2014年8月22日

2014年8月21日

2014年8月20日


山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

マイクロソフトのおすすめは64bit OSで32bitアプリ



 64bit Windowsのメリットは4GBを超えるメモリを有効に生かせることだ。だが、一部のアプリケーションをのぞき、GB単位でメモリを使うようなものは、そうそうあるものではない。だからアプリは32bitが無難。それがマイクロソフトの見解だ。

●Officeはデフォルトで32bit版がインストールされる

 先日RTMがアナウンスされたMicrosoft Office 2010は、32bit版と64bit版の両方が提供される初めてのOfficeになるという。実際、TechNetサブスクリプションなどで公開されているOffice Professional Plus 2010の日本語版は、ja_office_professional_plus_2010_x64.exe と、ja_office_professional_plus_2010_x86.exe が提供されている。

 だが、製品パッケージに同梱されるDVDには、32bit版と64bit版の両方が収録されていて、通常の手順でsetup.exeを実行すると、たとえ環境が64bit Windowsであったとしても、32bit版のOfficeがインストールされるようになっているという。もし、64bit Windowsに64bitOfficeを明示的に指定してセットアップしたい場合は、DVDのx64フォルダを開き、その中のsetup.exeを実行する必要がある。

 RTMに伴って公開されたOfficeチームのブログMicrosoft Office 2010 Engineering - The official blog of the Microsoft Office product development group の記事に、この件に関する同社の見解が、Officeチームのプログラム マネージャー、Product Lifecycle and Engineering Excellence (PLEX)Ted Way氏名義で解説されていた。 (英語版。日本語版も)。

64bit Windowsでのメモリ使用量を見ても、GB単位でメモリを消費するようなアプリケーションはめったに見当たらない

 同氏によれば、32bit版のOfficeは、32bit版のWindowsで使うよりも、64bit版のWindowsで使った方がメリットがあるという。その理由は、32bit版Windowsが、多くのメモリを搭載しても4GBを超える部分をアドレス指定できないことだ。したがって、複数のOfficeアプリケーションを使っている状態で、頻繁にタスクをスイッチすると、スラッシングが発生し、パフォーマンスが低下する可能性が出てくる。

 だが、豊富なメモリを搭載したシステムで、64bit版Windowsを使っていれば、個々のアプリケーションが多くのメモリを自由に使うことができ、互いに影響し合うことがなくなるというわけだ。

 64bit Windows上で実行される32bitアプリケーションは、Windows-32-on-Windows-64(WOW64)を使って稼働するため、多少のオーバーヘッドはあるが、豊富なメモリを使えるメリットの方が大きいことになる。実際、WOW64によるオーバーヘッドはまず体感できないだろう。

●アドインの整備が整うまではまだ時間が必要

 それにしたところで、オーバーヘッドはないにこしたことはない。32bit版のOfficeよりも、64bit版のOfficeを使った方が、さらにパフォーマンスはあがるのではないかという疑問も出てくる。

 そんな疑問に対するマイクロソフトの回答は、自分が何を必要としているかを考えろということだ。

 つまり、単体のアプリケーションで大量のメモリを処理する場合、たとえば、2GBを超えるようなデータを扱う場合は迷わず64bit版のOfficeを使い、そうでない場合は32bit版を使えという。その理由は、64bit環境からは32bitのコントロールやアドイン、VBAを呼び出すことができないことだ。ほとんどのVBAコードは、64bit版のOfficeでもそのまま動作するが、念には念を入れ、つまらないトラブルで無駄な時間を費やさないためにも、32bitを推奨したいということらしい。

 実際、AdobeのAcrobatなど、各サードパーティから出荷されているOffice用のアドインソフトは枚挙にいとまがない。これまでは、32bit版のOfficeしかなかったのだから、アドインのすべてはまだ32bit版のOfficeを前提に作られている。

 こうした事情により、マイクロソフトでは、現在は、32bitアプリから64bitアプリへの過渡期にあるとし、さまざまなアドインを高い互換性を保って使えるようになるまでは、しばらく時間がかかるだろうと結論づけている。Windows 7でも、ブラウザに関しては32bit版のIEがデフォルトで使われる。各種のアドインやActiveXコントロールのほとんどの32bit版で、それらがなくては、インターネットの実用性に問題さえ出てきてしまうからだ。

 イメージング系のアプリケーションでは豊富なメモリを使って高速に処理ができる64bitネイティブ化が大歓迎されているようだが、32bit版から64bit版への移行時には、常用しているアドインソフトなどが従来通りに使えるのかどうかをきちんと検証することをおすすめしたい。

 今回のブログ記事は、マイクロソフトとしては異例のアナウンスだと考えていいだろう。以前のマイクロソフトなら64bit化を促進すべく、絶対大丈夫と高らかに謳いながら誘導していたはずだ。

 なぜ、それをしないのか。

 Office 2007でリボンのインターフェイスを採用し、それによってファイルメニューが失われた結果、多くのユーザーは、印刷の方法さえわからなくなって途方に暮れてしまった。今なお、Office 2003が多く使われているのは、そのあたりの事情もある。

 だから、マイクロソフトはOffice 2010をOffice 2007から、あまり大きく変えようとはしなかった。少なくとも見かけの点ではだ。変えるどころか、いったんOffice 2007で消してしまったファイルメニューを復活させている。Office 2007ではウィンドウ左上にOfficeボタンを設け、それをクリックすることで、BackStageビューに入ることができ、そこから印刷等の機能を使うようになっていた。でも、多くのユーザーはOfficeボタンをクリックできるオブジェクトとは認識できなかったようだ。だから、かつてあったファイルメニューに戻したのだ。

 よほどのことだったにちがいない。リボンのインターフェイスが採用されたWindows 7のペイントなどを見ると、ファイルメニューがないので、開発時期も影響しているのだろう。Officeチーム独自の英断なのかもしれない。

Vista上のWord 2007では、ウィンドウ左上のOfficeボタンでファイルメニュー相当のものが開く Word 2010では、ファイルメニューが復活している リボンインターフェイスが採用されたWindows 7のペイントにはファイルメニューがない

 つまり、Office 2010は、ちょうどWindows Vistaに対するWindows 7のような位置づけとして考えてもいいのかもしれない。Vistaから7では、バージョン番号は6.0から6.1に上がったに過ぎない。一方、Office Word 2010のバージョンは、14.0.4760.1000で、Office 2007のバージョンは12.0.6514.5000となっている。13が欠番となっているのはお約束なのだろう。バージョン番号こそ12から14に上がったが、本当は、12.1といったところなのかもしれない。

Word 2007のバージョン情報 Word 2010のバージョン情報

 マイクロソフトはWindows やOfficeに大きな変更を加えることに臆病になり始めている。大胆な変更は、多くのユーザーを苦しめる結果につながる可能性があり、さらには、彼らを支える企業ユーザーに総スカンを食らうかもしれないことを、彼らはよく知っているからだ。

 たぶん、Windows 7もOffice 2010も、きわめて長く使われるOSとオフィススイートになるだろう。ベーシックな部分は、相当長く変わらないだろう。だから、多少の苦労を伴っても、今乗り換えることは、将来に対する重要な投資になるはずだ。その過渡期には、枯れた32bit版のOfficeを、有利な環境としての64bit版Windowsで使ってほしいというのがマイクロソフトの願いだ。

 それにしても、こういうことをサラッと言ってのけるマイクロソフトという会社は、素直にすごいなと思う。