ニュース

NEC、AI技術を活用した創薬事業に参入

~新たながん治療法に道筋

 NECは、ヘルスケア事業強化の一環として、独自AI(NEC the WISE)を活用した創薬事業を開始すると発表した。

 近年、免疫を利用した新たながん治療法が実現されつつあり、その1つとして「がんを攻撃する免疫」を活性化するがん治療用ペプチドワクチンの研究開発が進んでいる。しかしその開発と実用化には、約5,000億通りのアミノ酸配列の中から免疫を活性化するペプチドを発見する必要がある。さらに、人それぞれに異なる白血球(HLA)型に対して汎用的に適合し、ペプチドの効果を促進する免疫補助剤(アジュバント)を発見し、これを用いた非臨床試験/臨床試験の実施をしなければならず、長い時間と膨大なコストがかかる。

 一方、NECは2001年より、同社は最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つとして、機械学習と実験を組み合わせることにより、短期間かつ低コストで新薬候補物質を高精度/短期間/低コストで予測できる「免疫機能予測技術」を有している。NECはこの技術を活用し、2014年10月から山口大学および高知大学との共同研究、および山口大学における臨床試験を実施した。

 その結果、肝細胞がんや食道がんなどの消化器がん、乳がんで発見している2種類のがん抗原を対象に免疫を活性化するペプチドの探索を行ない、10種類以上のペプチドを発見した。また、各ペプチドが、日本人の約85%の人口をカバーする複数のHLA型に汎用的に適合し、かつ実際に免疫を活性化することを確認した。

 そして2015年4月には、ペプチドワクチンの効果を増強する新規アジュバントを、さまざまな組み合わせの中から山口大学と共同と発見、2016年1月にこのペプチドとアジュバントを用いて、新たな「複合免疫療法」の臨床試験を行ない、初期の安全性と有効性を山口大学で実証した。

 NECは今回この創薬事業を開始するにあたり、このがん治療用ペプチドワクチンの開発/実用化を推進する新会社「サイトリミック株式会社」を設立。株式会社ファーストトラックイニシアティブ、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、NECキャピタルソリューション株式会社、および各社を引受先とするサイトリミックの第三者割当増資に合意。今後、NECが発見したペプチドを主な有効成分とするワクチンについて、治療用製剤の開発、非臨床/臨床試験、製薬会社との事業化検討などを行ない、がん治療薬としての実用化を進めるとしている。