多和田新也のニューアイテム診断室

GTX 580コアを使ったセミハイエンド「GeForce GTX 570」



 NVIDIAは12月7日、GeForce GTX 500シリーズの新製品となる「GeForce GTX 570」を発表した。先に発売されたGeForce GTX 580の下位モデルとなる製品で、その設計を踏襲しているのが特徴だ。このパフォーマンスをチェックする。

●GTX 480に近いスペックをGF110で

 GeForce GTX 570(以下GTX 570)は、先にリリースされたGeForce GTX 580(以下GTX 580)で初めて採用された「GF110」コアを用いたセミハイエンドモデルとなる。主なスペックは表1の通り。

 こちらを見ても分かる通り、演算ユニット周りの仕様はGF110コアのSM(Streaming Multiprocessor)1つを無効にしたモデルとなっており、その点でやはりGF100の1SMを無効にしたGeForce GTX 480(以下、GTX 480)に近いものとなる。ただし、コア/シェーダクロックは高くなっている。

 ROPやメモリ周りは、GTX 480よりもGeForce GTX 470(以下GTX 470)に近い仕様だ。ただ、こちらも高いクロックが設定されており、GTX 470よりは広帯域幅を確保している。

 つまり、GTX 480に比べると、演算ユニット周りの仕様は高クロック化やGF110のアーキテクチャ拡張によってGTX 480を上回る仕様と言えるが、ROP/メモリ周りでGTX 480に劣り、総合的にどういった性能になるかが注目となる。

 消費電力はピークで219Wとされている。これはGTX 480を下回り、GTX 470に近いものとなっている。演算ユニット周りの仕様を考えると低い数値に収まっている。GF110コア採用の恩恵といえるだろう。

 今回テストするのはNVIDIAから借用したリファレンスボードだ(写真1)。化粧カバーにヒートシンクが覆われ、GTX 580に似たデザインになっている。ヒートシンクはGTX 580と同じくベイパーチャンバーを用いたものを採用している。

 GTX 470はGTX 480より短いボードだったが、GTX 570のボード長はGTX 580と同じだ(写真2)。電源端子は6ピン×2(写真3)。225Wを切るので、この端子数は妥当だ。8ピン+6ピン構成のGTX 480よりは気楽に使えるが、GTX 470に比べるとボード長で注意が必要といったところである。

 出力端子はDVI-I×2とMini HDMIを備えている(写真4)。ここは従来のGeForce GTX 400/500シリーズと変わっていない。

 ドライバは現在NVIDIAのWebサイトで公開されているものと同じバージョン263.09である(画面1)。ただし、レビューワ向けにGTX 570対応させたものの提供を受けている。

【表1】GeForce GTX 570の主な仕様
  GeForce GTX 570 GeForce GTX 480 GeForce GTX 470 GeForce GTX 580
プロセスルール 40nm 40nm 40nm 40nm
GPUクロック 732MHz 700MHz 607MHz 772MHz
CUDA Coreクロック 1,464MHz 1,401MHz 1,215MHz 1,5441MHz
CUDA Core数(SM数) 480基(15基) 480基(15基) 448基(14基) 512基(16基)
テクスチャユニット数 60基 60基 56基 64基
メモリ容量 1,280MB GDDR5 1,536MB GDDR5 1,280MB GDDR5 1,536MB GDDR5
メモリクロック(データレート) 3,800MHz相当 3,696MHz相当 3,348MHz相当 4,008MHz相当
メモリインターフェイス 320bit 384bit 320bit 384bit
メモリ帯域幅 152GB/sec 177.4GB/sec 133.9GB/sec 192.4GB/sec
ROPユニット数 40基 48基 40基 48基
ボード消費電力(ピーク) 219W 250W 215W 244W

