情報処理学会、「情報処理技術遺産」の認定式を開催
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認定式の様子。佐々木元会長(左)から一人ずつ手渡された |
3月2日 開催
社団法人情報処理学会は、「情報処理技術遺産」と「分散コンピュータ博物館」の認定制度を開始。3月2日、東京・上野の国立科学博物館で認定式を行なった。
同認定制度は、次世代に継承すべき重要な意義を持つ技術や製品の保存と活用を図ることを目的に、国内のコンピュータ技術発達史上、重要な研究開発成果や、国民生活、経済、社会、文化などに顕著な影響を与えたコンピュータ技術および製品などの中から、現存する貴重な史料の保存を目指すもの。
また、分散コンピュータ博物館の認定は、小規模ながら貴重な史料の保存および展示を行なっている資料室、コレクションをネットワーク化して利用拡大を促すために開始するものだ。
「先人の努力の結晶である情報処理技術関連の歴史的文物を将来に長く保存し、次世代人の学ぶよすがとして伝える」ことを目的としている。
「情報処理技術遺産」の認定基準 | 技術史的成果、製品や生活、文化、経済、社会に著しく貢献したもの | 認定対象はハードウェア、ソフトウェアのほか、技術、海外のものも |
認定の条件は、情報処理学会が公表し、希望者に公開できることなど | 認定基準は情報処理学会の歴史特別委員会が価値を認めたもの | 時代への制約はなく、認定を取り消す場合もある |
分散コンピュータ博物館について | 第1回目の選定は100件を超える実物所在情報から候補を絞った | 今後も毎年追加する予定だという |
認定式では、認定された機器を所有している代表者に対して、情報処理学会の佐々木元会長から認定証が手渡された。
情報処理学会の佐々木元会長は、「電子計算機は50年の歴史があるが、機械式計算機は、1902年に福岡市豊前市出身の矢頭良一氏が発明し、1904年頃に生産された自働算盤にまで遡る。その後、日本のコンピュータ産業は、パラメトロンの発明や、トランジスタ化では欧米に先行して取り組むなど、世界に誇れるものを持っている。情報処理技術の発展の歴史のなかでも、重要な成果を収めてきた。しかし、コンピュータに特化した立派な博物館が日本にはなく、歴史遺産の保存状態には寂しいものがある。各方面に博物館の必要性を提示してきたが、まだ現実化する目処がたっていない。何年か先に、博物館を実現しようと思ったときに、貴重な遺産が紛失する可能性もある。それを回避するために、今回認定制度を発足させた」と、狙いを語った。
また、情報処理学会歴史特別委員会の発田弘委員長は、「100件を超える実物所在情報をもとに選定したが、今回は時間的制約、費用的制約から選定に入らなかった候補が多数ある。まずは緊急性を要するものから認定した。今後、新たに発見されるものもあり、時の流れとともにの遺産価値が出てくるものもある。引き続き調査を行ない、毎年、認定遺産を追加していきたい。また、今回は、設計図や文書、またソフトウェアが含まれていないが、こうしたものも対象にしていくことも検討したい」とした。
認定式会場に展示されていたETL Mark IV計算機に使われたバッケージ | 挨拶する情報処理学会の佐々木元会長 | 情報処理学会歴史特別委員会の発田弘委員長 |
認定されたのは、情報処理技術遺産は23件、分散コンピュータ博物館で2件。
認定された遺産、博物館は以下のとおり。
●情報処理技術遺産
●東京・上野の国立科学博物館に展示されている情報処理遺産の認定品
タイガー計算器 No.59。当初は虎印計算器として発売された | 九元連立方程式求解機。東京帝国大学において、1944年に製作されたという | ETL-Mark II。電話交換機の部品として使われていたリレーを使用して、1955年に完成した |
今回認定されたMARS-1の後継機であるMARS-101も国立科学博物館に展示している。認定式には、MARS-1を開発した穂坂衛氏も駆けつけた |
富士フイルムがレンズ設計の自動化のために開発したFUJIC。使用した真空管は1700本。計算速度は人手の2,000倍になった | PC-9801は展示されていないが、NECが発売した日本初のマイコンキットTK-80は国立科学博物館に展示してある |
●分散コンピュータ博物館
情報処理学会では、今回、認定した遺産と同種のものを所有している人は、それを認定遺産と同じと称することが可能としており、例えば、初代のPC-9801を所有している人は、それを「認定遺産と同じもの」と語ることができる。
認定式で、PC-9801の情報処理技術遺産認定証を受け取ったNECパーソナルプロダクツの高塚栄執行役員常務兼PC事業本部長は、「8bitパソコンの時代は、マニアを中心とした利用だったが、PC-9801によって開かれた16bitパソコンの時代になって、ビジネスシーンでの利用が広く促進された。PC-9801は、発売当初から、N88-BASICと互換性があるN88-BASIC(86)を搭載するなど、互換性に対するこだわりが多くのユーザーに支持されたといえる。今回、情報処理技術遺産に認定されたコンピュータは、限られた人が、限られた場所で、限られた用途に利用するものばかりだが、唯一、PC-9801だけが、多くの人が、どんな場所でも、個人のアイデアを現実のものにするという用途で利用できる点が異なる。コンピュータを利用できる人を、3桁も4桁も増やしたのではないか。そうした点も、遺産に認定された要素だと思っている」とした。
情報処理技術遺産に認定された初代NEC PC-9801 | PC-9801の情報処理技術遺産認定証を受け取ったNECパーソナルプロダクツの高塚栄氏 | PC-9801の情報処理技術遺産認定証 |
□情報処理学会のホームページ
http://www.ipsj.or.jp/
□情報処理技術遺産のページ
http://museum.ipsj.or.jp/heritage/
□コンピュータ博物館(情報処理学会)
http://museum.ipsj.or.jp/
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(2009年3月2日)
[Reported by 大河原克行]