笠原一輝のユビキタス情報局

「ThinkPad Tablet 2 & ThinkPad X1 Carbon」開発密話

 レノボの「ThinkPad Tablet 2」は、Atom Z2760を搭載したWindows 8タブレットで、Windows 8のリリースに合わせて発表された。本来であれば昨年(2012年)内にも国内で個人向け販売が開始される予定だったが、さまざまな事情で2013年1月末に延期された。

 Atom Z2760を搭載したWindows 8タブレットの特徴は、スマートフォンやタブレット端末のようなConnected Standbyの使い勝手を実現しながら、x86のWindowsアプリケーションがそのまま動作することだ。ThinkPad Tablet 2もそうしたAtom Z2760を搭載したWindows 8タブレットだが、元々企業向けとして開発されたこともあり、オプションでデジタイザーペンが選べるなど、ビジネスユーザーに配慮した仕様になっている。

 今回、ThinkPad Tablet 2を開発したレノボ・ジャパン ノートブック製品 製品開発統括担当 木下秀徳氏にインタビューをする機会を得たので、ThinkPad Tablet 2に関しての記事をお届けしたい。また、同時に昨年発売したThinkPad X1 Carbonについても、レノボ・ジャパン ノートブック製品 開発オペレーションズ 製品開発統括担当 田保光雄氏にお話しを伺ったので紹介したい。

ThinkPadの名前を冠する以上妥協できない品質

レノボ・ジャパン ノートブック製品 製品開発統括担当 木下秀徳氏

 ThinkPad Tablet 2は発表当初、11月の半ばに企業向けモデルが販売開始され、年末までにレノボ・ジャパンのWebサイトでの個人向け直販が開始されるというスケジュールになっていた。しかし、その後予定が変更され、結局企業向けモデルが販売開始されたのは12月下旬になってからで、個人向け直販は2013年1月末予定となった。米国のLenovoでは12月末にWebサイトでの直販が開始されており、すでに受注および出荷が開始されている。

 なぜ遅れてしまったのだろうか。木下氏によれば「最後の最後でハードウェアに手を入れなければならない問題が発生し、その修正に時間がかかったため」ということだった。

 具体的には、「稀に正しくスリープから復帰できない問題が見つかった。弊社の品質基準で、それがある頻度で発生するレベルであれば、出荷すべきではないと考えたため生産を止めた。現在ではすでにラボレベルでは確認が終わり、翌週(筆者注:このインタビューは12月半ばに行なわれている)より生産を開始した」とのことだ。

 これはマザーボードなどのハードウェアに手を入れなければならない問題であったため、最終調整で生産を延期したという。このほかにも、Wi-Fiの通信距離、デジタイザーに対するノイズの混入などの課題が発生しており、それらを修正するのに思ったより時間がかかったという。

 他社がすでにAtom Z2760を搭載したシステムを出荷している中で、出荷の延期という苦渋の決断をしてまで問題を修正したのは「ThinkPadブランドで出すからには、一定のレベルをお客様に期待されているので」と、少しでも品質にこだわりたいというレノボの大和事業所なりの想いがあったのだ。

Lenovo ThinkPad Tablet 2。SoCにはAtom Z2760(Clover Trail)を搭載し、Connected Standbyに対応したWindows 8タブレット
オプションで用意されているBluetooth接続のキーボード。他社製品のように合体する形状ではなく、本体を置くだけなので、ラップトップ的な膝において使うのは難しいが、机の上などで快適に利用できる
置くだけだが、見た目はまるでクラムシェルのノートPCのように使うことができる。なお、TrackPointは感圧式ではなく、光学式なのでClassic ThinkPadとは大分使い心地が異なる
純正オプションのスリーブケース。本体だけでなくオプションのキーボードも一緒に格納できる

Atom Z2760という新しいプラットフォームは、従来のPC開発とは異なる経験

 今回、ThinkPad Tablet 2が採用しているAtom Z2760は、Intelにとっても、Microsoftにとっても新しい取り組みが求められる製品となっている。例えば、最後の最後で問題になったスリープからの復帰だが、Windows 8では新しい待機状態を導入したため、その開発で各社が苦労をしている。

