情報処理技術遺産に一太郎やOASYSなど11件を認定
〜東大・小柴ホールで認定証授与式を開催

情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館の認定式が行なわれた東京・本郷の東京大学本郷キャンパス小柴ホール

3月9日 開催



 社団法人情報処理学会は9日、東京・本郷の東京大学本郷キャンパス小柴ホールにおいて、情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館の認定式を行なった。

 前年に続き、2回目となる今回は、11件の情報処理技術遺産と2件の分散コンピュータ博物館を認定し、資料および施設の所有者に認定証を授与した。

 情報処理技術遺産は、日本のコンピュータ技術発達史上の貴重な研究開発成果や国民生活、経済、社会、文化などに顕著な影響を与えたコンピュータ技術や製品などを対象に、次世代に継承していく上で重要な意義を持つ情報処理技術遺産の保存と活用を図ることを目的に開始された制度。

 同学会では、現存する貴重な史料をコンピュータに特化した実博物館などで保存すべきと考え、関係省庁など各方面に働きかけているが、具体的な実現手段がない段階。まずは、残っている貴重な史料の保存を図るとともに、我が国のコンピュータ技術の発展を担ってきた先人たちの経験を次世代に継承していくことが急務とし、その一助として、情報処理技術遺産の認定制度を設けたとしている。

情報処理学会の白鳥則郎会長 情報処理学会歴史特別委員会・発田弘委員長

 午前9時30分から開かれた認定式では、情報処理学会の白鳥則郎会長が挨拶。「コンピュータの歴史は、機械式で100年、電子式で50年の歴史を持つ。しかし、研究開発の成果や、重要な製品が保存されておらず、日に日に失われている。欧米ではこれらが保存され、若い世代の教育にも活用しているのとは対照的である。現在、情報処理学会ではバーチャルな形でコンピュータ博物館を公開し、アクセス数は月10万件に達しているが、実物を見たいという要望には応えられていない。できることはないかということで、昨年(2009年)から認定制度を実施しており、資料保存に対する努力に対する敬意を表すとともに、一般の関心も高めたい。今回は、11件の情報処理技術遺産を認定しており、いずれも貴重なものである。今後も継続して発掘し、認定することで、パイオニアたちの知恵や経験を次世代に継承したい」などと語った。

 また、同学会歴史特別委員会・発田弘委員長が、選定基準概要および選定経緯の報告を行なった。

 発田弘委員長は、「把握しているだけでも100件を超える貴重な遺産が残っているが、重要性、緊急度、保存状態などを勘案して候補を絞った。また、今回はソフトウェアを認定することにも力を入れた。保存されているソースコードなども対象とした」としており、ジャストシステムの初代「一太郎」のほか2件が、ソフトウェアとして初めて情報処理技術遺産認定されている。また、「分散コンピュータ博物館の認定に当たっては、委員会が実際に訪問して最終候補を決定した」としている。

 情報処理技術遺産は、その時代において独創性または新規性が著しかったもの、その時代において性能が格段に優れているもの、技術的波及効果の大きかったもの、動態保存されるていあるいは製造当初の姿をよく留めているものなどを選定条件としており、部品、基板、装置、システム、設計図などが実際の現物として残っていることを対象にしているほか、認定された技術遺産をできるだけ希望者に公開することを認定条件としている。

 「時間的、費用的制約などで今回の認定に入らなかった貴重な遺産はまだある。今後も継続的に調査活動を行っていく」とした。

 その後、白鳥会長から認定された各社に認定証が授与された。

OASYS 100及び親指シフトキーボード試作機で認定証を受け取る富士通の三竹兼司氏 会場にはOASYSの生みの親である神田泰典氏も駆けつけた OASYS 100及び親指シフトキーボード試作機の情報処理技術遺産認定証
初代「一太郎」の認定証を授与されるジャストシステムの福良伴昭社長 福良社長と認定証 初代「一太郎」の情報処理技術遺産認定証
会場に展示されていた初代一太郎と、昨年、情報処理技術遺産に認定されているPC-9801 NECは日本初の科学計算用コンパイラ「NEAC-2203 NARC」と、パラメトロン式オフィス用小型コンピュータ「NEAC-1210」が認定された

 今回、認定された情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館は以下の通り。

●情報処理技術遺産 11件

微分解析機
製造者:昭和航空計器など
製造年:1940年代前半
黎明期の機械式コンピュータで当時の最高水準の技術を用いて実現された精巧な歯車機構を有する
HITAC 201
製造者:日立製作所
製造年:1961年
初期のトランジスタ式コンピュータで装置全体が現存するものとしては最も古いものの1つ
NEAC-2203 NARC
製造者:日本電気
製造年:1961年
わが国初の科学計算用コンパイラ
MARS-101
製造者:日立製作所
製造年:1963年
MARS-1の後継として、全国の列車の予約関連業務全般を扱う日本初の本格的なオンラインリアルタイムシステム
NEAC-1210
製造者:日本電気
製造年:1966年
当時ベストセラーのパラメトロン式オフィス用小型コンピュータ
MELCOM81
製造者:三菱電機
製造年:1968年
オフィスコンピュータと称した初のコンピュータ
SCK-201形漢字鍵盤さん孔機
製造者:新興製作所
製造年:1968年
漢字入力に用いられた漢字鍵盤さん孔機
2400B型ラインプリンタ
製造者:沖電気工業
製造年:1973年
2400ボー活字ベルト式ラインプリンタ
FACOM 603F磁気テープ装置
製造者:富士通
製造年:1973年
わが国初のシングルキャプスタン方式磁気テープ装置
OASYS 100及び親指シフトキーボード試作機
製造者:富士通
製造年:1983年
独自の日本語入力方式を採用したワープロとそのキーボード
初代「一太郎」
製造者:ジャストシステム
製造年:1985年
パソコン用日本語ワープロソフトとして一世を風靡した

●分散コンピュータ博物館 2件

東京理科大学近代科学資料館
計算器具・機器類から微分解析機やパラメトロンコンピュータFACOM 201まで貴重な遺産が多数保存、展示されている
東北大学サイバーサイエンスセンター展示室
同大学計算センターで使われたコンピュータを中心に部品などを保存しコンピュータ技術の発展をわかりやすく展示している

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(2010年 3月 9日)

[Reported by 大河原 克行]