NVIDIA、初のOpenCLセミナーを開催
〜アップルがMac OSでのOpenCLをデモほか

会場の様子

10月29日 開催



 NVIDIAは29日、東京・秋葉原のコンベンションホールにおいて「NVIDIA OpenCLセミナー〜GPUコンピューティングがもたらすもの」と題したセミナーを開催。同社を初め、アップルやデルといった協賛各社もデモや解説を行なった。

NVIDIAジャパン杉本博史氏

 参加にあたっては事前登録が必要だったが、参加費は無料で、テーマが注目の集まる最新技術ということもあって、数百人が入る会場は追加の椅子が必要となるほどの盛況ぶりだった。

 まず最初にNVIDIAジャパン パートナーセールス ディレクターの杉本博史氏が挨拶を行なった。杉本氏がまず切り出したのは「なぜNVIDIAがOpenCLのイベントを主催するのか」という疑問に対する自問自答だった。事実、NVIDIAがCUDAではなく、OpenCLのためだけのイベントを国内で主催するのはこれが初めてだ。その答えは「NVIDIAはGPUコンピューティングを推奨しており、OpenCLもそのためのツールの1つだから」というものだ。

 CPUとGPUという異なる種類のプロセッサを同時に扱う並列コンピューティングプラットフォーム、あるいはGPUコンピューティングのためのツールという意味で、OpenCLはNVIDIAの提供するCUDAと完全に競合する。しかし、この業界ではCUDAが先行しているものの、オープンな業界標準という強みからOpenCLへの注目も強まっている。

 そのため、NVIDIAは近くバージョン3.0が控えるCUDAも引き続き推進していくが、GPUコンピューティングの促進という視点から、ユーザーの選択肢を広げるため、OpenCLについても強く後押ししていくのだという。

 続いて、Khronos Group日本担当ビジネス・マネージャの河西 仁氏が、Khronos GroupおよびOpenCLの簡単な紹介を行なった。

 Khronos Groupは、オープンな標準APIの仕様策定と普及を目的として'99年に設立された非営利団体。同団体が規格化したAPIとしては3Dグラフィック用のOpenGLが有名だが、これ以外にもオーディオ用のOpenSL|ESや、モバイル用のOpenKODEといったものもある。現在、日本企業十数社を含む109社が加盟し、Board of Promoterと呼ばれる上級会員には、Intel、AMD、NVIDIA、Apple、Samsung、ARM、Sony Computer Entertainmentといった企業が名を連ね、代表はNVIDIAのNeil Trevett氏が務める。

 GPUコンピューティング用プラットフォームであるOpenCLは同団体が策定した最新の規格で、Appleが2008年6月にドラフトを提出し、規格化が始まった。その半年後の2008年12月には、異例とも言える早さでバージョン1.0の仕様が公開された。ちなみに、OpenCLの作業部会にはActivisionやEAといったゲームディベロッパも参加している。

 Apple、AMD、NVIDIAはOpenCLに準拠したツールをすでに公開しているものの、まだようやく開発するための下地が整ったという段階。Khronos Groupでも今回のイベントを皮切りに、順次啓蒙/普及活動を行なっていく予定で、11月には米国で行なわれるSupercomputing 2009で、チュートリアルを実施。国内では12月16日から開かれるSIGGRAPH ASIA 2009でブースを構えるとともに、プライベートセミナーも開催する。

 なお、2010年の上半期にはバージョン1.1が予定されている。

Khronos Groupの河西 仁氏 Khronos Groupが策定したAPI 参加会員の一覧
OpenCL作業部会の参加者 OpenCLのこれまでの推移 12月にはSIGGRAPHで講演を予定

 次に、NVIDIAジャパン ソリューション アーキテクトの馬路徹氏が、同社のGPUコンピューティングの現状について説明したが、後半は同社の次世代アーキテクチャである「Fermi」の解説に終始した。

 Fermiの詳しい解説については関連記事に譲るが、馬路氏はFermiをして「スーパーコンピュータの魂を持つGPU」と表現するほど、Fermiではコンピュテーションの強化に向けた仕様、改善が盛り込まれている。

 具体的には、IEEE 754-2008準拠、FMA命令の倍精度サポート、全命令32bit対応の整数ALU、L1/L2キャッシュの搭載、ECCサポートなどが挙げられる。また、Visual Studioに組み込まれる統合化開発環境である「Nexus」によってパラレルデバッガやパラレルアナライザなどが利用可能になったことをアピールした。

NVIDIAジャパンの馬路徹氏 Fermiアーキテクチャの概要 CUDAコア(Streaming Processor)の概要

 続いて、フィックスターズ ソフトウェア・プラットフォームグループOpenCLチームリーダーの土山了士氏が、OpenCLの概要を説明した。

 土山氏は、OpenCLのメリットについて、演算デバイス(GPUなど)については、OpenCLコンパイラを使って、統一された言語(OpenCL C)で記述でき、制御ホスト(CPU)については、OpenCLランタイムライブラリを使って、統一されたAPIで演算デバイスの制御が可能な点にあるとした。

 その一方で、AMDやNVIDIA、Intelといったメーカーを問わず、基本的にどの演算デバイスでも動作するが、ハードウェアサポートのない機能を使うと性能が低下する可能性があるといった注意点などにも言及した。

 なお、同社は「FOXC」と呼ばれる、OpenCLソースファイルを入力とするソースツーソースのコンパイラを提供しているほか、2010年には、商用Linuxとして初めてCUDAをプリインストール/サポートする「Yellow Dog Enterprise Linux for CUDA」を提供開始する予定。

フィックスターズの土山了士氏 OpenCLのメリット
OpenCLの性能 Yellow Dog Enterprise Linux for CUDAのデモ機も展示された

 続いてアップルジャパン法人営業部アカウントマネージャーの中村弘之氏が、Mac OS上でのOpenCLアプリケーション開発の実践的手法について解説した。

 Mac OS Xの最新バージョンであるSnow Leopardについてアップルでは、主な新機能として完全な64bit化、マルチスレッド技術GCD、そしてOpenCLへの対応を挙げている。中村氏は開発環境であるXcodeを使った具体的なOpenCLアプリケーションのコーディング方法を順を追って説明した。

 その内容はかなり専門的になるため、ここでは割愛するが、会場に設置されたデモ機では、OpenCLを使ったサンプルアプリケーションが動作していた。

アップルジャパンの中村弘之氏 OpenCLはSnow Leopardの3大新機能の1つに位置づけられる
セミナーでは実際のコーディング方法について解説された 展示機のiMac上で実際にOpenCLアプリをデモした
Snow Leopard上でのOpenCLアプリの動画

 このほか、デル北アジア地域 公共マーケティング本部クライアントソリューションマーケティングマネージャーの垂見智真氏は同社のHPC向けワークステーションやサーバー、またエルザジャパン代表取締役副社長の内藤万義氏は、CUDA対応アプリケーションとしてOptiTexの業務用クロスシミュレータ「3D Runway」を紹介した。

デルの垂見智真氏 同社のCUDA対応ワークステーション
エルザジャパンの内藤万義氏 同社のQuadro PLEX

(2009年 10月 30日)

[Reported by 若杉 紀彦]

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