ASUS会長Jonney Shih氏インタビュー
「モデルとするライバルはApple」

Jonney Shih氏

10月15日 実施



 10月14日に都内で行なわれた製品発表会にあわせて来日した、台湾ASUSTeKの会長であるJonney Shih氏がインタビューに応じ、製品開発における哲学や、今後のシェアの目標などについて語った。なお、インタビューは複数誌による合同で行なわれている。また、内容はPCに限定されている。

【Q】直近のワールドワイドでの業績について教えてください。また、その結果について、どう思っているか教えてください。

【Shih氏】今、コンシューマ向けノートPCという括りでは、世界第3位のシェアに上り詰めました。企業向けも含めたノートPC全体では、IDCおよびGartnerの最新の調査で、東芝を抜いて5位になったという報告を受けています。これは、我々の革新と高品質を提供すべく邁進してきた結果によるものであり、社員の努力にとても満足しています。2010年はこれまで1,700万台を出荷しました。

【Q】ASUSTeKの製品開発の規模や期間などについて教えてください。また、製造面でPegatronとの関係が今どうなっているか教えてください。

【Shih氏】ASUSブランドだけで、今3千人以上の開発者を抱えています。製品の開発期間については、我々は多岐に渡る製品を開発しているので一概には言えませんが、通常1製品に月6〜9カ月程度かけています。ただし、中には3カ月で開発を終えたノートPCもあります。昨日発表した「NX90Jq」については、取り組むべき課題が多かったのですが、あらゆる点において妥協はしたくないと考えました。そこで、担当者を複数のチームに分け、予算も別々にして開発に当たらせることにしました。それでも開発には1年を要しました。

 製造については、ご存じの通り、もともと内部でやっていたものを、Pegatronという企業にスピンアウトさせました。当初Pegatronは100%出資の子会社だったので、製造も100%そこに委託していました。しかし現在では、出資比率も大幅に引き下げ、別の会社になっています。言い換えるなら、ASUSTeKとPegatronは、お互いにオープンな関係になりました。そのため、互いにどの企業と提携するかもオープンになっています。結果として、現在ASUSTeKがPegatronに委託する割合は8割程度ですが、これは今後どんどん減っていく見込みです。

【Q】これからさらに成長していくうえで、例えば売上、利益、シェア、顧客満足度といった要素の中で、ASUSTeKはどれを重要視しているのでしょうか?

【Shih氏】我々はもともと技術志向の会社で、今もそうですが、もちろんマーケティング面も重視しています。我々は自らの戦略を「ジャイアントライオン戦略」と名付けています。これは文字通り、ジャングルの王者であるライオンとなるべく、製品の品質、性能、シェア、そして顧客満足度など、あらゆる面で1位を目指すというものです。

【Q】最近のASUS製品では、デザインを重視したものが増えてきました。どのようにしてデザイン面での改善を行なってきたのでしょうか。

14日に行なわれた発表会より

【Shih氏】我々は現在、製品の技術面とデザイン面の両方に力を注いでいます。ユニークな取り組みとして、我々はデザイナー達に、他の社員とは異なる就業規則を与えています。例えば、デザイナー達は、就業時間中に泳ぎに行ったりするのも自由です。中には勤務中にパラグライダーをしに出かけるものもいます。というのも、そういった活動から、デザインに関する新たな刺激が生まれると考えているからです。

 もう1つ、デザイナーに対しては、(芸術的思考を行なうと言われる)右脳だけでなく、(理論的思考を行なうと言われる)左脳を使い、ビジネスや技術についても考えるよう指示しています。逆に、機械設計者に対しては、右脳的思考も行なうよう促しています。中国語では「同理心」と表わすのですが、常にさまざまな相手の立場に立って考えさせることで、例えばデザインとエンジニアリングがうまく融合されたり、競合よりも優れた製品を生み出せるようになるのです。

 我々は、有名だからと言って外部のデザイナーに丸投げしたりと言ったことは決して行ないません。例えばNX90Jqの場合、Bang & Olufsen ICEpowerと協業し、SonicMasterという高品位な音質を実現していますが、これについては「Golden Ear (黄金の耳)」と呼ばれる社内のオーディオエンジニア達の寄与するところが7割近くに達しています。こうすることで、ここで得たノウハウを、今後の製品にも遺憾なく発揮させることができるのです。

【Q】現在までの日本法人に対する会長の評価を教えてください。

【Shih氏】数字的には日本における我々のシェアは十分に大きなものとは言えません。しかし、今後には大きな期待を持っています。日本では諸国と比べ、ものに対する高い品質が求められますが、これは我々の開発哲学とまさに一致するからです。日本は世界の中でも非常に重要な市場だと考えており、特別な優先順位をつけています。今後も革新を進めていくことで、日本市場からも受け入れられる製品を提供し、シェアも確実に上がっていくと思っています。

【Q】一部の報道では2011年までに、ASUSTeKが日本で5位を目指すと報じられていますが、その通りなのでしょうか。

【Shih氏】その言葉自身は、私が話したものではありません。しかし、我々は日本市場において外資系メーカーとしてトップシェアを得たいと考えています。そうすると、必然的に日本でのシェアは5位くらいになるでしょう。もちろん、これは大きな挑戦だと思っています。

【Q】今会長がもっとも気にしているPCメーカーを、外資系と日本系で挙げるならどこになりまうすか。

【Shih氏】日本のメーカーとしては、ソニーと東芝というところでしょうか。ただし、両社の特性は異なっています。ソニーはデザイン志向で、東芝はマーケットシェア志向だと言え、それぞれ異なる強みを持っています。

 外資系ではHewlett-Packardは、全般的に全てのセグメントで強い企業です。しかし、私が関心を持っているのはAppleです。我々はさまざまな分野のトップ企業から学ぼうと努力しています。しかし、中でもAppleはエンジニアリング、デザイン、そしてユーザーインターフェイスの面で非常に強い力を持っています。そして、我々はいろいろな面でAppleをモデルとしているところがあります。

【Q】今後、ASUSTeKも「Eee Pad」などスレート型端末を出していくと思いますが、これによりPC市場はどのような影響を受けるとお考えですか。

【Shih氏】スレート型端末とPCは一部において競合します。しかし、その割合は非常に小さなものだと考えています。というのも、スレート型端末は、PCよりもカジュアルなコンピューティング端末で、コンテンツの視聴や、メール、ブラウジングなどに特化しています。と同時に、使いやすくできており、高齢者にも受け入れられるでしょう。そのため、スレート型端末が出ることで、コンピューティング市場全体は拡大するものと思われます。

【Q】「ASUS」の読み方は、日本では「エイサス」だったり、「アスース」だったり定まっていません。会長自身は「エイスース」と発音されていますが、標準は一体どれなのでしょうか。

【Shih氏】確かに「ASUS」はいくつかの読み方が可能です。英語圏では、「エイサス」あるいは「エイスース」という発音が多く、「アスース」は少数派です。では、「エイサス」なのか「エイスース」なのか、となったとき前者は「エイサー」に似ているので、私としては「エイスース」を標準にしています。

 しかし、非英語圏では「エイ」という発音に馴染みがなく「ア」で代用されることがあります。日本もその一例で「アスース」が標準となっています。

【Q】最後に日本のエンドユーザーに一言お願いします。

【Shih氏】我々は、日本のユーザーが高品位なものを求めていることを十分に理解しています。そして、我々の製品には、それを満たすだけのポテンシャルがあると考えています。我々の製品に期待してください。

(2010年 10月 15日)

[Reported by 若杉 紀彦]