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かぎりなくオープンな規格でホームIoTを推進。東急電鉄やパナソニックらが実現に向け活動を本格化

コネクティッドホームアライアンスの関係者

 東京急行電鉄(東急)やパナソニック、美和ロックなどが参加し、日本品質の新たな「暮らしのIoT」サービスを実現する「コネクティッドホームアライアンス」への参加企業が77社になり、これに伴い、活動を本格化させる。

 同アライアンスは、2017年7月25日に、30社でスタート。このほど47社の企業が新たに参加した。

 これまでの鉄道や不動産、IT企業などに加えて、自動車、食品、メディア、ガス、電気などの企業が参加。「多種多様な業界のリーディングカンパニーが垣根を越えて連携することで、暮らしのIoTを、生活者視点で、ジャパンクオリティの価値あるサービスを生み出すことを目的としている。モノとモノがつながりは豊かな住環境を創造するとともに、ホテルやオフィスなどのさまざまなライフシーンに範囲を広げ、都市と人との心地よいつながりも生み出す」としている。

 電機/IT関連企業では、加賀電子、日本アイ・ビー・エム、日本ヒューレット・パッカード、日本マイクロソフト、パナソニックシステムソリューションズジャパン、日立製作所、富士通、ネットワンシステムズ、イッツ・コミュニケーションズ、オムロン、ソフトバンク、トランスコスモス、NEC、GMOクラウド、NTTデータなどが参加している。

 家ナカにおけるサービスと、家やクルマ、オフィスとの連携サービス、高齢者ケア、宅配、民泊などについて研究活動を行なう「住まい研究会」、プラットフォームやサービスの技術的連携や、それに伴う技術的セキュリティ対策などの研究活動を行なう「オープンシステム研究会」、データ分析で得られる活用方法、プライバシー保護対策などの研究活動を行なう「データ活用研究会」を設置。PoCを繰り返し実施することで、商用サービスとしての課題を洗い出し、具体的なサービス創出につなげる。

 そのほか、産官学が一体となって開催する定期研究会やサービス開発に向けた実証実験、定期レポートの発行、最新テクノロジの見学ツアーの開催、Webサイトを通じた情報発信、コネクティッドホームイベントの開催なども予定している。2017年11月には第1回目のイベントを開催する計画も明らかにした。

フラワー・ロボティクスの松井龍哉代表

 フラワー・ロボティクスの松井龍哉代表は、「コネクティッドホームを実現するには、モノやコトを作っている複数の企業の壁を取ることに尽きる。壁のない社会を実現するためのアライアンスになる」とコメント。

 同アライアンスの特別顧問を務める東京大学生産技術研究所の野城智也教授は、「日本の企業はそれぞれに優れたものを作ってきた。だが、家庭内で使用している機器は、さまざまな企業が作っている。これによって壁ができている。これからは、いいモノを作って終わりではなく、居心地のいい環境を作っていくことに手を伸ばしていく必要がある。企業がいいと思っていても、利用者からはいまひとつという場合もある。試しに作ってみて、ユーザーの反応を見て、改良するというプロセスを繰り返すことで、満足してもらえるIoTサービスを創出する必要がある」などと述べた。

 東京急行電鉄の市来利之取締役常務執行役員は、「東急グループは、10年後、20年後にどんな街を作るのかをつねに考えている会社である。そのなかで暮らしのIoTサービスを提供している。これは、人々の暮らしを快適にすることを目指しているものである。日本でのIoTの広がりはこれからであり、米国に比べると周回遅れである。この要因の1つが各企業が独自に取り組んでいるガラパゴス化にある。

 大事なことは、メーカーを問わずにさまざまなものがつながり、簡単に、安心して使えることである。拡張性、将来性、セキュリティがしっかりしていることが大切だ。東急沿線の施設などを利用して実証実験も行なっていくことになる。かぎりなくオープンにし、規格でガチガチに縛るつもりもない。77社の参加はゴールではなく、これからも増えていく。日本の生活者の視点を外さずにやっていく。小さなパイを取り合うのではなく、みんなで大きく育てていきたい」とした。

東京大学生産技術研究所の野城智也教授
東京急行電鉄の市来利之取締役常務執行役員

 また、パナソニック システムソリューションズ ジャパンの奥村康彦取締役専務執行役員は、「パナソニックは、グループが持つ商品、技術によって、生活を豊かにすることに取り組んできた。今後は社会や街とのつながりが重要になる。それを実現するためには、異業種のトップ企業との連携が重要であり、同時にサービス検証を進めていく必要がある。本社やカンパニー部門を巻き込んで取り組んでいく」と述べた。

 美和ロックの和氣英雄社長は、「毎日、自然に使っている鍵は、4000年の歴史がある。この鍵が、スマートフォンと1つになることで、スマートな世界を実現できる。鍵は特定の人が入れる、ほかの人が入れないという情報を持ったものである。このアライアンスを成功する鍵は、鍵にある。快適な社会と心温まる家庭を実現することに寄与したい」と語った。

パナソニック システムソリューションズ ジャパンの奥村康彦取締役専務執行役員
美和ロックの和氣英雄社長

 そして、「暮らしのIoTサービス」の様子をデモンストレーション。スマートフォンに向かって、「Open the door」(現時点では英語対応)と語りかければ、ドアの鍵が開き、部屋に入ると、照明が自動的につき、ロボット掃除機のルンバが動きだし、扇風機が回り出す。そして、監視カメラで人が入ってきた様子が撮影され、それを家族のスマートフォンなどに送る様子が紹介された。

暮らしのIoTサービスのデモンストレーションの様子

 寝室、オフィス、リビング、ダイニングの4つのシーンによるデモルームの様子も公開した。

 寝室では、指定した時間になると部屋の中の電気が点灯し、「グッドモーニング」の声とともに音楽が流れはじめる。また、ベッドから出て窓を開けると同時に電気が消え、TVがつき、「コーヒーを淹れて」の指示でコーヒーメーカーがコーヒーを作りはじめる。そのコーヒーを飲みながら、TVを観て、朝の時間を過ごすという環境を実現する。

 オフィスでは、「カーテンを閉めて」の指示で、電動カーテンが閉まり、ユーザーは、机でPCに向かって仕事中に、手元が少し暗いことに気がつき、「ルームランプつけて」と言うと間接照明がつく。少し暑いと感じて、「ファンをつけて」というとダイソンの扇風機が回る。同時に間接照明が涼しい色に変わるという仕組みだ。

 リビングルームでは、ユーザーが部屋に帰ってくると、スマートフォンを使って、美和ロックの鍵で部屋を開けると間接照明が点灯。同時に、カーテンが閉まる。

 ユーザーが、「私の一番好きな部屋に演出して」とスマートフォンに指示を出すと、間接照明の照度が変更され、ビートルズの写真の前で「ミュージックスタート」というと、ビートルズの音楽が流れはじめ、TVからは映画が流れはじめる。

 また、棚の上にあるアロマディフューザーのスイッチがオンになり、部屋がアロマの香りに包まれる。机の上に置いてある写真集とワインにはピンスポットがあたる。ユーザーはソファに座り、ワインを飲みながら写真集を眺めながら、夜のひとときを過ごすことができる。

 ダイニングルームでは、ディナータイムに電動カーテンが閉まり、ライトを調光。テーブル上のキャンドルライトがつくといった環境を演出する。