Windows 8.1ユーザーズ・ワークベンチ

拡張してこそWindows

 さまざまなデバイスを使って拡張できるところが、Windows PCの優位性だ。それは、タブレットのようなフォームファクタでも同様だ。今回は、Windows 8.1 のデバイスの扱いについて見ていくことにしよう。

インカメラのイマーシブ活用

 Windows 8 タブレットがトレンディになってきているようだ。タブレットというフォームファクタでは、iPadやAndroidタブレットが先行して普及していたが、やはり、Windowsの醍醐味はクラッシックなデスクトップが使える点で、さらには、さまざまなデバイスを接続して活用できるところにある。

 タブレットのほとんどは、内側と外側にカメラを内蔵している。それを使ってコミュニケーションをしたり、撮影したりといったことができるのは当たり前として、ちょっと変わった使い方をするアプリも出てきた。

 例えば、Windows標準のアプリ「フード&レシピ」は、内側カメラを使って、イマーシブな(没入感の高い)体験を提供している。というのは大げさかもしれないが、ハンズフリーモードが搭載されているのだ。

 レシピは料理のためのものだが、料理の際には手が汚れていたり、濡れていたりすることが多い。だから、タブレットをその手で触るのはためらわれてしまう。

 そこで、このアプリをハンズフリーモードに設定すると、タブレットの前でジェスチャをするだけでページを繰ることができるようになる。本のページをめくるようにカメラの前でかざした手を右から左、左から右へと動かすと、その方向にレシピが進む。でも、これではハンズフリーではない。だが、試してみると、クビを右から左、左から右へと動かすだけでもページを繰ることができた。

フード&レシピでハンズフリーを最初にオンにすると、Webカメラの使用許可を求めてくる
ハンズフリーモードでは、手のひらのジェスチャを使ってページをめくれる

 ちなみに、ストアアプリから、これらプライバシーに関わるデバイスを使う場合、最初に使う際に、アクセスの許可を求めてくる。いったん許可しても、PC設定のプライバシーで解除できるので覚えておこう。プライバシー設定で許可のオン、オフを設定できるのは、位置情報、Webカメラ、マイクなどだ。

 マイクはどうか。ストアアプリの「テレBing」で試してみよう。このアプリはTVの番組情報を提供するものだが、「番組音声キャッチ」という機能が用意されている。この機能を使うと、現在放送中のテレビの音声をマイクに拾わせ、その番組の詳細情報を知ることができる。

テレBingアプリではマイクの使用の許可を求められる
TV番組の音声を聞かせると、その番組が認識され、詳細情報を調べられる

 Webカメラの時と同様に、最初に使う際にはマイクを使うことの許可を求めてくるので、それを許可すればいい。

Googleアプリで音声入力をオンにすると、音声でキーワードを入力できる
オプションで言語を選択することもできるはずだが、日本語を選択しても、勝手に英語になってしまう不具合が現時点で発生している
各種デバイスをどのアプリで利用できるようにするかはプライバシー設定で指定できる

マスストレージの活用

 USBメモリのような、外部ストレージについても確認しておこう。デバイスを装着すると、プラグ&プレイで装着が検出される。その内容の確認は、デスクトップのExplorerでできるのは以前のWindowsと同じだ。

 モダンUIで、外部ストレージの内容を確認することもできる。いわゆるファイラーに相当するアプリとしては、SkyDriveを使うのが手っ取り早い。ただし、ファイルの並べ替えなどはサポートされていないので、目的のファイルを見つけるといった用途には向いていない。

 通常、SkyDriveアプリを起動すると、クラウド、または、それと同期したローカルのSkyDriveフォルダを参照できる。なお、SkyDriveは、OneDriveという名前に変更されることが決まっていて、近日中にこちらに移行することになっている。

 SkyDriveアプリで、参照先をPCに切り替えると、ローカルのフォルダを参照できるようになる。その中に、装着したUSBドライブも含まれている。ドライブ内のファイルを参照し、それをタップすれば、関連付けられたアプリがそのファイルを開く。この一連の振る舞いは過去のWindowsと同様だ。

 例えば、デジカメの撮影済みデータを記録したSDメモリーカードや、あるいは、スマートフォンなどカメラそのものを接続し、SkyDriveアプリを使ってその中の写真を参照できる。カメラやスマホのスクリーンよりも、大きなスクリーンで写真を楽しむことができるはずだ。このように、マスストレージデバイス内の写真を順にめくって楽しむといった用途には必要十分な機能が備わっていると言える。