【写真1】GeForce GTX 570のリファレンスボード 【写真2】左からGTX 580、GTX 570、GTX 480、GTX 470。GTX 580/570/480のボード長は同じだ 【写真3】電源端子は6ピン×2の構成となっている
【写真4】映像出力端子はDVI-I×2、Mini HDMIの構成 【画面1】動作クロック等は仕様どおりの数字で動作している

●ハイエンド〜セミハイエンド製品を比較

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2の通りで、ハイエンド〜セミハイエンド製品を中心に比較を行なう。テストに用いた比較対象製品は写真5〜9に示す。

 また参考までに6ピン×2の電源端子で実現できるRadeon HD 6850のCrossFire環境もテストを行なうが、GTX 580のテスト以後に公開されたCATALYST 10.11がRadeon HD 6800シリーズをサポートしていないことから、CATALYST 10.10でのテストとなる。その際とまったく同じ環境でもあるので、数値はGTX 580レビュー時の結果から流用している。

【表2】GeForce GTX 570の主な仕様
ビデオカード GeForce GTX 580(1.5GB)
GeForce GTX 480 (1.5GB)
Radeon HD 6850(1GB) Radeon HD 5870(1GB)
グラフィックドライバ GeForce Driver 263.09β Catalyst 10.10 Catalyst 10.11
CPU Core i7-860(TurboBoost無効)
マザーボード ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55 Express)
メモリ DDR3-1333 2GB×2(9-9-9-24)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源 KEIAN KT-1200GTS
OS Windows 7 Ultimate x64

【写真5】GeForce GTX 480のリファレンスボード 【写真6】GeForce GTX 470を搭載する、玄人志向の「GF-GTX 470-E1280HD 【写真7】GeForce GTX 580を搭載する、GALAXY Microsystemsの「GF PGTX 580/1536D5
【写真8】Radeon HD 6850を搭載する、XFXの「HD-685X-ZNFC 【写真9】Radeon HD 5870を搭載する、XFXの「HD-587A-ZNF9

 では、まずはDirectX 11対応タイトルのベンチマーク結果から紹介していきたい。テストは「Alien vs. Predator DirectX 11 Benchmark」(グラフ1)、「BattleForge」(グラフ2)、「Colin McRae: DiRT 2」(グラフ3)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ4)、「Stone Giant DirectX 11 Benchmark」(グラフ5)、「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」(グラフ6)、「Unigine Heaven Benchmark」(グラフ7)の結果である。Stone GiantはRadeon HD 6850のCrossFire環境で動作しなかったため結果を割愛している。

 さすがにGTX 580に対しては分が悪いが、これは致し方ない。およそ1〜1.5割程度低いスコアとなっている。

 GTX 470に対しては優位性の強い結果が出ている。おおむね2〜3割程度増しの結果が出ており、演算性能/メモリ性能ともに強化されたことの強みが発揮された格好だ。特にアンチエイリアスや異方性フィルタを適用した際に差を広げる傾向を見せている。

 GTX 480に対しては、Stone GiantやH.A.W.X.2でやや分の悪さを見せているが、ほかは上回る結果となった。ただし優位性のあるテストにおいても、Aliens vs Predatorの結果で顕著に出ているように、ほとんどのテストでフィルタ類を適用すると、差が詰まるもしくは逆転する結果となっている。このあたり、出力の段に高負荷がかかるようなデータ量の多い状況において、GTX 480の優位性が残る印象を受ける。

 Radeon勢に対しては、Radeon HD 5870にはほぼ完勝といってよい結果だ。Radeon HD 6850のCrossFireに対しては分が悪い。Aliens vs PredatorやBattleForgeのようにDirectX 11タイトルでもテッセレータなどの活用が少ないタイトルでは、Radeon HD 6850のCrossFireが強い。Lost Planet 2やHeaven Benchmarkのように、割とテッセレーションを使うタイトルでは差が小さいものの、高解像度ではやはりCrossFireの強みが出ている。ただし、かなり新しめのDirectX 11対応タイトルであるH.A.W.X.2はGTX 570の強さが見てとれる。

