■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
今回はProlimatechの「Black Megahalems」を紹介する。購入金額は6,900円だった。
●Prolimatechブランドを象徴するヒートシンクのカラーバリエーション
2009年、Prolimatechがブランドの立ち上げとともに投入したCPUクーラー「Megahalems」は、当時の空冷ヒートシンクとしては最上級のパフォーマンスを持っており、その優れた冷却性能によってProlimatechのハイエンドCPUクーラーブランドとしての地位を確立した。今回紹介するBlack Megahalemsは、その名の通りMegahalemsをベースに、マットブラック仕上げの放熱フィンを備えたカラーバリエーションモデルである。
Black Megahalemsのヒートシンクは、6本の6mm径ヒートパイプと2ブロックの放熱ブロックによって構成されている。マットブラック仕上げが特徴的な放熱ユニットでは、最上段の放熱フィンを除いて、2枚の放熱フィンでヒートパイプを挟み込むというProlimatechブランドならではの独特な接合方法を採用しており、1ブロックあたり89枚、合計178枚の放熱フィンを備える。ヒートパイプとベースユニット、放熱フィンはそれぞれろう付けされており、ハイエンドクーラーらしく細部まで作りこまれたヒートシンクに仕上がっている。
Black Megahalemsにはファンが同梱されていないため、使用する際はユーザーがファンを別途用意する必要がある。ベースとなったMegahalemsが登場した2009年以前は、オリジナルファンを同梱しないハイエンドCPUクーラーが少なからず存在していたが、ファンレス製品を除くほとんどのCPUクーラーが標準ファンが同梱している現在では、ユーザー自身の手で搭載ファンを選択することを前提とするBlack Megahalemsは希有な存在であると言えよう。
さて、Black Megahalemsにはファン固定用のクリップが2セット同梱されており、最大で2基のファンを搭載することができる。ファンクリップは以前紹介したProlimatech Linxのものとよく似た形状の金属製クリップで、120mm角25mm厚ファン、または140mm角25mm厚ファンに対応する。このクリップの特徴として、ファンのフレームや羽根の形状によっては干渉問題が発生する可能性がある点と、ファン搭載位置を上下方向にオフセットしやすい点が挙げられる。
ベースとなったMegahalemsが120mm角ファン用のヒートシンクであったことから、最近の140mm径ファン向けハイエンドヒートシンクに比べれば、ヒートシンクと周辺パーツの干渉問題は起こりにくい。搭載ファンがCPUソケット寄りのメモリスロットに被さるが、120mm角ファンを利用する分にはファン搭載位置を上側にオフセットすることで、ある程度はヒートスプレッダ搭載メモリとの干渉を回避できる。ただ、140mm角ファンを搭載した場合はメモリとの干渉をオフセットで回避することは難しく、ファンを上側に逃がそうとした場合、ケースの側面パネルとの干渉が問題となる。Black Megahalemsで140mm角ファンを利用する場合は、周辺パーツとのクリアランスに注意が必要だ。
●冷却性能テスト結果
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。前述の通り、Black Megahalemsにはファンが同梱されていないため、今回はPWM制御対応の120mm角ファン「X-FAN RDL1225S-PWM」を利用し、ファンフル回転時(約1,700rpm)と、PWM制御を20%に設定した際(約820rpm)の温度をそれぞれ取得した。
結果を見てみると、3.4GHz動作時はフル回転時に57℃、20%制御時に63℃となっており、CPU付属クーラーに比べて22~28℃低い良好な結果を記録した。オーバークロック時については、4.4GHz動作時に69℃~77℃、4.6GHz動作時には79℃~88℃という結果を記録した。最上級というほどの結果ではないが、シングルファンのサイドフロー型CPUクーラーとしては、空冷CPUクーラーの中でも上位のパフォーマンスと言える結果だろう。
動作音については、PWM制御で20%に絞った約820rpm動作時は、ほとんど気にならないレベルだった。これだけの静音動作でありながら、4.6GHz動作時のCPU温度を90℃以下に抑えているのは大したものだ。一方、フル回転の約1,700rpm動作時はそれなりに大きい。CPUに高負荷を掛け続けるような使い方をしないのであれば、もう少し低速なファンと組み合わせてみても良いだろう。
●空冷最上級の性能も今は昔だが、総合的な完成度の高い製品2009年には空冷最上級の冷却性能を誇ったMegahalemsをベースにしているBlack Megahalemsだが、今回の検証結果をみる限り、その性能は2012年現在の空冷最上級製品には及ばないように見える。それでも、空冷では上位の冷却性能は持っており、現在でもハイエンドCPUクーラーとして通用する製品であるといえよう。
性能面以外の要素として紹介しておきたいのが完成度の高いリテンションキットだ。細かい部品を組み合わせていく必要があるためプッシュピンのような手軽さはないのだが、取り付け時に強い力を加える必要はなく、各ネジは締め切ればよいので特に締め具合を考える必要なくヒートシンクを適切に固定できる。手順通りに作業すれば、容易に再現性の高い取り付けが可能な本製品のリテンションキットは、他社のCPUクーラーを含めても屈指の出来である。
空冷CPUクーラーの性能を追求するユーザーや、コストパフォーマンスを求めるユーザーにとってベストな選択肢とは言えないBlack Megahalemsだが、完成度の高いリテンションキットや、空冷上位の冷却性能を持つヒートシンクは魅力的だ。どういったファンと組み合わせ、どのような方向性で運用するのかを考え、オリジナリティのあるCPU冷却を見出すのも面白いだろう。
Prolimatech「Black Megahalems」製品スペック | ||
メーカー | Prolimatech | |
フロータイプ | サイドフロー型 | |
ヒートパイプ | 6mm径×6本 | |
放熱フィン | 89枚+89枚 | |
サイズ | 130×74×158.7mm (幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 790g (ヒートシンクのみ) | |
付属ファン | なし | |
対応ソケット | Intel:LGA 775/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM2 |