 Windows 8では新しい待機状態「Connected Standby」を導入している。これは、OSからCPUが動作しているように見えるが、実際CPU側はほどんどの電力をオフにする待機状態(S0ix)だ。これによりWindows 8タブレットでは、インターネットへの最低限のアクセスを行ないつつ待機ができる。ThinkPad Tablet 2ではWi-Fiを利用した状態で、25日間も待機状態のまま動作できる。こうした機能は、スマートフォンやタブレットではあたり前の機能だったが、Windowsでは新しい機能となる。

 このConnected Standbyは、16時間でバッテリ使用が5%とロゴ要件で規定されている。ところが、実際に市場に登場したAtom Z2760搭載製品や、Tegra 3ベースのWindows RTデバイスなどではこの仕様をクリアできていないものだらけだ。つまり、それぐらい各社とも開発に苦労しているのが現状だ。この仕組みを実現するためには、ファームウェア(BIOS)、Wi-FiやワイヤレスWANのデバイスドライバ、マザーボードの設計などがすべて完璧に動いていなければ、実現できないからだ。

 木下氏は「Atom Z2760を搭載したシステムの設計では、従来のPCの常識を捨てなければならなかった。従来のPCは、CPU、チップセット、BIOS、ドライバなどを集めて最適化していく。しかし、Atom Z2760では、ソフトウェアを含めてすべてIntelから提供される。これはARM SoCベースの製品に近い設計になるため、Intelとのやりとりを含めてかなり大変だった」と説明する。つまり周辺部分(ハードウェアやファームウェア、ソフトウェア)も含めてIntelから提供される形となるため、思ったよりも時間がかかる結果になったようだ。

 ThinkPad Tablet 2は「MicrosoftがWindows 8を立ち上げるときにIDP(Integrated Development Program)というプログラムを提案してきて、Microsoft、シリコンベンダー、OEMメーカーが共同で開発することになった。ThinkPad Tablet 2はAtom Z2760のIDPに選ばれ、IntelとMicrosoftが一緒に開発することになった」と、実質的にリファレンスプラットフォームとして選ばれている。つまり、MicrosoftがConnected Standbyの動作などを確認する製品が、ThinkPad Tablet 2だったわけだ。それでも、それだけの問題を解決しなければならなかったわけだから、いかに今回の開発が大変だったかが理解できるのではないだろうか。

 レノボとしても満足な品質ではないまま出荷するという選択肢もあったのだろうが、あるレベルに達しなければ出さないということにこだわったため、結果として出荷が遅れてしまったというのが真相なのだ。

ダイレクトボンディングのタッチパネル

 Atom Z2760はSoCとしてIntelから半導体が提供されるだけでなく、Wi-FiやBluetooth、NFCなど周辺部分のチップ(Intel製ではないモノを含む)やファームウェアなどのソフトウェアに関しても提供される形になっている。このため、OEMメーカーが独自性を出す部分は少なく、各社ともに差別化には苦労しているのが現状だ。

 そうした中でThinkPad Tablet 2が他社と差別化できる部分の代表と言えるのが、液晶パネルとデジタイザーペンの部分だ。

 タッチパネルの実装は「ダイレクトボンディング」と呼ばれる、液晶パネルにタッチパネルを直接貼り付ける方式を採用した。ThinkPad Tabletなどで採用されている、液晶とタッチパネルの間に空気層を入れる「エアボンディング」という方式もあるが、ダイレクトボンディングの利点は空気層がなくなることで、ペン先が示している位置と人間の目が見ている位置の差(視差)が低減されること、そして太陽光で利用している場合などに反射が低減されることの2つだ。

 いいことづくめに思えるかもしれないが、重要な課題もある。それは「ダイレクトボンディングにすることで、2〜3割はコストアップする」ということだ。通常のエアボンディングのタッチパネルの場合、センサーを製造しているメーカーが、カバーガラスメーカー(例えば、Corningや旭硝子など)からカバーガラスを仕入れ、センサーと組み合わせて、1つの部品としてODMメーカーに納入する。そしてODMメーカーでガラス/センサーと液晶パネルを組み合わせてタッチ液晶モジュールとして生産する。