 もっとも、タブレットにフルサイズのUSB端子が装備されていればいいが、そうでない製品も少なくない。特に、昨今の8型スクリーンタブレットでは、Micro USB端子しかないケースもある。その場合にUSBでマスストレージを接続したい場合は、Androidデバイスの多くと同様に、USB OTGケーブルを別途調達する必要がある。OTGは、On The Goの頭文字をとったもので、片側がMicro USBのオス、もう片側が標準サイズUSBのメスとなっている。このケーブルを介してUSB機器を接続することで、Micro USBに接続したデバイスのホストとしてタブレットが機能するようになる。OTGケーブルは、電気街などでは、数百円で入手できるし、SDカードリーダは100均ショップでも手に入る。機会を見て1つ買っておくと重宝するかもしれない。

プリンタデバイスの活用

 PCに繋ぐデバイスとしては、プリンタも重要な存在だ。Windows 8.1では、従来通り、コントロールパネルの「デバイスとプリンター」でプリンタを追加できるのはもちろん、USB接続のものなら、PC設定の「PCとデバイス」-「デバイス」でも追加することができる。

 もっとも、最近のプリンタのほとんどは、独自のセットアッププログラムが提供され、それを使ってインストールすることになるかもしれない。その場合、例えば、Windows RT搭載機のSurfaceなどは、インボックスのドライバがなく、印刷をサポートできないケースもある。

 プリンタドライバがインストールできていれば、ストアアプリからでも簡単に印刷ができる。チャームを出して「デバイス」から「印刷」を実行すればいい。ただ、困ったことに、ストアアプリの多くは印刷をサポートしない。標準アプリでは、メールくらいだろうか。先にあげた「フード&レシピ」ですら印刷ができないのだ。材料を買いにいくために、一覧を印刷して持ち出すこともできないわけで、どうにも困ったものだ。つまるところは、印刷せずにタブレットそのものを持ち出しなさいということなのだろう。

没入型IEで表示中のページをプリンタで印刷
さまざまなオプションを指定できる

残念感の残るGPS

 Androidタブレットに大きく劣るのが地図アプリだという実感を持っている。地図そのものは悪くはないのだが、GPSによる位置情報の取得に時間がかかりすぎている。また、Windowsタブレットの多くは、独立したGPSを持たず、Windows位置情報プラットフォームを利用して現在位置を推定している。だから、現在位置を正確に取得できているとは限らない。

 Windows位置情報プラットフォームは、Wi-Fiによる三角測量、IPアドレス、携帯通信網の基地局情報、GPSといった各種情報を統合し、現在位置を割り出す仕組みだ。この中で、GPSが使えないとなると、正確な現在位置を導き出すのは難しいことがわかる。

 ちなみに、これらの情報のうち、もっとも優先されるのは、Wi-Fiによる位置情報だ。都市部では350mの精度となるそうだ。

 さらに、そのデータを使えなければ、IPアドレスが使われる。この場合の精度は50kmとなる。

 位置情報APIはもっとも精度の高いデータを持つセンサーを使う。したがって、システムにWi-FiとGPSの両方が装備されている場合は、GPSのデータがアプリケーションにわたることになっている。

 ところが、そのGPSの測位に時間がかかりすぎる。さらに、地図アプリに限らず、ストアアプリが中断されているときには位置情報更新イベントを受け取らない。また、InstantGo対応機においても、スリープ中にセンサーからの情報は受け取れない。したがって、バックグラウンドで移動の軌跡を取得し続けて記録を残すアプリはストアアプリとして成立しないことになる。これらはすべて消費電力を考慮するためだが、もう少し柔軟な運用ができるようにはできなかったものかと思う。

 地図アプリのアプリケーションメニューで「自分の場所」をタップしたとき、白い菱形ピンがついて現在地が表示された場合は、その位置はGPSやWi-Fiによって導き出された、ほぼ正確なものだと考えられるが、オレンジ色の菱形ピンの場合は、IPレベルの解決によるものだということになっている。だが、白い菱形であっても、東京なら皇居の真ん中にピンが立つなど振る舞いは怪しい。

(山田 祥平)