■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
今回は、DEEPCOOLから発売中の大型CPUクーラー「ASSASSIN(アサシン)」を紹介する。今回の購入金額は6,480円だった。
●DEEPCOOL「GAMER STORM」ブランドのCPUクーラー
今回紹介するASSASSINは、DEEPCOOLのゲーマー向けブランド「GAMER STORM」のCPUクーラーである。DEEPCOOLのGAMER STORMは、もとは2010年に発売されたサイドフロー型CPUクーラーの製品名であったが、現在はゲーマー向けにクーリングソリューションを提供することを目的に新設されたブランドの名称である。現在、同ブランドの製品は、ASSASSINのほかに、ビデオカード用クーラーの「DRACULA」がラインナップされている。
新ブランド製品であると同時に、DEEPCOOL製CPUクーラーのフラッグシップモデルでもあるASSASSINは、8本の6mm径ヒートパイプと、49枚のアルミ製放熱フィンからなる放熱ユニットを2ブロック備えた、ミッドシップレイアウト採用のサイドフロー型ヒートシンクだ。ヒートシンク全体施されためっき処理のクオリティーは総じて良好で、ベース面の鏡面めっきは特に美しい。また、ヒートパイプと各ユニットの接続部にはろう付けも施されている。スペック上では、以前紹介したThermalright Silver Arrow SB-Eに匹敵するハイスペックなヒートシンクであり、外観からはなかなかよく作られているように見える。
標準ファンには、120mm角ファンと140mm径の異径ファンの組み合わせによる、デュアルファン構成を採用している。140mm径ファンについては、4pin電源コネクタを備えたPWM制御対応ファンで、回転数を700~1,400rpmの範囲で調整できる。一方、120mm角ファンはPWM制御に対応しておらず、1,200rpm動作の回転数固定ファンである。その他、2基のファン共通の特徴として、弾性のあるTPE製フレームを採用していることが挙げられる。DEEPCOOLは、このフレームの採用によって、動作中のファンから生じた振動を吸収する効果があるとしている。
DEEPCOOL「ASSASSIN」パッケージ |
ASSASSIN本体 |
付属品一覧 |
同梱ファン。120mm角と140mm径の異口径ファンを採用する。 |
メモリとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE) |
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE) |
メモリや拡張スロットとの干渉問題は、大型ヒートシンクにとって避けて通れない問題だが、ASSASSINの場合、メモリスロット側に120mm角ファンを搭載するという仕様により、メモリとの干渉が緩和されている。テスト用のマザーボード「ASUS MAXIMUS V GENE」との組み合わせでは、メモリの全高が40mm以下の製品であれば取り付けられることが確認できた。内側の2スロットに関しては、メモリの上空にヒートシンクが被さる位置関係になっているが、一定のクリアランスは確保されている。
拡張スロットとの干渉については、ASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせではヒートシンク自体が最上段の拡張スロットを覆うことはなかったが、ファン取り付け用の金属クリップに設けられた取っ手のような箇所が拡張スロットの延長線上に被っていた。これについてはCPUソケットとの位置関係にもよる問題だが、クリップを曲げて回避するなどの対応が可能だ。このところ豪快に拡張スロットやメモリに被る製品が多かったためかもしれないが、ASSASSINについてはある程度周辺干渉を考慮した設計がなされているような印象を受ける。
●冷却性能テスト結果
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、付属ファンをフル回転(120mm=約1,230rpm/140mm=約1,480rpm)させた際の温度と、PWM制御を20%に設定(120mm=約1,230rpm/140mm=約770rpm)した際の温度をそれぞれ取得した。
テストの結果、3.4GHz動作時に85℃を記録したリテールクーラーに対し、20%制御時に59℃、フル回転時には57℃と、26~28℃低い温度を記録した。また、4.4GHzオーバークロック時については、20%制御時に73℃、フル回転時に69℃をそれぞれ記録した。いずれもなかなか優秀な結果と言って良いだろう。温度の数字だけを見ると、20%制御時の結果が大変よく見えるのだが、これは単にCPUクーラーの放熱性能の高さが反映された結果ではなく、約1,230rpmで回転する120mm角ファンにPWM制御が効いていないことによる影響が大きい。
120mm角ファンがPWM制御に対応していないことで、20%制御時のCPU温度は低く抑えられているものの、動作音についてはやや気になるレベルから脱することができない。140mm径の大口径ファンが約1,480rpmで回転数するフル回転時の動作音は明らかに煩いと感じるレベルなので、140mmファンの回転数を落とすだけでもノイズは大きく改善されるのだが、やはりここは120mmファンもPWM制御に対応して欲しかったところである。なお、より静音にこだわりたいのであれば、同梱の7V出力用電源ケーブルを利用することで、120mm角ファンの回転数を落としてノイズを抑えることは可能だ。
●完成度の高さと不釣り合いな価格が魅力のCPUクーラーASSASSINは、ハイエンドCPUクーラーに相応しい外観と、それに見合う冷却性能を備えた完成度の高いCPUクーラーだ。周辺パーツとの干渉についても考慮されており、ハイエンド製品の中でも扱いやすい製品でもある。これだけの製品であれば、販売価格の6,480円はなかなか魅力的な価格設定であると言えるだろう。
ハイエンドCPUクーラーの魅力に満ちたASSASSINだが、惜しいのは120mm角ファンがPWM制御に対応していない点だ。せっかくここまで作りこんであるのだから、140mm径ファンと同じようにPWM制御に対応したファンを組み合わせて欲しかったところである。
DEEPCOOL「ASSASSIN」製品スペック | ||
メーカー | DEEPCOOL | |
フロータイプ | サイドフロー型 | |
ヒートパイプ | 6mm径×8本 | |
放熱フィン | 49枚+49枚 | |
サイズ | 144×154×160mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 1,378g | |
付属ファン | 120mm角ファン×1 電源:3pin 回転数:1,200rpm±10% 風量:52.35CFM(最大) ノイズ:23.2dBA(最大) サイズ:120×120×26mm | |
140mm径ファン×1 電源:4pin(PWM制御対応) 回転数:700±200rpm~1,400rpm±10% 風量:80.28CFM(最大) ノイズ:18.2~32dBA(最大) サイズ:140×140×26mm | ||
対応ソケット | Intel:LGA 775/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1 |