【グラフ1】Alien vs. Predator DX11 Benchmark
【グラフ2】BattleForge
【グラフ3】Colin McRae: DiRT 2
【グラフ4】Lost Planet 2 Benchmark
【グラフ5】Stone Giant DX11 Benchmark
【グラフ6】Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark
【グラフ7】Unigine Heaven Benchmark 2.1

 続いては、DirectX 10/9世代のベンチマークである。テストは「3DMark Vantage」(グラフ8、9)、「Crysis Warhead」(グラフ10)、「Far Cry 2」(グラフ11)、「Left 4 Dead 2」(グラフ12)、「Tom Clancy's H.A.W.X 」(グラフ13)、「Unreal Tournament 3」(グラフ14)である。

 こちらはCPUによる頭打ちも多く見られるが、高負荷時においてもGTX 570がGTX 480を上回るシーンが多い。3DMark VantageのFeature Testを見ると、Stream OutではGTX 570、GPU PerticlesではGTX 480が優位性ある結果を見せており、GTX 570はメモリ周りは劣るものの、ジオメトリ処理性能については優位に立っているということになるだろう。

 Radeon勢に対しては、DirectX 11対応タイトルよりも得手不得手が激しくなっている。ただ、Radeon HD 6850のCrossFireに対してはかなりビハインドを背負っている印象を残した。

【グラフ8】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Graphics Score)
【グラフ9】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Feature Test)
【グラフ10】Crysis Warhead (Patch v1.1)
【グラフ11】Far Cry 2 (Patch v1.03)
【グラフ12】Left 4 Dead 2
【グラフ13】Tom Clancy's H.A.W.X
【グラフ14】Unreal Tournament 3 (Patch v2.1)

 最後に消費電力のテストである(グラフ15)。アイドル時の消費電力は、ほかのGeForce勢を下回っており好印象だ。

 一方、ロード時の消費電力は、GTX 480やGTX 580に比べれば低いものの、GTX 470よりは高いものとなった。その差は20Wを超えており、この電力差は公称値以上に大きなものといえる。

 さらに、Radeon勢の低消費電力性は際立っており、Radeon HD 6850のCrossFireとGTX 570が同等か、やや前者が低いという素晴らしいものとなった。Radeon HD 5870は性能面ではGTX 570に劣る面もあるが、消費電力を考えると、異なる性格の製品として存在価値はあると言えるだろう。

【グラフ15】各ビデオカード使用時のシステム消費電力

●GTX 480/470を過去のものにするGTX 570

 以上の通り、GTX 570のベンチマークをお伝えした。結果を見ると、GTX 470の後継モデルとしての性能のジャンプは大きく、GTX 480をも上回る結果が多いのは印象的だ。

 価格は349ドルとされており、日本の販売価格は3万円半ばから4万円前後が予想される。GTX 580やRadeon HD 6850のCrossFireの価格帯は、これよりやや上に位置しており、妥当な価格帯だろう。また、Radeon HD 5870もすでに2万台に推移しており、先述のように違う価値観を沿った製品として認識していいと思う。

 GTX 480は価格がこなれてきており、GTX 580登場時は、実売ベースでは違う価格帯の製品として選択肢になり得た。しかし、性能は同等レベル、消費電力はより低いGTX 570が登場したことで、GTX 480は完全に置き換えられるだろう。

 GTX 470については2万円台に落ち着いており、価格帯の違う製品としてまだ生き残るだろう。ただし、先述の通り性能のジャンプは非常に大きく、CPUがボトルネックになりにくいクラスの製品という点もあり、GTX 480からGTX 580以上の性能差はある。

 その意味でこのGTX 570の登場は、NVIDIAのハイエンド製品はGTX 400シリーズからGTX 500シリーズへの世代交代の本格化を告げるものとなりそうだ。