西川和久の不定期コラム

日本HP「ENVY 23-1090jp」
~23型フルHDで地デジ対応の一体型PC



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は7月12日、一体型PCの2012年夏モデルを発表し、直販モデルは同日より、量販店モデルは7月27日より販売を開始した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。

●ちょっとお洒落な23型一体型PC

 日本HP「ENVY 23」は、写真から分かるように一体型PCであり、本体を両サイドからアームで支え、ベースと本体の間に空間がある独自のデザインとなっている。キーボードとマウスは無線式で、少なくとも本体の手前はケーブルレスでスッキリする。

 冒頭に書いたように、量販店用と直販用でBTOに対応したものがあり、量販店用にはプロセッサなどの違いで2モデル存在する。また直販用は東京生産カスタマイズ対応だ。

 今回編集部から送られて来たのは量販店用の上位モデル。主な仕様は以下の通り。

日本HP「ENVY 23-1090jp」の仕様
CPUIntel Core i5-3470S(4コア/4スレッド、2.9GHz/Turbo Boost 3.6GHz、キャッシュ6MB)
チップセットIntel H61 Express
メモリ8GB(PC3-10600/DDR3-1333)、SO-DIMMスロット×2(空き0)、最大16GB
HDD2TB
光学ドライブBDXLドライブ
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ23型(光沢)、フルHD/1,920×1,080ドット
グラフィックスRadeon HD 7450A(1GB)
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
その他USB 2.0×4、USB 3.0×2、6in1メディアスロット、音声入出力、100万画素Webカメラ、15倍W録画対応地上・BS・110度CS対応ダブルチューナ、アンテナ入力端子×2、B-CASカードスロット×1
付属品ワイヤレスキーボード、マウス、AVリモコン
サイズ580×457×215mm(幅×高さ×奥行き、傾き0度時)
重量約10.8kg
価格15万円前後

 プロセッサはIntel Core i5-3470S。4コアだが4スレッド、Hyper-Threadingには対応していない。クロックは2.9GHzでTurbo Boost時3.6GHzまで上昇する。チップセットはこの時期なのに何故かIntel H61 Expressを採用。7型番でない理由はコストなのか開発時期なのかは不明だ。メモリは8GB、OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。ストレージは2TBのHDD。光学ドライブはBDXLドライブを搭載する。

 液晶パネルは光沢の23型で解像度はフルHD/1,920×1,080ドット。最大傾斜時25度まで傾けられる。別モデルではHDMI入力ありのものも存在するが、本機では入出力共にポートは無い。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 2500を使わず、ATI Radeon HD 7450A(1GB)を搭載。同社のサイトによるとこのGPUは、一体型PC用のソリューションで、「HD 7450A」(160SP、DDR2/DDR3)、「HD 7470A」(400SP、DDR3)、「HD 7650A」(480SP、DDR3)、「HD 7670A」(480SP、GDDR5)と、4タイプある。今回搭載している「HD 7450A」はエントリーモデルの位置付けだ。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n、そしてBluetooth 4.0にも対応する。

 その他のインターフェイスは、USB 2.0×4、USB 3.0×2、6in1メディアスロット、音声入出力、100万画素Webカメラ、そして、15倍W録画対応地上・BS・110度CS対応ダブルチューナ(アンテナ入力端子×2、B-CASカードスロット×1)も内蔵している。後付でUSBタイプの地デジチューナも接続可能であるが、この手のPCには最初から入っている方が扱いやすい。また付属品として、無線式のキーボード&マウス、リモコン・赤外線ポートなども同梱される。

 サイズは傾きが0度の時、580×457×215mm(幅×高さ×奥行き)、重量約10.8kgと、23型の一体型PCなので、それほど大きくて重いわけでも無い。

 価格は15万円前後。なお、量販店向けの下位モデル「HP ENVY 23-1070jp」は、Pentium G640、メモリ4GB、HDD 1TB、DVDスーパーマルチドライブ、23型フルHD液晶、3波チューナで12万円前後の見込みとなっている。直販の「HP ENVY 23-1080jp/CT」は、最小構成で59,850円から。BTOでグラフィックス、メモリ、ストレージ、3波チューナや無線LANの有無、OSなどを選択可能だ。

正面。ベースから出ている2本のパイプで本体が支えられているちょっと変わったデザインだ左側面。6in1メディアスロット、USB3.0×2、音声入力、音声出力右側面。DVDスーパーマルチドライブ
背面。右下にコネクタ類が集中している。中央のパネルは外すとB-CASカードが入るスロットコネクタ部周辺。アンテナ入力×2、電源入力、Ethernet、USB 2.0×4、サウンドポートコネクタ部周辺/B-CAS。中央のパネルを引っ張って外すと(ネジ類は無い)、B-CASカードスロットが現れる
本体上部。電源スイッチACアダプタ。175×65×40mmと結構大きいその他付属品。無線式のキーボード&マウス、リモコン・赤外線ポートなど

