瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Thermalright「HR-22」

〜Thermalright渾身のフラッグシップモデル

 今回は、Thermalrightの大型サイドフローCPUクーラー「HR-22」を紹介する。購入金額は13,800円だった。

ヒートシンク重量1.2kgの超大型ヒートシンク

 2001年のブランド設立以降、Thermalrightが10年以上に渡り蓄積し、研鑚してきた熱設計技術、その粋を集めて作り上げた、スーパーフラッグシップモデルがHR-22である。2005年にリリースされたHR-01を源流とし、より静かに冷却することを目的として改良を重ねてきたThermalright HRシリーズの最新モデルとなるHR-22は、CPUヒートシンク用のファンを必要とせず、ケースのエアフローのみでCPUを冷却することを目的に設計されている。

 ヒートシンク本体は、純銅(C1100)板を接地面に備えたベースユニット、6mm径ヒートパイプ8本、35枚のアルミニウム製放熱フィンで構成されている。放熱フィンの枚数は少ないが、フィン1枚当たりの面積を大きくしており、先代であるHR-02より約40%広い放熱面積を実現した。

 CPUクーラーにファンを必要としない設計思想で作られたHR-22には、冷却用のファンが同梱されていない。一応、120mm角ファンと穴位置互換があり、リブの無いフレームを採用したケースファンを搭載可能な金属製ファンクリップが同梱されているので、これを用いれば、ヒートシンクにファンを1基取り付けることはできる。

 標準ファンを備えない代わりに、HR-22には弾力のある樹脂で作られたダクトが同梱されている。これを用いて、ヒートシンクとケース背面のファンを繋げば、ただケースのエアフローに頼るより、能動的な冷却が行なえる。なお、ダクトはある程度の柔軟性があるが、蛇腹部を大きく伸縮させるような変形はできないため、少々使いどころが難しい。

HR-22本体
リテンションキットおよび付属品
ファン搭載時。リブなしフレームかつ120mm角ファンと穴位置互換なファンを搭載可能
樹脂製のダクト。柔軟な素材で作られているが、任意の形状に固定することはできない
放熱フィン表面に多数設けられた長方形のスルーホールが風を整流する。最も大きな穴は、リテンション取り付け用のメンテナンスホール
ブリッジ中央部に荷重調整用のネジを備えたリテンションキット
Thermalrightロゴ入りのプラスドライバーが同梱
ベースユニットは放熱ユニットの重心からかなりオフセットして配置されている
メモリスロットとのクリアランス。26.5mm厚ファンのTY-143を搭載しても、メモリとは干渉しなかった
拡張スロットとのクリアランス

 HR-22は、ベースユニットを放熱ユニットの重心から大きくオフセットすることで、メモリスロットや拡張スロットとの干渉を回避するように設計されている。この設計により、これだけの大型ヒートシンクでありながら、今回使用したASUS MAXIMUS V GENEではメモリスロット、拡張スロットとも干渉は発生しなかった。

 最後に、HR-22の仕様面で触れておきたいのが、リテンションキットだ。HR-22はリテンションキットに荷重調整機能付きのブリッジ式リテンションキットを採用している。これは、2009年発売の「Venomous X」で初採用されたもので、Thermalright製品のリテンションキットとしては、特に完成度が高い。

 ヒートシンクへのテンションを調整する荷重調整機能は、マニアックなおまけ機能といったところだが、基本的な作りがしっかりしているこのリテンションキットの採用は歓迎できる。放熱ユニットに設けられた、ねじ止め用のメンテナンスホールに、同梱のプラスドライバーを差し込めば、取り付けは比較的楽に行なえる。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。HR-22のテストでは、ファンレスでの動作に加え、同社製の140mm径ファン「TY-143」を搭載してテストを行なった。

 なお、ファン搭載時については、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 まずはファンレス動作時の結果をチェックする。ファンレス動作時については、負荷テスト開始から20分経過した時点で、本連載のテスト中止基準である94℃を超え、CPU温度は97℃に達した。その後、10分間システムをアイドル状態で放置した結果、温度は62℃にまで低下した。

 結果としては、完全ファンレスではフルロードのCore i7-2600Kの発熱を捌ききれなかったのだが、ここに至るまでの温度の上昇が非常に緩やかだったのが印象的だった。緩慢な温度変化からは、重量1.12kgという超重量級ヒートシンクの熱容量の大きさが感じられる。

 ファン搭載時の結果を見てみると、3.4GHz動作時のCPU温度は50〜58℃で、CPU付属クーラーより27〜35℃低い温度を記録。オーバークロック時には、4.4GHz動作時に63〜74℃、4.6GHz動作時に73〜88℃をそれぞれ記録した。ファンを搭載したHR-22のパフォーマンスは、ファンの搭載を前提に設計されたサイドフロー型CPUクーラーと比較しても遜色ない。なかなか優秀な結果と言えるだろう

 標準ファンを備えないHR-22の場合、動作音については搭載するファンに依存する。今回テストに用いた「TY-143」の場合、1,000rpm前後までであれば風切り音もさほど気にならないが、回転数をそれ以上に引き上げると、風切り音が大きくなっていき、フル回転時の約2,440rpm動作時には、猛烈な風切り音が発生する。なお、かなり回転数が高いファンをテストに用いたが、放熱フィンがガタついて異音を生じるようなことは無かった。

静粛性志向のヒートシンクとして高い完成度を誇るHR-22

 HR-22は、ヒートシンク本体のクオリティはもちろん、リテンションキットの出来も素晴らしい。非常に完成度の高いCPUクーラーだ。Thermalrightが「Super flagship」と謳うだけのことはある。「CPUクーラーをファンレス化し、ケースのエアフローで冷却する」という設計思想を魅力的に感じるなら、HR-22は最高の選択肢となるだろう。

 ファンを搭載したHR-22のパフォーマンスは優秀だが、冷却性能を追求するのであれば、空冷CPUクーラーの中に、よりよい選択肢が存在する。約14,000円という価格も含めて考えれば、純粋に冷却性能を求めるユーザーにとって、ベストバイとなり得る製品ではないだろう。

 それにしても、HR-22のようにしっかり作りこまれたヒートシンクはやはり良い。空冷CPUクーラーで1万円を超える価格は厳しいが、ここまで作り込んだ結果であれば納得できる。Thermalrightには、今後ともハイエンドCPUクーラーメーカーらしい製品作りを続けてもらいたいものだ。

Thermalright「HR-22」製品スペック
メーカー Thermalright
フロータイプ サイドフロー
ヒートパイプ 6mm径×8本
放熱フィン 35枚
サイズ(ヒートシンクのみ) 120×150×159mm(幅×奥行き×高さ)
重量(ヒートシンクのみ) 1,120g
対応ファン 120mm角ファンと穴位置互換のあるリブなしフレーム採用ファン
対応ソケット Intel:LGA 1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2

(瀬文茶)