 これに対してダイレクトボンディングでは、ODMメーカーで組み立てることができず、専門の会社に依頼するか、液晶メーカーから出荷する段階で1つのモジュールとして完成させる必要があり、工程が1つ増える。また、常に液晶パネルとカバーガラスが一体化しているため、歩留まりが問題になる。これらの理由からコストが2〜3割上がってしまうのだ。なお、ThinkPad Tablet 2の生産過程は液晶メーカーが担っている。

 このようにコストが上昇してしまうのに、ダイレクトボンディングを採用した理由としては「ThinkPadではXシリーズの一部モデルを含めてダイレクトボンディングを導入している。ユーザー体験として視差が大きかったり、反射が大きかったりすることはあってはならないと考えているからだ」と、ユーザビリティの観点でそうした選択になったとのことだった。

 なお、前モデルのThinkPad Tabletでは、カバーガラスにGorilla Glassの商標で有名なCorningの製品を利用していたが、今回のThinkPad Tablet 2では日本の旭硝子のDragontrailを採用している。「初代ThinkPad Tabletの導入時にもDragontrailを評価し、製品としての品質には問題は無いと判断していた。今回はLCDメーカーからの積極的な提案もあり、すでに評価が済んでいたのですっきり決められた」とのことだ。タブレットやスマートフォンの普及のおかげで有名になったCorningだが、OEM/ODMメーカーに取材していると、人気ゆえに供給がタイトになっているという。そうしたことを避ける意味でも、品質で勝るとも劣らない旭硝子のDragontrailを採用したというのは、妥当な判断と言えるだろう。

左がThinkPad Tablet 2、右側が初代ThinkPad Tablet。これだけでもThinkPad Tablet 2が薄くなっていることがわかる

 また、今回のThinkPad Tablet 2では、ダイレクトボンディングの採用によって本体の厚みを薄くすることに成功している。「タッチパネルの実装方法をエアボンディングからダイレクトボンディングにすることで、1mmまでとはいかないが、最低でも0.5mmは薄型化できた」(木下氏)との通りで、トータルで9.7mmという仕様なので割合では5〜10%近い薄型化を実現できている。結局、タブレット本体の厚さは液晶+基板ないしバッテリで決まってくる。従って、液晶を0.5mmも薄型化することが可能になれば、それだけセットの厚さを薄くすることができるのだ。

 薄型化という面では、ボディの素材をThinkPad Tabletの強化プラスチックからマグネシウムへと変更している。プラスチックに比べてマグネシウムは同じ強度を実現するのに薄くすることができるため、こちらもシステム全体での薄型化に大きな貢献しているのだ。これにより従来製品では14.5mmだった本体の厚さは9.8mmへと実に32%も薄型化が実現されているのだ。

CTOオプションとして設定されているデジタイザーペンは購入時のみ選択可能

 もう1つThinkPad Tablet 2の特徴と言えるのが、CTOオプションとしてデジタイザーペンが用意されていることだ。Atom Z2760を搭載したタブレットでは、多くの製品がタッチのみに対応しており、デジタイザーペンに対応している製品は少ない。それでもThinkPad Tablet 2がデジタイザーペンに対応したのは「ThinkPadを利用している企業ユーザーでペンへの要望が多かった。また、Windowsデスクトップで操作しようという時には、ペンがあると操作性が向上する」(レノボ・ジャパン Thinkクライアントブランドマネージャ 土居憲太郎氏)という。

 従来のThinkPad Tabletでは、電池を内蔵しているアクティブペンを採用していた。これに対してThinkPad Tablet 2では電磁界共振方式のアクティブペンを採用している。電磁界共振方式のアクティブペンとは、ペン側に共振周波数回路を内蔵しておき、デジタイザーがその存在を認識することで位置を特定するペンだ。一般的な静電ペンに比べて検出の精度が向上するため、より小さな文字を書くことが可能になり、かつペン側の電池が必要なくなるため、ペンの小型化が可能になるという。このため、ThinkPad Tablet 2のペンは本体に収納できるようになっている。

