西川和久の不定期コラム

ASUSTeK「ZENBOOK Prime UX32VD」
~フルHD/SSD+HDD/GPU搭載の最強Ultrabookが登場!



 8月21日、ASUSTeK Computerは、秋冬モデルとなるUltrabookを3機種発表、9月6日から販売を開始した。今回はその中から以前ご紹介した「ZENBOOK Prime UX31A」の姉妹機に相当するモデルが編集部から送られて来たのでご紹介したい。


●SSD+HDDそしてディスクリートGPU搭載

 ASUSTeKの秋冬モデルとして発表されたUltrabookは、11.6型ZENBOOK Primeシリーズである「UX21A」の廉価モデル「UX21A-K1128S」、15.6型の大型液晶パネルを搭載しディスクリートGPUとDVDスーパーマルチドライブを内蔵したUltrabook「S56CM」、そして今回ご紹介するZENBOOK Prime「UX32VD」の3機種だ。

 冒頭に書いたように、従来のZENBOOK Prime「UX31A」と一番の違いは、SSDからSSD+HDD、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000に加え、Optimus対応のGeForce GT 620Mを搭載したこと。システム全体で見た時、かなり影響がある部分なので、パフォーマンスが気になるところ。後半のベンチマークテストで検証したい。

 SSD搭載の「UX31A」は、アクセスが速いものの、容量が256GBとSSDとしては大きめだが、用途によっては容量不足だ。また価格も高くなるのが欠点だ。加えてIntel HD Graphics 4000は、Sandy BridgeのIntel HD Graphics 3000と比較してパワーアップしているとは言え、3D性能は控えめだった。今回の「UX32VD」は、ZENBOOKのフォルムを踏襲しながら、ストレージ容量とGPU性能を改善したモデルとなる。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS「ZENBOOK Prime UX32VD」の仕様
CPUCore i7-3517U(2コア/4スレッド、1.9GHz/
Turbo Boost 3.0GHz、キャッシュ4MB、TDP17W)
チップセットIntel HM76 Express
メモリ4GB
ストレージSSD 24GB+HDD 500GB
OSWindows 7 Home Premium(64bit)SP1
ディスプレイ13.3型液晶ディスプレイ(非光沢)、フルHD/1,920×1,080ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 4000、GeForce GT 620M(Optimus対応)、
miniVGA、HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Ethernet(USBアダプタ)、Bluetooth 4.0
そのほかUSB 3.0×3、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ
サイズ/重量325.6×223×5.5~18mm(幅×奥行き×高さ)/約1.4kg
バッテリ駆動時間最大約5.5時間
その他Office Home and Business 2010
価格119,800円

 プロセッサはIntel Core i7-3517Uで、2コア4スレッド、クロック1.9GHzでTurbo Boost時は3.0GHzまで上昇する。キャッシュは4MB、そしてTDPは17Wと、Ultrabookでは定番となっているSKUだ。チップセットはIntel HM76 Express、メモリは4GB。OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1を搭載する。

 液晶パネルは、非光沢の13.3型フルHD解像度液晶パネルを使用。多くのライバル機と比較して勝っている点で、このUltrabookの最も魅力的な部分でもある。出力はmicroVGAとHDMI。microVGAはミニD-Sub15ピン変換アダプタが付属する。またUX31AはmicroHDMIコネクタだったが、UX32VDはフルサイズのHDMIコネクタへ変更され、使い勝手が向上した。

 ネットワークは、IEEE 802.11a/b/g/n、Ethernet(USBアダプタ)、Bluetooth 4.0。USB接続のEthernetアダプタが付属するのは従来通り。このアダプタはGigabit Ethernet非対応なのが残念なところだ。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×3、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ。UX31AはUSB 3.0×2だったので、1ポート増えているのがポイントだと言えるだろう。

 サイズは325.6×223×5.5~18mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.4kg。UX31Aと比較して高さが3~18mmから5.5~18mmへと若干高く、0.1kg重くなっている。HDDを内蔵した関係もあるだろうか。しかし厚くなってしまったデメリットだけではなく、若干余裕が出来たため、標準のHDMIコネクタ、USB 3.0ポートが1つ増えると言った嬉しいメリットもある。

 バッテリ駆動時間はUX31Aの最大約8.5時間(BBenchでは4.4時間)に対して、最大約5.5時間と、少し短くなっている。ディスクリートGPUを搭載したことが影響しているかもしれない。

