■西川和久の不定期コラム■
ここのところ、15.6型2スピンドルノートPCのレビューが続いている。Blu-ray DiscドライブやBluetoothの有無など、それぞれ個性があるものの、今回はASUSTeKのスタンダードな構成となるSandy Bridge搭載機をご紹介する。
●安価でスタンダードな15.6型2スピンドル同社のK5xシリーズで、現在Web上に製品情報が載っているのは、K53、K52、K50の3タイプ。共通の仕様としては、「15.6型液晶パネル」で「2スピンドル」のノートPCだ。下位モデルのK50のK50IN/K50IJは、それぞれCore 2 DuoとCeleron、その上のK52Fは第1世代Core iプロセッサ搭載機となる。
今回ご紹介する「K53E」は、第2世代Core iプロセッサを搭載し、アーキテクチャを一新した最新モデルとなる。グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000。第1世代の内蔵GPUより描画性能が向上するとともに、ビデオエンコードエンジン(Intel Quick Sync Video)を持っているため、Intel Media SDK 2.0に対応したエンコーダであれば、動画の高速なエンコードが可能になるなどの特徴がある。主な仕様は以下の通りだ。
CPU | Core i5-2410M(2コア/4スレッド、2.13GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 4GB(4GB×1) PC3-10600 DDR3-SDRAM (最大8GB)/2スロット(空1) |
HDD | 640GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit) |
ディスプレイ | 15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | 内蔵Intel HD Graphics 3000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
その他 | USB 2.0×3、5in1メディアスロット、マイク/ライン入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、Altec Lansing社製スピーカー |
サイズ/重量 | 378×253×33~35mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg |
バッテリ駆動時間 | 約4.7時間 |
価格 | 69,800円(ASUS Shop直販) |
プロセッサはIntel Intel Core i5-2410M。2コア4スレッドで、クロック2.13GHz。Turbo Boost時、2.9GHzまで上昇する。このTurbo Boostは2.0となり、短時間であればTDPを超えたレベルまで周波数を引き上げることも可能となっている。
チップセットはIntel HM65 Express。メモリスロットは2つあり、4GB×1で1つのみを使用し、1つ空きだ。最大は8GBまで搭載可能。デュアルチャンネル作動に対応しているため、4GBの場合は2GB×2で構成した方がパフォーマンスは向上すると思われ、4GB×1ではどうなのか、後半のベンチマーク結果を見たい。
グラフィックスは先に紹介した通り、Intel HD Graphics 3000。外部出力としてHDMIとミニD-SUB15ピンを備えている。それぞれ最大解像度は最大1,920×1,080ドット。
液晶パネルはLEDバックライト式の15.6型HD解像度(1,366×768ドット)。グレア(光沢)タイプとなっている。また液晶パネル自体の機能では無いが、インストール済みの「Splendid Utility」を使えば、ノーマル/Vivid/シアター/個人設定など、ガンマや発色をコントロールできる。
OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。最近32bit版を使用するモデルがすっかり無くなって来ているが、これは全体的な傾向なのだろう。ストレージはHDDに5,400rpmの640GB。光学ドライブにDVDスーパーマルチドライブを搭載する。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは無いものの、安価なモデルでありながら、Gigabit Ethernetにも対応しているのはポイントが高い。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、5in1メディアスロット、マイク/ライン入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、そしてAltec Lansing社製スピーカーとなる。
本体サイズは378×253×33~35mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.6kg。カラーバリエーションは無くこの1モデルのみ。バッテリ駆動時間は最大4.7時間。直販のASUS Shopでの価格は69,800円だ。Intel Core i5-2410Mを搭載した15.6型2スピンドルノートPCとしてはかなり安い。
トップカバーは、ヘアライン仕上げより更に凝ったシャープな彫りがあるデザインで指紋も付きにくい。色はチョコレートブラウンと表現すればいいだろうか。パームレスト、キーボードの周囲は、ヘアライン仕上げの同色、タッチパッドはツルツルした質感で同色だ。ただ同色でも素材の質感などが全て異なるため、色は全く同じでは無い。それ以外のの部分はブラックとなっている。