 ただ、このデジタイザーペンで注意したいのは、製品を注文する段階でペン有りのモデルを買うか、ペン有りのCTOモデルを購入しないと、使えないことだ(オプションでペンだけが用意されているが、それはスペアという扱いになる)。「ThinkPad Tablet 2のペン有りモデルではワコム製のデジタイザーを内蔵しているが、ペン無しモデルではデジタイザーが入っていないため、ペンなしモデルに後からペンを追加できない」(木下氏)との通りで、購入時に選択しておく必要がある。

 この仕組みの理由はやはりコストだ。ペンが必要ないユーザーにとっては、デジタイザーが入った液晶は無駄なコストに過ぎない。従って、ペンが必要のないユーザーにとって低価格で提供できることになる。

左がThinkPad Tablet 2のペン、右側が初代ThinkPad Tabletのペン。電池が入っていないため、ThinkPad Tablet 2のペンの方が小さくて済んでいる
ペンは本体に格納することができる。ペンそのものが小さくなったので、ボディが薄いThinkPad Tablet 2であってもペンを格納することが可能になった

充電専用にMicro USB端子が用意されている理由

 ユーザーの使い勝手への配慮という意味では、本体にフルサイズのUSB端子がついていることも見逃せないメリットだ。多くのWindows 8タブレットでは、薄型化を実現するため、Micro USB端子のみを備えている製品が少なくない。このため、USBメモリなどの一般的なUSB機器を利用するには、Micro USB端子→USB A端子メスへの変換ケーブルなどを利用する必要がある。もちろんケーブルを持ち歩けばいいのだが、不便であることには変わりない。特にThinkPadは企業向けということもあり、ビジネスユーザーにとってはデータのやりとりにUSBメモリを利用してデータを交換したりということは日常茶飯事であることを考えれば、標準的なUSB端子がついているメリット小さくない。

 しかし、スタンダードUSB端子がついていながら、同時にMicro USB端子も別途用意されているのも気になる。「社内では専用ドッキングコネクターからの充電で、いいのではないかという意見が多数あったのだが、以前行なわれたユーザーイベントでアンケートを採ったところ、Micro USBが良いという意見が多数あり、最終的には充電専用にMicro USB端子を用意した」(木下氏)と理由を明らかにした。

 現在、Apple製品を除くほとんどのスマートフォンやタブレットはMicro USB端子から充電を行なう形になっている。このため、モバイル機器を多数持っているユーザーであれば、USB端子を備えたACアダプタを持っており、そこにMicro USBケーブルを接続して充電するという使い方が一般的だ。メリットは言うまでもなく、複数のケーブルやACアダプタを持ち歩かずとも、すべての機器を充電できることだ。例えば、ACアダプタを忘れてきてもすぐに調達できるし、他の人が持っているスマートフォン用のACアダプタやケーブルをちょっと借りて充電できる。

 ThinkPad Tablet 2では、0.5Aの出力しか持っていないPCのUSB端子からでも充電できるように設計されているという。このため、出張時にPCとセットで持って行く場合は、PCにMicro USBケーブルで接続すれば充電できる。つまりACアダプタを持ち歩く必要がない。製品に付属するACアダプタは2Aの出力を持っており、こちらを利用したほうが短い時間で充電可能だ。

 ただし、このMicro USB端子、あくまで「充電用」として用意されており、データ通信などには利用することができない。これは、Atom Z2760の仕様から来る制限で、USBが2ポートしか用意されていないためだ。なお、当然ドックを接続した場合はUSB Hubチップなどを実装できるため、USBポートを増やすことができる。実際、ThinkPad Tablet 2のオプションとしてポートリプリケータを用意しており、USB端子×2、Ethernet、HDMI出力、オーディオ端子などが用意されている。またドック側には、ほかのThinkPadシリーズと同じACアダプタが利用できる端子も用意されており、ドックに付属する65WのACアダプタを利用して本体を充電できる。

