米Data Roboticsは16日、同社製ストレージシステム「Drobo」(ディーロボ)シリーズの国内販売支援/サポート体制などを強化するとともに、国内での販売強化に乗り出すことを発表した。
Droboシリーズは4~8台のSATA HDDを内蔵できる外付けストレージ。同社独自の「BeyondRAID」技術を搭載し、データの安全性を高めながら、簡単な使い勝手や柔軟な拡張性を実現しているのが特徴。
従来のRAIDシステムとの違いは、利用するHDDのメーカーや種類のみならず、容量も選ばない点。一般的RAIDストレージでも、異なるHDDをサポートするものもあるが、その際の容量は、基本的に「最小の容量×台数」となる。例えば、500GB、1TB、1.5TBのHDDがあった場合、ボリュームの基本合計容量は500GB×3となる。
これに対しBeyondRAIDでは、パリティ分のを除いた全てのHDDの全容量を利用することができ、前述の例では3TBのボリュームとして認識される(パリティ分を除く利用可能容量は2TB)。HDDの追加や変更に対しても柔軟で、常に搭載するHDDの全容量が利用できるので、最初は容量の少ないHDD、あるいは少ない台数のHDDで運用し、初期投資を抑えながら、空き容量が逼迫した際は、システムを停止することなく、HDDをホットスワップで交換/増設していくことができる。
なお、利用できるHDDの最大容量はとくに制限ないが、1ボリューム16TBまでという制限がある。
BeyondRAIDの概要 | HDDの容量が違っても全てを活用できるのがRAIDとの大きな違い |
運用に際し、高い技術や知識、専門の管理者を必要とせず、簡単に利用できるのも同社が訴求している点。Droboでは2台以上のHDDが必要だが、データの複製方式の設定は不要で、例えば2台から3台に増やすと、自動的にRAID 1相当からRAID 5相当になる。
同社ではRAID 1/5相当のモードを「シングル」、RAID 6相当のモードを「デュアル」と呼んでいるが、これも専用ユーティリティを使うことで、オンザフライで切り替えできる。
また、一般的RAIDシステムがアレイのリビルドに際し、HDDのサイズの分だけ構築に時間がかかり、2TB×5といったシステムでは半日~1日程度かかることもあるが、BeyondRAIDはHDDのブロック単位でデータの保存場所を把握しており、実際に使っているサイズ(ブロック)の分だけしか時間がかからないという長所もある。
各種設定や、状態の監視はユーティリティから行なえるが、通常の運用においては、これを使う必要がない。というのは、本体の状況は常に前面にあるLEDで把握できるため。
前面下段には青いLEDが10個あり、これでストレージの空き容量(LED 1個が10%使用)を示す。本体右手には緑/オレンジ/赤に光るLEDがある。HDDの故障、空き容量の逼迫といった場合には、赤やオレンジに光る。Droboの前面には磁石で簡単に着脱できるカバーがあるのだが、この内側にLEDの発光パターンに応じた問題の状況や対処の書かれたシールが貼付されているので、説明書を手元に置いていなくても、すぐに状況を把握できる。
青いLEDがHDDの使用量。現在8割を超えているので、右側にオレンジ色の警告LEDが点灯している | 前面カバーは磁石式で簡単に開く。その場でHDDを追加すると、空き容量が空くので、青いLEDの点灯数が減り、オレンジ色も緑に戻る |
Windows用のユーティリティではより詳細な状況が分かる | 先のHDDを追加した後の様子。 |
基本機能はファイルストレージのみで、TimeMachineには対応するが、メディアサーバーやFTPサーバーなどの機能は標準では用意されない。ただし、ユーザーがプラグインを作成/適用する機能があり、Droboのユーザーコミュニティには、DLNA、Web、FTPなどのサーバープラグインが用意されているという。
転送速度については、特に高速性は謳っていないが、一般的な競合製品と同等のレベルとしている。
ラインナップは、Drobo、Drobo S、Drobo FS、DroboPro、DroboEliteの5種類。HDDを含まない本体の店頭予想価格は、順に39,900円、67,800円、77,800円、159,800円、398,000円。主な仕様は下表の通り。
Drobo | Drobo Elite | カバーを開けたところ |
