NECエレ、5Gbps転送対応のUSB 3.0ホストコントローラを開発

USB 3.0 PCI Expressカードの試作品

6月初旬 サンプル出荷開始
サンプル価格:1,500円/個



 NECエレクトロニクス株式会社は、5Gbps転送に対応したUSB 3.0ホストコントローラ「μPD720200」を開発し、6月初旬よりサンプル出荷を開始する。サンプル価格は1,500円/個。2009年9月に月間100万個の量産を目指す。

 μPD720200は、USB 2.0の10倍以上の転送速度である5Gbpsを実現した、USB 3.0 specification Revision 1.0に準拠したホストコントローラ。2ポートのダウンストリームを有する。転送速度はSuper-Speed(5Gbps)のほか、High-Speed(480Mbps)、Full-Speed(12Mbps)、Low-Speed(1.5Mbps)もサポートし、USB 2.0/1.1との下位互換性も保たれている。

 PCとの接続インターフェイスはPCI Express 2.0。動作電圧は3.3V、1.05V。パッケージは176ピンFBGA(10×10mm、0.65mmピッチ)。発表会では、PCI Express x1カード型と、ExpressCard/34対応のサンプル品が展示された。ドライバは無償で提供される。

 ホスト側のコネクタ形状は「USB 3.0 Standard-A」と呼ばれ、従来のUSB 2.0と同じでメスだが、端子外側(オスは内側)に5ピンの金属端子が新たに付加され、Super-speedモードによるデータ転送時のみこの端子を利用する。このためUSB 2.0機器とも接続できるようになっている。

 一方、デバイス側のコネクタは、新たに策定された「USB 3.0B」または「USB 3.0 Micro-B」コネクタを利用し、USB 3.0ケーブルが誤って2.0デバイスに挿入されてしまうことを防ぐ。ホストとゲスト、ケーブルの組み合わせの可否は下表の通り。

ホストゲストケーブル
可否
転送速度
USB 3.0USB 3.0USB 3.0
5Gbps
USB 3.0
USB 2.0
USB 2.0

480Mbps
USB 3.0
USB 2.0
USB 3.0
×
-
USB 2.0
USB 3.0
USB 2.0

480Mbps
USB 2.0
USB 3.0
USB 3.0

480Mbps
 
ExpressCard/34型コントローラの試作品USB 3.0のコネクタ部分(メス)。手前側に新しい5つの接点が見えるUSB 3.0Bコネクタ部分(オス、写真左)。従来のB型(右)と比較すると上側に端子が増えている

新津茂夫氏

 18日に都内で開かれた記者会見では、同社 第二SoC事業本部 副事業本部長の新津茂夫氏がUSBの現状について説明し、「'96年の策定以来、USBは幅広い分野に普及し、従来想定されていなかったものまで使われるようになった。しかし、Blu-ray DiscやHDD、フラッシュメモリの大容量化により、USBの高速化が望まれている」とした。

 例えば、Blu-ray Discの容量に相当する25GB分のデータを転送する場合、USB 2.0では14分かかるが、高速化されたUSB 3.0では70秒で転送が終わるという。これによりデバイスの使い勝手を大幅に高められるとした。


USBの応用の増加データ転送容量の増加によるUSB 3.0へのニーズUSB 2.0と3.0のデータ転送所要時間を比較

 USB 3.0で想定しているデバイスとしては、HDDなどの大容量ストレージが主流になるという。一方ホストはPCだけでなく、TVやデジカメ、スキャナなどにも普及するとした。

 USB 3.0のPCへの搭載率の推移は、2009年後半からスタートし、2011年には3割、2012年には8割の搭載を目指す。2012年時点における搭載台数比率予測は、ホストコントローラLSIを搭載した製品が9,000万台、チップセットに内蔵した製品が2億5,000万台になるだろうとした。

USBクラス別の製品用途HDDやデジカメなど大容量データの転送を必要とするデバイスはUSB 3.0へ移行する
USB 3.0とUSB 2.0の搭載PC台数比率の比較USB 3.0搭載PCの総出荷台数と、NECのホストコントローラ搭載比率

友田嘉幸氏

 同社 SoCシステム事業部 グループマネージャーの友田嘉幸氏は同社のUSB 3.0に対する取り組みを紹介し、「USB 3.0 Promoter GroupとしてHP、Intel、Microsoft、NEC、NXP、TIの6社が参入しているが、我々がホストコントローラにおいてのリーダーシップを握っている。USB 2.0時代から引き継いだソフトウェア資産もあり、顧客は開発が容易だ」とした。

 また、コネクタはHOSIDEN、USB 3.0→SATA変換チップはLucidPORTからリリースされ、環境も整いつつある。今後については、低消費電力版や組み込み向けASIC、Hub用コントローラの開発もしていくとした。

USB 2.0で培ったノウハウをUSB 3.0にも投入するUSB 3.0のロードマップUSB 3.0のコネクタの種類
USB3.0ホストコントローラ搭載の試作品パートナーとゲストコントローラや検証用機器の開発にも協力する

 質疑応答では、USB 3.0を採用するメリットについての質問がなされ、新津氏は、「現在、ストレージのコネクタはeSATAだったりIEEE 1394だったりと規格が分散し、PCなどに実装する際のコストアップ要因となっている。しかし昨今、ネットブックと呼ばれる低価格なPCが流行している。USB 3.0の提供によりこれらのストレージ規格を一本化し、低コスト化が図れる」とした。

 また、USB 3.0ワイヤレス化の可能性について友田氏は、「ワイヤレス化については全く話が進んでいない。ただし、5Gbpsという高速なデータ転送速度を実現するためには、相当な無線帯域を利用しなければいけないため、法律などからしてもおそらく実現は不可能だろう」と答えた。

(2009年 5月 18日)

[Reported by 劉 尭]