インテル吉田社長、震災復興に向けたIT活用促進を訴求
~Atom Z670についても解説

吉田和正氏

4月27日 開催



 インテル株式会社は27日、記者会見を開催し、同社代表取締役社長の吉田和正氏が、1月以降の取り組みについて報告するとともに、先だって中国北京で開催されたIDFで発表された新Atomについても解説した。

 まず、吉田氏は1月以降の活動成果として、第2世代Coreプロセッサの発表、電子書籍事業における凸版印刷とビットウェイとの協業、Thunderbolt技術の発表、10コアXeon E7ファミリーの発表、多数のSSDの投入などを挙げた。

 吉田氏は第2世代Coreプロセッサについて、チップセットで問題が発生したことに言及。現在は解決済みで、被害は最小限にとどめたが、あってはいけないことであり、今後こういったことの起きないようにしたいと自戒した。

 それ以外の点では、発表以降順調に既存製品からの移行が進んでることを紹介。直近の数値として、ネットブック/ネットトップを除く国内のPCでは24%が第2世代Coreを採用しているという。その背景には、プロセッサ自体、および内蔵グラフィックの性能が高まったことと、普及価格帯にあることが寄与したと説明した上で、今後、特に女性層などへ、さらに対象を広げるには、性能だけでなく、新しい使い方や楽しみ方の提案も行なっていく必要があると説明。その具体例の1つとして、ワイヤレスディスプレイ(WiDi)を紹介した。

 WiDi自体は以前から提供されている機能だが、まもなくソフトウェアのバージョンアップにより、HDCPに対応可能となり、これによりDVDやBlu-ray Discなどの著作権保護された映像も無線でTVへと出力できるようになり、実際にそのデモも行なわれた。

1月~4月の主な活動国内PCの搭載プロセッサの推移WiDiのデモ。右にあるノートPCで再生しているBDの映像が、無線でTVに接続されたWiDiアダプタへ送信され、TVに表示

 同社では2011年に入ってから、「コンピュート・コンティニュアム」、すなわち異なる機器でも共通の環境を実現することをスローガンに掲げている。クライアント側において、同社はPC分野では絶対的な強さを誇るが、組み込み分野では後発としてこれから開拓していくことになる。そのための製品の1つが、先だって発表されたAtom Z670となる。

 同製品については、技術本部IA技術部長の秋庭正之氏が詳細を解説した。Atom Z670は、CPUにメモリコントローラ、ディスプレイコントローラ、GPUを内蔵。CPUコアは、シングルコアでHyper-Threadingに対応し、クロックは1.5GHz、L2キャッシュ容量は512KB。各種ベンチマーク性能は、概ね1.66GHz駆動のAtom N455の9割程度となるが、プラットフォーム消費電力は半分以下に抑えており、性能よりも低消費電力/低発熱に振った設計。実際、ファンレスでも運用できるという。

 GPUの3D性能もN455と同等か9割程度になるが、Z500シリーズとの比較では5~6割増しになるという。また、1080pの動画デコードや、HDMI出力といったメディア再生周りについても訴求されている。

 OSはWindows 7に留まらず、MeeGo、Androidにも対応する。

 IDF北京ではこれ以降の世代のAtomについても発表があり、今後前倒しで32nmや22nmプロセスへの移行を進めていくという。吉田氏によると、32nm世代ではリーク電流が1/10になり、続く22nm世代ではトランジスタのアクティブ電力が1/2程度に、集積度は前世代の2倍程度になるという。

 このように、Atomにおいて開発を急ぐのには、先にも述べた通り、組み込み分野では他社の後追いをしているという状況がある。吉田氏は、その打破には他社の4倍も5倍も努力する必要があると、その決意のほどを示した。

 また、同社はすでに22nmプロセスのファブを3カ所に展開しているが、その先の14nm世代についてもアリゾナに50億ドルを投じてファブ42を今夏より建設着工し、2013年に完成させる予定であることを改めて説明した。

秋庭正之氏Atom Z670はメモリコントローラ、GPUも内蔵し、Intel SM35 Expressとの2チップ構成Atom N455との性能比較
Atom N455(プラットフォームレベル)との消費電力比較Atomの今後の計画ファブについてもこれまで通り積極展開を行なう

 最後に吉田氏は、ICT(情報通信技術)の重要性について語った。3月11日の東日本大震災発生時、吉田氏はオフィスにいた。同社の危機管理チームの管理部長も務める吉田氏は、地震発生後、社員の安全確認などの指揮にあたったが、同社では各社員にモバイルコンピューティング環境を用意していることから、短時間で全社員の安全が確認できたといい、ITが生産性向上のみならず、危機管理プラットフォームとしても重要となると語った。

 現在同社は、経団連やJEITAが設立した「東日本大震災 ICT支援応援隊」にも協賛しているが、会の最後に吉田氏は、今年が日本法人設立35周年ということ、そして日本復興への協力の決意表明として、主として日本法人の社内で利用する「with Japan」の文字の入ったロゴを披露し、被災に対するITの推進活動を積極化していくことを明らかにした。

日本におけるインテルのビジョン特別に作られたwith Japan付きロゴ

(2011年 4月 27日)

[Reported by 若杉 紀彦]