瀬文茶のヒートシンクグラフィック

be quiet!「DARK ROCK PRO 3」

~ドイツメーカーのTDP 250W対応ハイエンドCPUクーラー

 今回は、be quiet! のハイエンドサイドフローCPUクーラー「DARK ROCK PRO 3」を紹介する。購入金額は13,980円だった。

ドイツのPCパーツメーカー、be quiet!製CPUクーラーのフラッグシップモデル

 DARK ROCK PRO 3は、ドイツのPCパーツメーカー be quiet! が展開するCPUクーラー製品群の最上位に位置するフラッグシップモデルだ。2ブロックの放熱ユニットを持つ大型ヒートシンクに、120mmファンと135mmファンを各1基ずつ備えるDARK ROCK PRO 3は、TDP 250Wまで対応可能であるとされている。

 ヒートシンク本体は、銅製の接地面を持つベースユニットと、熱輸送用の6mm径ヒートパイプ7本、2ブロック合計90枚のアルミニウム製フィンを備える放熱ユニット、この3ユニットによって構成された、ミッドシップタイプのサイドフロー型ヒートシンクだ。ヒートシンク本体への黒色ニッケルめっき処理と、天板にヘアライン仕上げの飾り板を配置したことで、製品名の「DARK ROCK」らしく、黒で統一されたソリッド感の高いルックスに仕上がっている。

 DARK ROCK PRO 3には、ヒートシンク中央部に配置する135mm径の22mm厚ファンと、フロント側に配置する120mm角25mm厚ファンの2基が同梱されている。これらのファンは、いずれもbe quiet! が誇る静音ファン「SILENT WINGS シリーズ」のPWM制御対応ファンで、回転数の下限は公開されていないが、135mmファンが最大1,400rpm、120mmファンは最大1,700rpmで動作する。どちらも一般的な120mm角ファンと同じ位置にネジ穴が配置されているが、ネジ穴部分の形状が一般的なケースファンとは異なっている。

 冷却ファンのヒートシンクへの取り付けは、専用の金属製クリップによって行なう。前述の通り標準ファンのフレーム形状が特殊なため、標準ファンを取り付けるための金属製クリップは、市販の120mm角25mm厚ファンと互換性が無いが、DARK ROCK PRO 3には120mm角ファンとネジ穴位置の互換性がある25mm厚ファンを取り付けるためのクリップが1セット付属しており、これを用いることで、標準ファンに市販のケースファンを加えたトリプルファン構成での運用が可能となる。

DARK ROCK PRO 3 本体
リテンションキット
付属の冷却ファン。120mmと135mmのハイブリッド構成で、いずれも静音ファン「SILENT WINGS シリーズ」のPWM制御対応モデル
標準搭載の120mmファン(左)と、一般的な120mmファンのフレーム比較。同じ25mm厚ファンながら、ネジ穴の位置が異なっていることが分かる
ファン固定用の金属製クリップ。標準搭載の冷却ファンを固定するためのクリップ4本(2組)に加え、120mmファンと穴位置互換のある25mm厚ファンの取り付けが可能なクリップが2本(1組)が付属する
ファンクリップ取り付け時
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)

 周辺パーツとの干渉については、今回テストに用いたASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせにおいて、拡張スロットとの干渉は確認されなかったが、メモリスロットの上空にヒートシンクとファンが被る形となった。ファンに関しては、取り付け位置を多少上にずらすことが可能だが、最もCPUソケットに近いメモリスロットの上空にはヒートシンクが被っているため、全高40mmを超えるようなメモリモジュールは搭載できない可能性がある。

 リテンションキットについては、LGA 2011以外は基板の裏面からバックプレートを介してのネジ止め、LGA 2011は基板表面側から付属のレンチを使ってネジ止めする方式を採っている。近年、ハイエンド製品を中心に採用製品の増えているブリッジ方式のリテンションキットに比べ、DARK ROCK PRO 3のリテンションキットの設計は1世代古い印象が拭えず、取り付け時の作業性が悪く、扱いにくい。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 グラフ中のファン回転数は「120mmファン/135mmファン」の順で記載している。なお、回転数についてはマザーボードのセンサーが読み取った数値を記載しているが、135mmファンの回転数については、一部スペックを大きく超える値になっており、正しく測定できていない可能性がある。

【グラフ】テスト結果

 DARK ROCK PRO 3は、Intel Core i7-2600Kの定格動作クロックである3.4GHz動作時に53~60℃を記録した。これはCPU付属クーラーより25~32℃低い温度であり、Intelの純正CPUクーラーとは一線を画す冷却性能を持っていることが伺える。

 一方、CPUの発熱が増大するオーバークロック動作時では、4.4GHz動作時は68~83℃、4.6GHz動作時は80~87℃(20%制御は過昇温によりテスト中止)という結果となった。1万円を超える価格帯にある空冷CPUクーラーとしては特別優秀というほどのパフォーマンスではないが、大きさなりの冷却性能は持っている。

 動作音については、静音性が自慢の「SILENT WINGS シリーズ」を冷却ファンに採用したこともあり、PWM制御50%設定までは、かなり静かに動作している印象だ。フル回転時は多少の風切り音が生じるものの、軸音やヒートシンクが共振して鳴くようなことは無く、全ての回転数域で比較的静かに動作しているという印象を受けた。

ルックスと静粛性が魅力のハイエンドCPUクーラー

 冷却性能やリテンションキットの完成度で言えば、DARK ROCK PRO 3と同じ価格帯にはより優れた製品が存在しているが、be quiet! 自慢の静音ファン「SILENT WINGS シリーズ」の採用による静粛性や、ソリッド感のあるヒートシンクのデザインには、DARK ROCK PRO 3独特の魅力がある。

 傑出した冷却性能とは言えないまでも、空冷CPUクーラーとしては優秀な部類に入る冷却性能は備えているので、ルックスを重視して購入しても、冷却性能が足りなくて困るということはそうは無いだろう。約14,000円という価格は高いが、PCの内装にも気を使うこだわり派の自作PCユーザーなら、DARK ROCK PRO 3を検討してみてはいかがだろうか。

be quiet! 「DARK ROCK PRO 3」製品スペック
メーカーbe quiet!
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径7本
放熱フィン90枚(45枚×2ブロック)
サイズ(ファン搭載時)137×150×163mm(幅×奥行き×高さ)
重量(ファン搭載時)1,197g
付属ファン120mmファン SilentWings PWM 120mm
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数: ~1,700rpm
ノイズ(最大):21.5dBA
サイズ:120×120×25mm
135mmファン SilentWings PWM 135mm
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数: ~1,400rpm
ノイズ(最大):20.8dBA
サイズ:135×135×22mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket 754/939/940/AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)

(瀬文茶)