本体に用意されているUSBのフル端子と充電用のMicro USB端子。なおMicro USB端子は充電用なので、USB機器を接続しても利用することはできない
Micro SDカードスロットとSIM(フルサイズ)カードスロット
オプションで用意されているポートリプリケータ兼充電台
ポートリプリケータの端子類。HDMI端子、オーディオ入出力、USB 2.0×2、イーサネット端子、ACアダプタ(Classic ThinkPadの65W用と同じ、製品に同梱)。左端のmicro USBのように見えるのはデバック用のポートで、実際には何にも利用できないので注意

ワイヤレスWANはUSBの専用ケーブル接続、Connected Standbyで20日の待機が可能

 ThinkPad Tablet 2の内部構造は実にシンプルで、マザーボード、バッテリ、LCDモジュールから構成されている。メインボードは10層基板で、メインの基板にSoC(Atom Z2760)、その上にPoP(Package On Package)でメインメモリ(LPDDR2、2GB)、64GBのeMMC、Wi-Fi/Bluetooth/GPSモジュールなどが搭載されている。NFCやワイヤレスWANに関してはCTOオプションとなっているため、別モジュールとして搭載されている。

 ワイヤレスWANに関しては、Atom Z2760側の制限でUSB接続のモジュールが利用されている。Ericsson C5621gw、Sierra Wireless EM7700(QualcommのGobi 4000搭載)の2つのモジュールがグローバルモデル用に用意されているが、インターフェイスはMini PCI Expressではなく、専用のフレキケーブルを利用して接続する形状になっており、後から拡張カードとして追加することなどはできない。従って、ワイヤレスWANを追加するのであれば、CTO時に追加する必要がある。

 なお、現時点ではレノボ・ジャパンがワイヤレスWANのオプションをCTOで提供するかは明らかではないが、初代のThinkPad Tabletでも発売からしばらく経ってから追加されたりしているので、その可能性に期待したい。

 なお、木下氏によれば、ThinkPad Tablet 2でWi-Fi接続時のConnected Standbyは25日間のバッテリ駆動時間を実現できるが、ワイヤレスWANを利用した場合には20日間になるということだった。これはワイヤレスWANの消費電力がWi-Fiよりも高いためだ。しかし20日間であれば、不満を感じることはないだろう。

他のタブレットと同じように内部はほとんどがバッテリで、基板などが占める面積は少ない
内蔵バッテリ。ユーザーが交換することはできない
基板類。ワイヤレスWANと、NFCが別モジュールとなっているのはCTOオプションとして設定されているため
ワイヤレスWANのモジュールとなるEricsson C5621gw。日本で提供されるかは現時点では不明
マザーボードA面。
マザーボードB面。
メインボードの主要部分。SoCはDRAMの下に隠れている。左に見える十字っぽい銀色のカバーの下にWi-FiとBluetoothなどが格納されている

ThinkPad X1に比べて薄くしたのに、縦横も小さくなっているThinkPad X1 Carbon

 ThinkPad X1 Carbonは、ビジネス向けのUltrabookとして投入された製品だ。最大の特徴は、従来のThinkPadシリーズに比べて圧倒的に薄いことだ。先週、新たにタッチ付き(液晶部分が最大で2mmほど厚くなる)モデルが発表され、間もなく日本でも販売が開始される予定だ。

 ThinkPad X1 Carbonを見ていくと最初に気がつくことは、Sandy Bridge世代の製品となるThinkPad X1では、13型の液晶を搭載していたのに対して、ThinkPad X1 Carbonでは14型の液晶を搭載していること。この点に関してレノボ・ジャパンノートブック製品 開発オペレーションズ 製品開発統括担当 田保光雄氏は「Classic ThinkPadでは、モデル名(X230やT430など)の後の数字がパネルのサイズを示している。しかしX1ではそうした名前にしなかったのは、デザイン優先でパネルのサイズにこだわらず設計をしていったからだ。当初は13型も考えていたが、頑張れば14型が入ることが見えてきた」と説明する。