 ストレージ面の特徴は、SSD 24GBとHDD 500GBのハイブリッドになったことだ。SSDは一般的なドライブとしては使えず、スリープ機能やHDDのキャッシュなど、システムが使用する領域となる。この手のロジックとしてはIntel SRT(Intel Smart Response Technology)を利用しているUltrabookが多いが、UX32VDは独自のロジックが使われているらしく、Intel SRTが組み込まれていない。

 もう1つ、グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000に加え、ディスクリートGPUのGeForce GT 620Mを搭載しているのも特徴だ。Optimusに対応し、アプリケーションに応じてシームレスに切り替わる。特に3D系が速くなるので、これに関係するアプリケーションを使用するユーザーには朗報だろう。

 価格はOffice Home and Business 2010をプリインストールして119,800円。個人的にはOffice無しで価格を抑えたモデルも欲しいところだ。

トップカバーは濃いブラウンでヘアライン仕上げ、他は薄いブラン(ゴールドに近い)正面の側面にはインジケータやコネクタ類は無く鋭角な雰囲気だ底面。内部へアクセスするパネルは無い。ただし全面がネジ止めになっているので、外せば開きそうだ
左側面。USB 3.0×1、SDカードスロットを装備するキーボードは4段階のキーボードバックライト付きのアイソレーションタイプ。右上近辺にある小さいLEDがHDDアクセスランプ右側面。電源入力、USB 3.0×2、HDMI出力、miniVGA出力、ヘッドフォン出力、パワーLED
キーピッチは実測で約19mmACアダプタは約7.4×7.4×2.8mm/238gと小型。プラグの部分は取外し可能になっている重量は実測で1,488g
充電ステータスLED。充電時オレンジに、充電完了時グリーンに点灯するUSB→Ethernet変換アダプタ、ミニD-Sub15ピン変換アダプタ。Ethernet変換アダプタは10BASE-T/100BASE-TX対応付属のケースなど。本体用とUSB→Ethernet変換アダプタ/ミニD-Sub15ピン変換アダプタ用のケース

 天板はヘアライン仕上げ濃いブラウン、その他の部分は裏も含めライトブラウン(光によってはゴールドっぽくも見える)。質感も良くUltrabookのイメージそのもの。UX31Aと比較して最薄部が約2.5mm厚くなっているものの、比較しない限り、全く分からないレベルだろう。バッテリは本体内に内蔵されており、UX31A同様交換できない。

 左側面にはUSB 3.0×1、SDカードスロットを装備し、右側側面には電源入力、USB 3.0×2、HDMI出力、microVGA出力、ヘッドフォン出力を備える。2.5mm厚くなった分、余裕ができ、USB 3.0は3ポート、HDMIコネクタは標準サイズに変更された。個人的には利便性を考えるとこの程度の厚みの違いならUX32VDの方が好みだ。

 付属のACアダプタは約7.4×7.4×2.8mm/238g。UX31A付属のが約60×60×30mm/182gだったので少し大きく重くなっている。プラグの部分が交換可能になっているのは同じだ。

 13.3型フルHD解像度のIPS液晶パネルは、視野角が広く、発色も問題無し、最大輝度時は十分明るく、最小輝度時でも十分に見る事ができる。加えて非光沢なので、映り込みがなく快適だ。

 キーボードは触った範囲でUX31Aと同じ。アイソレーションタイプで、(ほぼ)たわみも無く、フワッとした感触だがキータッチも良い。4段階のキーボードバックライトを搭載し、暗めの場所でも操作可能。

 パームレストは筐体のサイズに余裕があるため十分広く、またほとんど熱も感じない。タッチパッドは、物理的なボタンは無く先端がボタンになるタイプだ。操作感などはUX31Aと同じで良好だ。

 「Bang & Olufsen ICEpower」監修のサウンドは、上品な音質でクオリティは高い。UX31Aでは「ただ最大音量が若干低め」と書いたが、UX32VDでは厚みがあるためか十分な音量となっている。先のUSB 3.0ポート1つ追加、標準HDMIコネクタなど、SSD+HDDやディスクリートGPU搭載という主な変更点に加え、内部では細かい調整がされているようだ。

●主な性能はほぼ変わらず3Dが高速に

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。ディスクリートGPU搭載とは言え、Optimusで自動的に内蔵グラフィックスと切替わる方式なので、できればメモリは8GB欲しいところだ。

