笠原一輝のユビキタス情報局

Windows 10は7月にアップグレード版/プリインストール版が同時提供

〜異例づくしのWindows 10提供計画

3月上旬にスペインで行なわれたMWC 2015のMicrosoft記者会見でデモされたWindows 10

 米MicrosoftはWindowsハードウェアを開発するエンジニア向けのイベント「WinHEC 2015」を中国深セン市内のホテルで、3月17日〜18日の2日間に渡って開催している。筆者はNVIDIAの開発者イベントである「GTC 2015」に参加しているため、WinHECには参加できていないが、WinHECはWindowsハードウェア関係者にとっては最新の情報を得られる場となっており、今回参加できないことが非常に残念である。

 そうした中、Microsoftはブログを更新し、WinHECの会場でWindows 10のリリース時期が2015年の夏であると発表したことを明らかにした(別記事参照)。ただ、“夏”というのは非常に幅がある表現で、もう少し具体的な時期について疑問を持っている読者も少なくないだろう。

 OEMメーカー筋の情報によれば、この通知はOEMメーカーにも出されているが、それはここ1週間ぐらいで行なわれたといい、急転直下で決まったようだ。

7月にアップグレード版、プリインストール版共に提供が開始

 今回Microsoftは、従来の公式見解だった“今年後半”からもう一歩具体的な次期を示した。だが、それも“今夏”という表現に留まっている。Microsoftの日本法人の広報担当者にも確認したが、現時点ではこれ以上の情報はないという。

 だが、複数のOEMメーカーに確認したところ、既にMicrosoftからOEMメーカーに対して具体的な時期が提示されているという。7月にWindows 10の最終バージョン(いわゆるRTMと呼ばれる出荷相当バージョン)が完成するスケジュールで開発が進められており、RTMが完成してから、さほど間を置くことがなく、Windows 7/8がインストールされているPC、Windows Phone 8.1がインストールされているスマートフォン向けに無償アップグレード版が提供開始。そして、OEMメーカーもすぐに搭載PCを発売できるようになるという。1月の時点での、8月頃にRTMが行なわれ、10月に搭載PCの出荷開始というスケジュールから早まっている。

 また、これまではRTMの完成後数カ月後に搭載PCを発売するという協定をメーカーと結び、各メーカーが横並びで販売開始する手順になっていたものが、Windows 10ではそうした協定がなくなり、OEMメーカーが好きなタイミングで出荷できるようになったのも大きな違いだ。

今回のWinHECではCortanaの中国語(北京語)版があることが明らかにされたが、日本語版については依然どのような扱いになるかは未定だ(写真はMWCでのCortanaのデモ)

 そもそも、なぜ従来のOSではMicrosoftとOEMメーカーの間で協定が結ばれ、出荷日が決められていたのだろうか? それにはいくつかの理由があるが、もっとも大きなものは、OEMメーカー側の準備期間が必要だからだ。

 例えば、ドライバの開発などは、ベータ版OSでも可能で、RTMの前にある程度完成させておくことはできる。しかし、OSのインストールイメージを作成するのは、MicrosoftがRTMを完成させない限り、OEMメーカーはできない。さらに、作成したOSイメージやドライバなどがきちんと動作するかどうか、主要なソフトウェアとの互換性に問題が無いかどうかといった動作検証にも時間がかかる。OEMメーカーによって異なるが、長ければ数カ月かかるので、その分の余裕を見て、RTMから発売まで日を置く。これがこれまでの慣習だった。

 今回はこの慣習は廃止されることになった。つまり、OEMメーカーは動作検証が終わり次第、自身の判断でいつでも出荷できる。

最終ベータだったバージョンがRTMへ昇格

 Microsoftが今回こうした異例なスケジュールを取る背景には、MicrosoftがWindows 10のRTMスケジュールを以前から非常にアグレッシブに設定していたことがある。

 Microsoftが元々計画していたWindows 10のリリース計画は2段階だった。OEMメーカー筋の情報によれば、6〜7月にRTMを完成させ、そのRTMを元に、まずWindows 7/8/Phone 8.1に対するアップグレード版をリリース。OEMメーカー向けのプリインストール版は、その後10月に予定されている最初のアップデートとなる「Update Rollup1」を追加した形で提供開始し、10月の販売開始というスケジュールだった。以前の記事でも、その情報を元に、「秋モデルから提供開始」とお伝えしていた。

 このRTMは、元々最終ベータとして予定されていたバージョンだった。だが、Windows 10の精力的な開発により、最終ベータがRTMとして出荷するのに十分な品質に達したとMicrosoftは判断し、予定を繰り上げた。スケジュールが後ろにずれていくのが当たり前だった従来の同社からは想像できない状況だが、それだけ力を入れてに開発を進めたということなのだろう。

 しかし、エンドユーザーがいち早く手元のWindows 7/8のPCをWindows 10にアップグレードできるのに、OEMメーカーがWindows 10プリインストールPCを出荷できないという計画には反感があったようだ。動作検証の時間は必要だが、それが終わったところから出せるようにして欲しい、という要望がMicrosoftに受け入れられ、プリインストールPCも前倒しという決断に至った。

ISOイメージとWindows Update経由の2種類のアップグレード方法

 筆者は、Microsoftのスケジュール前倒しは好ましい傾向だと考えている。それだけMicrosoftも、タイムツーマーケットに敏感になっていることの表れであり、現状に危機感を持っていることの裏返しだろう。そもそもソフトウェアの開発というのは、時間をかけても最初から完全なものは作れない。であれば、発売して、走りながら修正しつつ進んでいくというのは、コンシューマ機器向けのOSという観点では正しい選択だと思う。

 ただし、Windowsの場合は、ビジネスユーザーもターゲットになるので、既にお伝えした通り、法人ユーザー向けのSKUでは異なるアップグレード方法を採る。それについてはまた別の機会で詳細を紹介したいと思う。

 元々プリインストール版向けに計画されていたUpdate Rollup 1は、今でも10月に予定されているとOEMメーカー関係者は証言する。その後も、Update Rollup 2、3、4……、と続き、新機能が随時追加される予定になっている。

 Webで公開されていたWinHECの資料から、Windows 10のアップグレード詳細も分わかってきた。Windows 10へのOSアップグレードにはISOメディアと、Windows Update経由でOSイメージをダウンロードする2つの方式が予定される。どちらの方式が利用できるかは、現在ユーザーが利用しているOSのバージョンに依存する。

 Windows 7 ServicePack 1、Windows 8.1 Updateのユーザーは、Windows Update経由でアップグレードができる。Windows 7から8.1を利用しており、ServicePack 1やUpdateにアップグレードが済んでいない場合はISOファイルからのアップグレードのみに対応する。なお、Windows RTは、Windows 10世代では該当する製品がないため、Windows 10へのアップグレードは提供されない。

【Windows 10へのアップグレードパス】
現在のOS アップグレード対象 ISOアップデート経由 Windows Update経由
Windows 7 RTM Windows 10 -
Windows 7 SP1 Windows 10
Windows 8 Windows 10 -
Windows 8.1 RTM Windows 10 -
Windows 8.1 Update1 Windows 10
Windows RT - 提供なし 提供なし
Windows Phone 8 - 提供なし 提供なし
Windows Phone 8.1 Windows Mobile 10 提供なし

(笠原 一輝)