15.6型の液晶パネルはグレア(光沢)タイプ。色は割りと正確に表現できる。ただ視野角はあまり広い方でなく、ジャストの位置で観ないと色が薄くなる傾向にある。
キーボードはアイソレーションタイプで、以前評価した同タイプから変わっていない。若干たわむのと、右下の[>][?][_]キーのキーピッチが他より狭くなっている点など、気になる部分も同じだ。
パームレストはヘアライン仕上げでスペースもあるため扱い易い。また同社独自の「ICE Cool Design」により、負荷のかかる作業を行なってもパームレストが熱くならないように工夫されている。実際検証中も、パームレストは冷たいままだった。同様にノイズや振動も十分許容範囲に抑えられている。
タッチパッドは段差があり、ツルツル滑るタイプだ。ボタンは2つ独立している。クリック感があり、しっかり押したことが分かる。なおタッチパッドを操作する指先と、手のひらの違いなどを認識する「パームプルーフ・テクノロジー」を採用しているため、キー入力をしている時に、誤って手のひらがタッチパッドに触れても誤作動することは無い。
Altec Lansing社製スピーカーは、音質音量共、クラスを考えると十分。中域を中心にバランスが良く、何を聴いてもマッチするサウンドだ。ただ「ASUS Sonic Focus」をONにした時は妙にいろいろな部分が強調され、個人的にはノーマルの方が好みだった。
1点気になったのは、左側面中央にある電源コネクタの位置。これは半端な位置からケーブルが伸び、邪魔になる上、見た目も悪い。やはり左右側面どちらでもいいので、後方に配置して欲しかった。
●若干影響が見られるシングルチャンネル作動OSは64bit版Windows 7 Home Premium。メモリは4GBだが、Intel HD Graphics 3000のビデオメモリと共有のため、実際は少し減ることになる。とは言え、一般的な処理では十分な容量だ。
HDDは、640GB、5,400rpm、キャッシュ8MBの「ST9640423AS」。光学ドライブは「UJ8A0ASW」、有線LANは「Atheros AR8151 PCI-E GbE Controller」が使われていた。他の部分はSandy Bridgeの基本的な構成なので特別な物は無い。
HDDのパーテーションは、システム用のC:ドライブ約149GB、データ用のD:ドライブ約425GBの2パーテーション。C:ドライブは初期起動時空き約127GB。D:ドライブは未使用だ。このクラスのノートPCでデータ用として400GB以上あれば、取り立てて困ることは無いだろう。
プリインストール済みのアプリケーションは自社製のものとして「AI Recovery Burner」、「ASUS Virtual Camera」、「eManual」、起動時のサービスなどをON/OFFし高速起動を可能にする「FastBoot」、Webカメラツール「LifeFrame」、「Power4Gear Hybrid」、Windows上でBIOS更新する「WinFlash」、「Wireless Console 3」、「ASUS Live Update」、液晶パネルカラーコントロール「ASUS Splendid Utility」、サウンドコントローラ「ASUS Sonic Focus」、顔認識によるログイン「SmartLogin」など。
他社製としては、「CyberLink Blu-ray Disc Suite」、「Trend Micro Titanium Internet Security(試用版)」、「i-フィルター5.0」などが入っている。
自社製のツールは多いものの、他社製のアプリケーションは少なく、割とスッキリしている印象を受ける。
ASUS Splendid Utility | ASUS Sonic Focus | FastBoot |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.7。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.7、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 5.7。前回ほぼ同じスペック「Lenovo Z570」のグラフィックス5.7/6.2と比較してスコアが下がっている。メモリ4GB×1のシングルチャネル作動が関係しているものと思われる。
CrystalMarkは、ALU 38914、FPU 40111、MEM 24181、HDD 9234、GDI 13503、D2D 1347、OGL 2573。こちらはMEM(34751)が1万ほど落ち込んでいる。少しでもスピードアップしたいのなら、デュアルメモリ作動にできるメモリ構成(せっかく4GB×1あるのだから4GB×2で計8GB)へ変更した方が良さそうだ。
BBenchは、「Power4Gear Hybrid」の設定を「Battery Saving」、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で19,826秒(5.5時間)。仕様上、最大約4.7時間なので、何と抜いてしまった。ノートPCの記事を書きはじめて随分経つが、バッテリのベンチマークテストでスペックを超えたのは今回が初めて。ただし、実際はバックライトの輝度を上げないと画面が見辛いので、実用上はもう少し短くなるだろう。
以上のようにK53Eは、USB 3.0やeSATAには対応していないが、第2世代のCore i5プロセッサを搭載し、2スピンドル、Gigabit Ethernet搭載などうまくまとめ、価格は69,800円。お買い得の15.6型ノートPCだといえる。
電源コネクタが左側中央にあるのが個人的には気になるものの、細かな点であり、安価なSandy Bridge搭載の2スピンドルノートPCを探している人の候補になりえる1台と言えよう。