瀬文茶のヒートシンクグラフィック
Prolimatech「Black Genesis」
~マットブラックカラーのマルチフロー型CPUクーラー
(2012/12/12 00:00)
マルチフローレイアウトを採用するハイエンドヒートシンク
今回紹介するBlack Genesisは、Prolimatechが2011年に発売したGenesisをベースに、以前紹介したBlack Megahalemsと同じマットブラックのカラーリングを施したヒートシンクである。ベースとなったGenesisは、2ブロックの放熱ブロックがそれぞれトップフロー型ヒートシンクとサイドフロー型ヒートシンクの特徴を有する、マルチフロー型CPUクーラーだ。同様のレイアウトを採用するCPUクーラーは数製品しか発売されていない、大変珍しい形状のヒートシンクである。
ヒートシンク本体は、6本の6mm径ヒートパイプとベースユニット、43組86枚の放熱フィンからなるサイドフローブロック、45組90枚の放熱フィンからなるトップフローブロックによって構成されている。放熱フィンはヒートパイプを2枚1組で挟み込む形で接続しており、ヒートパイプと各パーツの接続部にはろう付けを施すなど、ヒートシンクとしてよく作りこまれていることが見て取れる。
Black Genesisには冷却用のファンが同梱されておらず、マルチフロー型CPUクーラーとして利用するためには2基のファンを別途購入する必要がある。対応ファンは120mm角または140mm角の25mm厚ファンで、固定には専用の金属製ファンクリップを用いる。
マルチフローレイアウトを採用したことにより、CPUの冷却だけでなく、周辺パーツへのエアフローも供給可能なBlack Genesisだが、その形状ゆえにマザーボードの広範囲をヒートシンクが覆うことになる。CPUクーラーのテストに利用しているASUSTeK「MAXIMUS V GENE」に取り付けた際、最上段の拡張スロットの上にファン固定用のクリップが若干かぶさるなどの干渉問題が発生した。
また、一般的なレイアウトのマザーボードと組み合わせると、トップフロー型の放熱ブロックがメモリスロットの上を覆うことになる。あらかじめメモリを差し込んでおけば、高さが50mm程度のメモリであっても搭載できるだけの余裕はあるのだが、先にCPUクーラーを搭載した状態で、高さが40mmを超えるメモリの抜き差しは困難だ。
ほかにも、トップフロー部分が覆う箇所に24ピン電源コネクタが位置するマザーボードが多いため、組み立て時の障害となる場合や、ケースによっては5インチベイ搭載機器との干渉も考えられる。組み合わせるパーツに注意が必要な製品であることは間違いないだろう。
冷却性能テスト結果
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。Black Genesisにはファンが同梱されていないため、今回は同じくProlimatech製の140mm角ファン「RED VORTEX 14 LED」を2基搭載してテストを行なった。なお、温度データについては、搭載ファンのフル回転時(約1,000rpm)のデータと、マザーボードによる電圧制御で50%に設定した際(約650rpm)のデータをそれぞれ取得した。
テスト時の温度を確認してみると、3.4GHz動作時はCPU付属クーラーに比べて25~27℃低い温度を記録した。大幅な温度低下ではあるが、この程度はハイエンドCPUクーラーとして当然と言ったところだろう。Black Genesisは、4.4GHz動作時に69~73℃、4.6GHz動作時は79~83℃を記録しており、ハイエンドCPUクーラーの真価が問われるオーバークロック動作時も良好なパフォーマンスを発揮している。搭載しているファンのスペックを考えればなかなか優秀な結果と言えるだろう。
ファンを同梱しないBlack Genesisの場合、動作音は組み合わせるファンに依存する。今回のテストに利用した「RED VORTEX 14 LED」は、スペック通りの約1,000rpm動作時であっても比較的静かに動作しており、電圧制御によって回転数を絞った約650rpm動作時はほとんど動作音なく回転していた。このような静音ファンとの組み合わせでありながら、十分な冷却性能を発揮していた点は評価しても良いだろう。
完成度の高いマルチフロー型CPUクーラー
奇をてらったようなデザインのマルチフローレイアウトだが、ハイパフォーマンスなCPUクーラーをリリースしてきたProlimatechの製品らしく、Black Genesisはハイエンド製品として恥ずかしくない冷却性能を備えている。組み合わせるパーツに注意が必要ではあるが、側面に窓のついたPCケースであれば、巨大なヒートシンクの存在感を遺憾なく発揮してくれるだろう。
今回購入した8,200円という価格に、ファン2基分まで含めると1万円を超えることから、同価格帯のハイエンドCPUクーラーと比べると、CPU冷却性能のコストパフォーマンスとしては一段劣る。空冷での冷却性能を追求したいユーザーにとってベストな選択肢というわけでもないが、完成度の高いマルチフロー型CPUクーラーという珍しさとその形状に魅力を感じるのであれば、なかなか愉しめるCPUクーラーである。
メーカー | Prolimatech |
フロータイプ | マルチフロー型 |
ヒートパイプ | 6mm径×6本 |
放熱フィン | サイドフロー部:86枚(43組)+飾り板×1枚 トップフロー部:90枚(45組)+飾り板×1枚 |
サイズ | 146×216.5×160mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 800g |
付属ファン | なし |
対応ソケット | Intel:LGA 775/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM2 |