Windows 8.1ユーザーズ・ワークベンチ
マルチタスクとどう付き合うか
(2014/2/19 06:00)
Windows 8が登場した時、Immersive、つまり、没入型のアプリケーションスタイルが話題になった。だが、Windows 8.1のリリースにより、そのトーンが少し緩和された。なぜなら、Windows 8.1では、ストアアプリのマルチウィンドウ表示が強化されたからだ。今回は、Windows 8.1のマルチタスクについて見ていくことにしよう。
ストアアプリとしてのクラシックデスクトップ
Windows 8.1をユーザーから見たときに気がつくのは、既存の「デスクトップ」そのものがストアアプリ的に振る舞っている点だ。デスクトップに複数のウィンドウを開き、それらを併行して操作するのは、旧来からのWindowsの作法であったが、Windows 8.1のシェルから見れば、どんなにたくさんのウィンドウを開いていたとしても、デスクトップそのものがImmersiveな環境の1つにすぎない。
もっとも、タスクマネージャで確認すると、起動中のアプリは、ストアアプリと共にデスクトップアプリも並列的に表示される。
スタートボタンを長押しするか、右クリックして表示されるショートカットメニューからタスクマネージャーを起動すると、簡易表示で起動中のアプリが一覧として表示される。デスクトップアプリのウィンドウを右上の×なり、ファイルメニューなりで終了させると、ここからその項目が消える。なお、タスクマネージャーには詳細表示も用意され、こちらでは各アプリの使っているCPU、メモリ、ディスク、ネットワークといったリソースの状況を確認することができる。
さて、デスクトップアプリは、×ボタンやファイルメニューの終了など、明示的にそのアプリを終了させる方法が用意されていた。だが、少なくとも、現時点のWindows 8.1ではアプリを終了させる方法が分かりにくいものとなっている。
通常、タイルをタップして開いたストアアプリは、用が済んだら閉じたいと思うのが、これまでWindowsを使ってきたユーザーの心情というものだ。少なくとも、アプリの上端を指やマウスで下方にドラッグすることで、そのアプリは終了したかのように見える。だが、実際には終了していない。本当に終了させるためには、ドラッグする操作を画面下部でいったん止め、アプリのサムネールがクルリと回転するのを待たなければならない。
さらには、アプリを終了したとしても、実行が継続されるアプリもある。いわゆるバックグラウンド処理が許可されたアプリは、そのまま常駐してメールやメッセージの到着を通知してくれるのだ。これらの通知を有効にするかどうかは、PC設定の「検索とアプリ」-「通知」で、個々のアプリでの通知のオン/オフを指定できる。
新しいストアアプリをインストールする際には、そのアプリをバックグラウンドで実行するかどうかの許可を求めてくる。通知のオン/オフとバックグランドで実行するかどうかは別のことだ。これについては、PC設定の「PCとデバイス」-「ロック画面」の「ロック画面に表示するアプリ」で設定することができる。
アプリを切り替えるには
基本的に起動していても画面上に見えていないストアアプリはサスペンド状態にある。通知をするアプリも、アプリ本体がドンと常駐しているわけではなく、OSに必要な最小限の手続きを預けてしまっているにすぎないからだ。従って、ユーザーは、あまりアプリが開いている、終了しているという状態を気にする必要はない。このあたりは、AndroidやiOSなどのモバイル系OSと同様だ。
だが、アプリを切り替えるということを考えると、用が済んだアプリは視界から消え去ってくれていた方がいい。
Windows 8.1のアプリ切り替えには、いろいろな方法が用意されている。
例えば、画面左端からのスライドインのジェスチャは、デスクトップを含め、起動中のアプリを順次切り替える。Shiftキーを押しながら同じ操作をすると、切り替えの順番が逆になる。行き過ぎてしまったときには覚えておくと便利だ。
左端からのスライドインは、画面の外側から内側に向かって指を滑り込ませる操作だが、没入型のIEやフォトアプリなど、クライアントエリアの左から右へのフリックで戻る/進むを指示できるものがある。指先の位置次第で、誤操作してしまう可能性があるので、ここのところはちょっと気を遣う。
この時に、スライドインした指を、画面から離さずに、外方向に戻すと、タスクのリストが表示される。起動しているアプリの数が少ない場合は、スライドインで順次切り替えするのが手っ取り早いが、多くのアプリが起動したままの場合は、この方法を使い、任意のアプリをタップして切り替えるのがいいだろう。
