
その後にある連続動作試験は、人手を介入させずにプロセッサに負荷をかけ、温度が上昇する中ファンがきちんと動作するのかなどをチェックする。デスクトップPCの場合、2時間から3時間の試験時間だったが、ノートPCの場合は試験時間が延びて約6時間かかる。
その後の抜き取り検査は、梱包されたものの中から無作為に抜き取り、同梱されるはずのものが全て同梱されているのか、きちんと動作するのかなど顧客が梱包された製品を開封してチェックするのと同様にチェックを行なう。「お客様に近い環境で、きちんと製品が動作するのかなどのチェックする」(清水所長)。
梱包された製品については、トラックで走った際の揺れに耐えられるのかなどをチェックする振動検査も行なわれる。
こうして組み立てられた製品は、エンドユーザー、ディーラーなど発注相手に送られる。
(2011年 8月 25日)
[Reported by 三浦 優子]