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NEC PC、企業同士の横断的なIoT活用を可能にするバッグエンドサービス「plusbenlly」を試験導入

 NECパーソナルコンピュータ株式会社(NEC PC)キュレーションズ株式会社は19日、IoTオープンイノベーションプラットフォームを称する「plusbenlly」の立ち上げを発表した。

 plusbenllyは、IoTデバイス/サービスを簡単に導入できる開かれたプラットフォームを目指したもので、クラウド上のバックエンドサービス(BaaS)として各社を支援するためにAPIなどを提供する。plusbenlly利用する企業は、機器間の接続やデータの交換を意識せずにIoTサービスを運用可能になる。

 plusbenlly自体はユーザーデータといったビッグデータの収集は行なわず、サービス事業者のIoT機器がどのようにつながっているかといったデバイスなどと紐付けられた情報を管理する。また、各社が持つユーザーの個々のデータは、plusbenlly側から利用されることはなく、データを保持するのはあくまでそのサービスを展開している事業者のみとなる。plusbenllyはプラットフォーム上のデータ流通の利用料という形で徴収を行なう。

 本日よりベータ版の無料提供が開始されており、正式版を今年(2017年)中にリリース予定。

既存の縦割りIoTではサービスの創出は実現されない

NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の留目真伸氏

 NEC PCの代表取締役 執行役員社長の留目真伸氏は、家電製品やロボット、サプライチェーンの効率化など、IoTの活用が進むなかで「これがIoTである」といった体験がまだまだ少ないという現状を指摘。家電製品をスマートフォンから操作するような体験だけでは、新たなIoTの創造にはつながらないとする。そして、発展が妨げられている原因として、各業界が横のつながりなしで開発を進めているためであるとの見解を示した。

 また、IoTを使ってこれまで達成できなかったような課題を解決するためには、IoTへの自由な結び付きが必要であり、それによって新たなビジネスモデルが生まれ、社会の発展につながると述べる。こうしたことを目指すのがplusbenllyであり、あらゆる業界と企業、団体、ユーザーを結びつけるプラットフォームという。

現在のIoTの課題
IoTのUX(ユーザー体験)を高めるためには横断的な連係が必要
plusbenllyで業種と業界を横につなぐ
各社を巻き込むオープンイノベーションに
plusbenllyの全体像。主にバックエンドサービスとして動く
plusbenllyを利用することで生み出される価値

 現時点では52社がパートナー企業として参画しており、大和ハウスグループによるIoTエネルギーマネジメントシステムや、積水ハウスのスマートホームでの連携が行なわれている。

 パートナー企業の1つであるオムロン株式会社の竹林一氏は、同社はセンサー類の提供などは得意とするものの、自社のサービスだけでIoT領域全体をカバーするのは無理があるとの見方を示し、横のつながりでさまざまなデバイスを利用できるようになることで、新たな活用方法や需要が発生するとした。

 竹林氏はIoT活用の実例として、血圧が上がりやすい冬の寒い朝の時間帯に、医者が事前に老患者の自宅の温度センサーから適正温度を探り、事前にエアコンの暖房を付けておくといった利用などシーンを説明。横断的に宅内の各種センサーが利用できるようになれば、サービスの幅も拡がってくる。

 また、IoT向け通信モジュールの提供なども行なっているさくらインターネット株式会社の小笠原治氏は生態情報を一元的に預かるような情報信託銀行のようなサービスが生まれようとしており、こうしたサービスを実現するためにはplusbenllyのようなプラットフォームが必要になると意見を述べた。

plusbenllyのパートナー
オムロン株式会社 技術・知財本部 SDTM推進室長 経営基幹職の竹林一氏
センシングデバイスを提供しているオムロンは、plusbenllyの活用でサービスの幅を広げられる
さくらインターネット株式会社 フェローの小笠原 治氏
「sakura.io」でIoTプラットフォーム向けデバイスを提供している

 NEC PCの留目氏は、本来PCメーカーである同社がplusbenllyを手がける理由について、「PCはコンピューティングを個人で利用できるようにしたもので、現在は垂直型のビジネスをやっているだけでは新しいものが生み出せない。横のつながりでデータが連係していくことで新しいものを生み出す必要がある」と述べ、PCの発展のためにも広い分野での各社との連係が重要とした。

 現時点ではplusbenllyにおいて、パートナー企業同士が意識的に連係を図る施策は用意されていないが、将来的にはその点も含めてプラットフォーム拡大を目指していくという。