瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Phanteks「PH-TC90LS」

~ TDP 130Wに対応する白いローハイトCPUクーラー

 今回は、全高を45mmに抑えつつ、TDP 130Wに対応したという、PhanteksブランドのローハイトCPUクーラー「PH-TC90LS」を紹介する。購入金額は3,980円だった。

カラーアルマイトで白く仕上げられた放熱フィンが特徴

 PhanteksのPH-TC90LSは、Phanteksブランドが2012年に発売した低背設計のトップフロー型CPUクーラーだ。放熱フィンへの白色アルマイト処理が特徴的な小型ヒートシンクに、92mm径の専用ファンを搭載したこのCPUクーラーは、LGA2011とLGA115x系ソケットのみをサポートする、Intelプラットフォーム専用のCPUクーラーである。

 PH-TC90LSのヒートシンクは、銅にニッケルメッキを施したベースプレートと、そのベースユニットに埋め込まれた平型ヒートパイプ、白色アルマイト処理が施された38枚のアルミニウム製放熱フィンで構成されている。ベースユニットに埋め込まれたヒートパイプの上には、放熱フィンが配置されているため、一見するとヒートパイプを備えないシンプルなヒートシンクに見える。

 標準で搭載している92mm径15mm厚のファンは、PWM制御に対応しており、回転数を1,000~2,500rpm(±300rpm)の範囲で調整できる。ヒートシンクへのファン固定には金属製のファンクリップを用いる。標準ファンの取り付け穴位置は、80mm角15mm厚ファンと互換性があるのだが、ファンクリップの形状が特殊なため、市販のケースファンをPH-TC90LS付属のファンクリップで取り付けるのは困難だ。

PH-TC90LS 本体
付属品
PWM制御に対応する92mm径15mm厚ファン
ファンの固定は専用のファンクリップで行なう
ヒートシンク本体。放熱フィンはアルマイト処理によって白色に着色されている。
ヒートシンク裏面
ベースユニットの四隅には、僅かに平型ヒートパイプが顔を覗かせている。
CPUソケット周辺パーツとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)

 周辺パーツとの干渉については、今回テストに用いた「ASUS MAXIMUS V GENE」との組み合わせでは問題がなかった。ただし、大型のベースプレートが、CPUソケット周辺を広範囲に渡って覆うため、背の高いコンデンサが実装されている場合や、VRM用ヒートシンクの位置次第では、PH-TC90LSのベースプレートと干渉する恐れがありそうだ。

 そのほか、PH-TC90LSは、LGA115x系ソケットではヒートシンクの取り付けにバックプレートを用いる。シンプルな形状のLGA115x系専用バックプレートなので、物理的な干渉問題が発生する可能性は低いが、裏面実装部品の多いMini-ITXマザーボードに搭載する際は十分注意したい。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 冷却性能テストの結果を見てみると、3.4GHz動作時にファンをフル回転させた際のCPU温度は78℃で、同じくフル回転のCPU付属ファンが記録した85℃から7℃の温度低下を実現した。一方、PWM制御を50%に絞った際のCPU温度は93℃と、CPU付属ファンより高い温度となり、20%制御時は94℃を超えたためテスト中止となった。

 最大でTDP 130Wに対応すると謳うCPUクーラーの性能としては、最低限の冷却性能は持っている印象だが、CPU付属クーラーから大幅な冷却性能向上を期待できる製品ではない。

 動作音については、PWM制御を20%(約990rpm)~50%(約1,400rpm)に設定した際は風切り音が小さく、かなり静かに動作している印象を受けた。一方、PWM制御を50%よりも高い設定にすると風切り音が一気に増大し、約2,600rpmで動作したフル回転時は風切り音が大変耳障りで、加えて軸音も大きいため、CPU付属クーラーと比べても煩いと感じる動作音だった。

ファンを回せば確かにTDP 130Wレベルだが、過度な期待は禁物

 全高45mmというローハイト設計のCPUクーラーとして、PH-TC90LSが冷却性能テストで示した性能はまずまずと言ったところだろう。TDP 130W対応を謳うサードパーティ製ヒートシンクというと、CPU付属クーラーを大きくしのぐ冷却性能を期待したくなるところだが、そのような期待に応えるだけの性能は持っていない。

 PH-TC90LSを選ぶなら、TDP 130W級の発熱を処理するという目的より、TDP 100W前後の冷却に余裕を持たせるという目的で選ぶのがお勧めだ。本連載の冷却性能テストで利用しているAVX対応版LinXの負荷でこの温度なら、実用的なアプリケーションのエンコード処理時や3Dレンダリングなどで発生する熱には、余裕を持って対応できる。Haswell世代のCPUで、コンパクトなPCの自作を目論むユーザーには好適だろう。

Phanteks「PH-TC90LS」製品スペック
メーカーPhanteks
フロータイプトップフロー
ヒートパイプ搭載(詳細不明)
放熱フィン38枚
サイズ(ファン搭載時)95×95×45mm(幅×奥行き×高さ)
重量273g
対応ファン92mm径15mm厚ファン×1
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:1,000~2,500rpm±300rpm
ノイズ:19~26dBA
対応ソケットIntel:LGA 1150/1155/1156/2011

(瀬文茶)