 よくスペックを比較してみると気がつくのだが、ThinkPad X1 CarbonはThinkPad X1と比較して、厚さが薄くなっているのはもちろんなのだが、縦横のサイズも若干小さくなっている。すでによく知られている通り、Ultrabookでは厚さ方向の規定がされているため、OEMメーカーは薄さを実現するため、縦横方向に膨らむデザインを採用していることが多い。それに対してThinkPad X1 Carbonでは横や縦に伸ばして薄さを実現するという「安易な方法」にチャレンジするのではなく、横や縦は維持したまま薄さを実現するというより厳しい方法にチャレンジしている。「部品の寸法やケーブルの配線もできるだけ隙間を利用するということを少しずつ積み重ねていった。メーカーとしては工場での生産性にも影響することなので、そのあたりを慎重にやっていった」(田保氏)という。

レノボ・ジャパンノートブック製品 開発オペレーションズ 製品開発統括担当 田保光雄氏
ThinkPad X1 Carbonの中を見ると、そのほとんどがバッテリーで構成されていることがわかる
キーボードのサイズが先にあり、それを元に設計していくと、14型の液晶を入れることができるとなり、X1 Carbonの液晶は14型になった

NGFFへと至るまでの途上にある“中間仕様”カードを採用

 ThinkPad X1 Carbonの内部構造を見ると、バッテリが内部で大部分を占めていることがわかる。「バッテリのセルあたり容量を増やし、厚さを減らした結果、接地面積が増えた。そのしわ寄せが基板などシステム側にきている」(田保氏)と説明する。つまり設計にあたって、マザーボードや通信モジュールなどを従来よりも小さくしなければならなかった。

ThinkPad X1 Carbonのカード部分。ワイヤレスWAN(日本では未設定)は、Mini PCI Expressのハーフサイズで実装されているが、mSATAのモジュールやWi-Fi(Centrino Advanced-N 6205S)はMini PCI ExpressとNGFFとの中間仕様のコネクタを採用している

 そこでThinkPad X1 Carbonで採用したのは、独自のカードモジュールだ。一般的なノートPCの設計では、Mini PCI Expressのフルサイズカードないしはハーフサイズカードを利用してWi-FiやワイヤレスWANなどの通信機能を実装しているのだが、ThinkPad X1 Carbonで採用されているのはそれよりも一回り小さな独自形状のカードモジュールだという。

 このカードモジュールについて田保氏は「レノボとIntelで共同開発した。標準仕様にしたかったのだが、最終的にはこの仕様をNGFFが採用することになった」と明らかにした。つまり、現行のMini PCI ExpressとNGFFとの中間仕様とでも言うべき特別仕様だ。

 NGFFは以前の記事でも説明した通り、Ultrabookにおける通信モジュールやSSDの実装に配慮した仕様で、Mini PCI Expressに比べてより薄く小さくすることが可能になる。ThinkPad X1 Carbonで採用しているのはその中間仕様、つまり標準にはならなかったが、その候補として考えられていたものを採用しているのだという。

 電気信号に関してはPCI ExpressとUSBに対応しており、コネクタの高さはMini PCI Expressとあまり変わらないが、カードのサイズが小さくなっている(なお、NGFFではコネクタの高さも低くなっている)。田保氏によれば「サプライヤー何社かはこの仕様に基づいたカードをリリースしてくれる」としており、Mini PCI Expressと同じように利用できているのだという。

 実際、ThinkPad X1 CarbonではWi-FiモジュールとSSDがこの仕様のカードとして搭載されている。Wi-Fiに採用されているカードはIntelの「Centrino Advanced-N 6205S」という末尾にSがつく特別仕様となっている。なお、Intelはこの中間仕様コネクタ向けのWiMAXモジュールを提供していないため、ThinkPad X1 CarbonではWiMAX付きモデルが提供できない。

 もっとも、こうした中間仕様カードも、おそらくはこの世代で終了となる可能性が高い。IntelはHaswell世代以降ではNGFFの採用を呼びかけているというのは、以前の記事でも説明した通りで、Haswellを搭載した次世代モデルなどではNGFFに切り替わっていく可能性が高い。そういう意味では内蔵カード“マニア”にとっては、このThinkPad X1 Carbonはちょっとしたレアなコレクターアイテムになっていきそうだ。

(笠原 一輝)