 少し面白い構成になっているのがストレージだ。先に書いたようにSSDはHDDのキャッシュとして使われ、ユーザーからはドライブとしてアクセスできない。ただIntel SRTの場合は、RAIDが構成されていて仮想ドライブとして見えるのだが、このUX32VDは、HDD「HTS545050A7E380」(500GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)、SSD「SSD i100 24GB」と、物理的ドライブとして表示され、ディスク0と1でシステムから認識されている。

 パーティション自体はHDD側のみ、C:ドライブ約186.30GB、D:ドライブ約254.14GBの2パーティション。C:ドライブ初期起動時の空きは156GBだ。

 Wi-FiとBluetooth関係についてはIntel製のモジュールが使われ、その他に関してはIntel HM76 Expressを採用するUltrabookとしては一般的な構成となる。

起動時のデスクトップ。右側に同社お馴染みのInstantONとPower4Gear Hybridのウィジェットがあるデバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは「HTS545050A7E380」(500GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)、SSDは「SSD i100 24GB」ストレージのパーティション。C:ドライブ約186.30GB、D:ドライブ約254.14GBの2パーティション。SSDはスリープ機能やキャッシュ用でユーザーからは使えない

 プリインストールのソフトウェアは、「ASUS Splendid Utility」、「LifeFrame3」、「ASUS Smart Gesture」、「ASUS Tutor」、「ASUS FaceLogon」、「InstantOn for NB」、「ASUS Secure Delete」、「ASUS Instant Connect」、「ASUS Power4Gear Hybrid」、「ASUS USB Chager Plus」、「ASUS AI Recoverey」、「ASUS Live Update」、「ASUS WebStorage」と、同社お馴染みのユーティリティ群、そして「Microsoft Office Home and Business 2010」、「ウィルスバスター2012クラウド」などとなる。

 最近出荷されているUX31Aでは同じかも知れないが、同社のユーティリティ系としては、「ASUS Smart Gesture」と「ASUS Instant Connect」が追加されていた。

ASUS Instant ConnectNVIDIAコントロールパネルASUS InstantOn

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとPCMark 7、BBenchの結果を見たい(カッコ内はUX31Aの値/違う部分のみ掲載)。Optimusの設定に関しては、Windows エクスペリエンス インデックスとPCMARK7、CrystalMarkは、GeForce GT 620Mへ固定。BBenchに関してはIntel HD Graphics 4000へ固定している。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 6.3(6.5)、ゲーム用グラフィックス 6.3(6.5)、プライマリハードディスク 5.9(7.5)。グラフィックに関しては何故かどちらも-0.2ポイント下がっている。ストレージはSSD vs HDD(SSDキャッシュ)なので当然の結果。Intel SRTも含め、SSDキャッシュに関してはあまりスコアに影響しないようだ。

 PCMark 7は2455 PCMarks。参考までにCrystalMarkは(D2Dはブラックアウト)、ALU 44419(44149)、FPU 42124(42206)、MEM 42670(42597)、HDD 11441(27958)、GDI 15284(15386)、D2D n/a(2319)、OGL 27519(7401)。ALUからMEMまでとGDIはほぼ同じ、HDDはデバイスの違い、そしてOGLに関しては桁違いに速くなっている。しっかりGeForce GT 620Mの効果が現れる結果となった。

 BBenchは、Battery Saving、バックライト最小(キーボード込み)、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残5%で12,745秒/約3.5時間。UX31Aが約4.4時間だったので、思ったほど低下していない。とは言え、バッテリ交換が出来ないので、丸1日外での使用は難しいだろう。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 5.9。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 6.3、ゲーム用グラフィックス 6.3、プライマリハードディスク 5.9PCMark 7の結果。2455 PCMarksBBench。Battery Saving、バックライト最小(キーボード込み)、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残5%で12,745秒/約3.5時間

 以上のようにASUS「ZENBOOK Prime UX32VD」は、ストレージがSSD+HDDのハイブリッド、ディスクリートGPU搭載と、UX31Aとは大きく仕様が異なるだけでなく、USB 3.0が3ポート、HDMIコネクタが標準サイズなど、細部も変更され、総じて使いやすいUltrabookへ仕上がっている。

 バッテリ駆動時間がBBench比で約1時間短く3.5時間、最薄部が約+2.5mm/重量約+0.1kgと、気持ちモビリティが低下しているものの、一般的なUltrabookにはない高いグラフィックス性能や、総合的な使いやすさなどで魅力を感じている人にお勧めしたい製品と言えるだろう。