同じ操作をマウスで指示するには、マウスポインタを画面の左上で静止させ、さらに下方向に動かす。このとき、ドラッグ操作のようにボタンを押す必要はない。また、キーボードでは、由緒正しいWindowsキー+Tabキーで同じことができる。
マウスでの操作の場合は、右クリックによるショートカットメニューも使える。タスクリストの一覧からサムネールを右クリックすると、そのときの画面の状態に応じて「閉じる」「最大化」「××と入れ替え」といった項目が表示される。この「閉じる」を使うことで、いわゆる終了を指示することができる。
1つの画面で複数のストアアプリを使うには
ストアアプリのマルチタスクは、1つのアプリが画面を占有している状態で、すでに書いた左からのスライドインによるタスクリストから、任意のアプリをドラッグする。分割のためのバーが画面を縦に区切り、2つのアプリを同時に表示することができる。解像度などによって振る舞いは異なるが、アプリの最小幅の既定値は500ピクセルで、必要に応じてアプリ側がそれを320ピクセルまで下げることができるようになっている。アプリの最小幅に、区切りのバーの幅22ピクセルを加えた値で、1つの画面をいくつに分割できるかが決まる。
この計算では、例えばフルHDの画面は、1,920ピクセルなので、計算上は3つに分割することができるはずだ。だが、実際には解像度設定でテキストやその他の項目のサイズを変更していると、2つにしか分割できない。最近の高精細なスモール画面タブレットなどではテキストサイズなどの既定値が変更されているのでチェックしておこう。もちろん、これは、タブレットなどをポートレートで使っているときの横ピクセル数にも依存する。
ちなみに複数の領域に分割され、複数のアプリが表示されている際には、区切り線の中央にアクティブなアプリを示す|マークが表示される。右からのスライドインなどでチャームを表示させた場合には、このマークがついているアプリの設定などを変更することができる。
なお、複数のストアアプリが表示されていても、デスクトップアプリのようなドラッグ&ドロップによるデータのコピーや移動はできない。同様のことをやりたい場合は、クリップボードを使うことになる。
Alt+TabとWindows+Tabを使い分けよう
デスクトップアプリは、ユーザーから見ると1つのストアアプリのようなものだ。だから、タスクリストの中でも、デスクトップはデスクトップとして十把一絡げだ。
一方、デスクトップが画面に表示されているときには、従来と同様にAlt+Tabによるタスクスイッチができる。この場合、タスクはデスクトップ上のタスクと、起動しているストアアプリが並列でリストアップされる。また、デスクトップにおいてもWindows+Tabでのストアアプリへのタスクスイッチが可能で、こちらはデスクトップそのものが1つのアプリのように振る舞う。
もちろん、デスクトップタスクバーでのタスク切り替えも健在だ。任意のアプリをタップすれば、そのアプリのウィンドウがアクティブになる。タスクバーは、起動しているタスク以外に、任意のプログラムをピン留めできる点も従来と同様だ。起動した状態で、右クリックによるショートカットメニューから指示すればいい。
ただし、デスクトップアプリをスタート画面にタイルとしてピン留めすることはできるが、ストアアプリをタスクバーにピン留めすることはできない。デスクトップから見た時には、スタートボタンはピン留めされたスタート画面というアプリにすぎないということが分かる。
このようにWindows 8.1は、2つのタスク系統があって、その往来がやっかいなものになってしまっている。Tabキーによるタスクの切り替えが、Altキーで新旧混合、Windowsキーでストアアプリのみというのは、なんだか象徴的なコンビネーションだ。
ただ、ストアアプリをデスクトップタスクバーにピン留めできるようになるといった噂も聞こえてきているので、将来的には、デスクトップとスタート画面という2つのシェルを使い分けることができるハイブリッドOS的なものになるかもしれない。とはいえ、それが本当に使いやすいのかどうか。
ユーザーにとって、ストアアプリとデスクトップアプリは明確にその振る舞いが異なる。片方はImmersiveでマルチウィンドウとは言え縦方向のみのタイル処理、もう片方はサイズも自由なオーバーラップ処理だ。その違いを、どこでどう吸収し、統一された世界観を提供できるかが気になるところではある。