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がんに対するワクチン療法の有効性がマウスで確認

 米ミシガン大学は27日(現地時間)、「ナノディスク」と呼ばれる小さな構造でがん細胞に特有の抗原を免疫システムに導入し、がん細胞に対する免疫を獲得する治療法が、マウスによる実験で有効であったと発表した。腫瘍細胞だけを免疫システムによって排除させることで、より個人の状態に則した治療を提供でき、副作用の減少などが期待される。

 がん細胞(腫瘍細胞)はもともと通常の細胞であったものが外的な刺激などで変異し、増殖したもので、通常では日々免疫系によって増殖を抑えられたり、排除されている。いわゆる「がん(悪性腫瘍)」という疾患は、主にその制御が何らかの原因で追いつかなくなった場合をさしている。

 がん細胞の増殖を抑える免疫療法には、インターフェロン製剤や免疫賦活剤などがあるが、作用する範囲が広いため、正常細胞にまで影響を及ぼし、さまざまな副作用が存在する。そのため、分子標的薬のようながん細胞のみを特異的に攻撃する治療法が長く求められている。

このがん治療ワクチンでは、腫瘍細胞に特有の変異である腫瘍新生抗原(病原体)を仕込んだナノディスクを使う。ナノディスクは、大きさが10nm程度の高密度合成リポタンパク質で構成されている。極めて小さいため、ワクチン成分を正しい器官の正しい細胞に効率的に送り届けられる。そして、これら特定の新生抗原を認識するT細胞を生成することで、この技術はがん変異をターゲット化し、がん細胞を除去、腫瘍の成長を抑制する。

 一般的な予防ワクチンと違い、がん治療ワクチンは、ワクチンナノディスクが免疫システムの引き金を引き、既存のがん細胞と戦わせることで、患者用にパーソナライズされた形で、すでに発生したがん細胞を殺すことができる。

 その結果、メラノーマ(悪性黒色腫)や、大腸がんを再現したマウスに対し、マウスのもつ血中のT細胞の27%を腫瘍に対して感作させる、つまり腫瘍に対して反応させることができた。さらに、10日以内にがん細胞を消失させることに成功した。

 驚くべきことに、腫瘍細胞が消失した70日後に同様の腫瘍細胞を注入しても定着しないことも報告されており、これはちょうど麻しんワクチンなどのように、腫瘍細胞に対して免疫記憶が成立するために、再発まで抑えることができるという。

 研究者は、この技術をより大規模な動物実験で実証することを期待している。