Drobo | Drobo S | Drobo FS | DroboPro | DroboElite | |
ドライブベイ | 4スロット | 5スロット | 8スロット | ||
ディスクプロテクション | シングル | シングル/デュアル | |||
ボリューム数 | 1 | 1 | 1 | 16 | 255 |
対応HDD | 3.5インチ SATA I/SATA II ハードディスクドライブ | ||||
ジャンボフレーム | -- | -- | 対応 | -- | 対応 |
USB 2.0 | 1 | 1 | -- | 1 | 1(管理専用) |
FireWire 800 | 2 | 2 | -- | 2 | -- |
eSATA | -- | 1 | -- | -- | -- |
iSCSI | -- | -- | -- | 1 | 2 |
Gigabit Ethernet (AFS/CIFS) | -- | -- | 1 | -- | -- |
消費電力(HDDなしのスタンバイ状態) | 5W | 12W | 12W | 13W | 13W |
消費電力(HDDフル搭載稼働時時の平均) | 40W | 56W | ← | 82W | ← |
動作音 | 24.2dB | 31.8dB | ← | 30.4dB | ← |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 152.4×271.8×160mm | 150.3×262.3×185.4mm | ← | 309.1×358.1×138.7mm | ← |
重量 (HDD、ACアダプタを含まず) | 3.04kg | 3.63kg | ← | 7.34kg | ← |
設置方法 | デスクトップ | デスクトップ/ラックマウント | |||
対応OS | Windows XP/Vista/7/Server 2003/Server 2008、Mac OS X 10.5以降、Linux(EXT3のみ)、VMware ESX 4 (Elite) | ||||
対応ファイルシステム | NTFS、FAT32、HFS+、EXT3、VMFS(Eliteのみ) |
●国内でも最低年率100%の成長を目指す
今回の発表に合わせ、同社アジア・太平洋地域営業担当シニア・ディレクターのフィリップ・カズーボン氏が、同社の概要などを説明した。
同社は本社をカリフォルニア州サンタクララに置く、2005年設立の会社。最初のDroboを出荷したのは2008年に入ってからで、以来2年半で12万5千台以上を出荷。2007年からの成長率は常に100%を超えているという。
カズーボン氏は、「RAID技術は1987年に開発されてから、約20年が経過するが主立った機能はほとんど進化していない。我々のBeyondRAID技術はRAIDのすばらしい技術を活かしながら、RAIDが持つ制約を排除したものだ」とBeyondRAIDの名称の意味するところを語った。
同社の顧客は、すでに世界中に多数あり、Appleや、Google、Microsoftといった大企業でも採用されているという。価格については、もっとも安価ではないが、手頃であり、それでいて、安全性、拡張性、運用性、柔軟性の点では他社製品に勝る、と主張する。
日本での本格展開に当たっては、10月末をめどに日本法人を設立することを発表した。
国内での目標についてカズーボン氏は、「向こう2~3年間は、最低でも年率100%の成長を目指す。また、当社の全世界での売り上げの内、日本の割合を今後2年の間に5~10%に引き上げる」と語った。
より具体的な施策については、日本オフィス代表の東貴彦氏が説明。主に、マーケティング、営業体制、販売パートナーの支援を強化していくと説明した。Droboは、すでに代理店を通じ、国内でも流通しているが、日本語サイトを立ち上げるほか、製品の日本語化や、パートナーへの技術支援など、エンドユーザー、パートナー双方に対するサポート体制を強化する。
なお、日本では5機種の内、Drobo、Drobo FS、DroboProを中心に拡販していく。
フィリップ・カズーボン氏 | これまでの採用例 | 日本市場での目標 |
東貴彦氏 | 日本での具体的施策 | 国内の販売パートナー |
(2010年 9月 16日)
[Reported by 若杉 紀彦]