 一見、同社の液晶ディスプレイにデザインが似ており、フチがブラック、全面にフラットガラスパネル、同社のロゴとアクセントのライン、本体を支えるアームはシルバー、ベースもシルバーと、なかなかクールなデザインでお洒落。最大25度パネルを傾けることが出来、視線をジャストに合わすことが可能だ。

 また左右のアームで本体を支えているので、ベースとの間にそれなりの空間ができる。ただ確かにカッコイイのだが、写真からも分かるように、裏へ電源ユニットやケーブルを配置すると表から丸見えなので、逆に気になってしまう部分でもある。

 B-CASカードは、裏中央下側のパネルを外せばスロットが現れる。数個のツメだけで止まっているため、手で少し引っ張れば外すことが出来る。付属の無線キーボードとマウスは、しっかり作られており特に不満点は無い。

 左サイドは6in1メディアスロット、USB 3.0×2、音声入力、音声出力。右サイドは光学ドライブのみ。裏右側にアンテナ入力×2、電源入力、GbE、USB 2.0×4、サウンドポートを配置。USBポートの2.0か3.0かの使い分けは、主に転送速度が速い3.0は外部ストレージ用で据置型となるので、できれば裏にあった方が使いやすい。

 液晶パネルは同時にXPS 14/15の液晶パネルを見てしまったこともあり、暗めでコントラストも低めに見えてしまうが、このクラスとしては一般的だ。視野角はあまり広くなく、正面と斜めから撮った写真からもわかるように、角度が変わっても見えるものの、発色が変わってしまう。このサイズ(以上)であればIPSパネルが欲しいところか。

 サウンドはBeats Audioに対応し、最大出力も十分ある。バランスが若干高域寄りだが、イコライザで十分補正可能な範囲だ。ノイズや振動、発熱に関しては試した範囲では特に問題は無かった。

●コンテンツを楽しむには十分なパワー

 OSはWindows 7 Home Premium SP1。ディスクリートGPUにAMD Radeon HD 7450Aを搭載し、メモリも8GBあるので動きに余裕がある。初期起動時のデスクトップは、左側に若干のショートカットが配置され、加えて解像度がフルHDと高いこともあり、割とあっさりした印象を受ける。ショートカットの1つ「StationTV X」は、地デジ視聴/録再生ソフトウェアだ。結構一般的なものなので特に説明の必要は無いだろう。

 HDDは2TB/7,200rpm/キャッシュ64MBの「HDS723020BLA642」。実質C:ドライブのみの1パーティションで約1.8TB割当てられ空き1.77TB。BDドライブは「hp BD DRV BD-5841H5」が使われている。Wi-FiモジュールはBroadcom製、Gigabit EthernetはRealtek製だ。

起動時のデスクトップ。左側に若干のショートカット。解像度が高いこともあり、割とあっさりして見えるデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは2TB/7200rpm/cache 64MBの「HDS723020BLA642」。BDドライブは「hp BD DRV BD-5841H5」HDDのパーティション。実質C:ドライブのみの1パーティションで約1.8TB割当てられている

 インストール済のソフトウェアは、「Cyberlink YouCam」、「CyberLink Media Suite Premium」、「PowerDirector」、「CyberLink PowerDVD」、「Microsoft Office 2010」、「Station TV X」、「Norton Internet Security」、「Skype」など。同社のユーティリティ系として、「HP My Display」、「HP Magic Canvas」、「HP Update」、「HP Support Assistant」……そして「Beats Audio」にも対応している。

 「HP Magic Canvas」は、Mac OS Xの「Spaces」のような動きをする仮想デスクトップ機能で、加えてウィジェットなどが貼り付けられる。そう言う意味では、Androidのホーム画面に近いかも知れない。ホームユースではなかなか面白そうな機能だ。

Beats AudioHP My DisplayHP Magic Canvas
HP UpdateHP Support AssistantStationTV X

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.0。プロセッサ 7.5、メモリ 7.8、グラフィックス 5.0、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 5.9。今時のPCとしては激速と言うわけでは無いものの、このクラスとしては十分以上。特に内蔵Intel HD Graphics 2500を使わず、ディスクリートGPUにしていることでグラフィックス関連は前者と比較して向上している。

 CrystalMarkは、ALU 72857、FPU 59650、MEM 58231、HDD 15538、GDI 17241、D2D 2951、OGL 12074。Core i5搭載PCとしては少しパフォーマンスが高めだ。HDDの1.5万を超えているのでSSDやIntel SRTで構成したRAIDには劣るがそれなりに使え、2TB近い大容量なので、(画質モードにもよるが)かなりの量の録画ができる。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.0。プロセッサ 7.5、メモリ 7.8、グラフィックス 5.0、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 5.9CrystalMarkは、ALU 72857、FPU 59650、MEM 58231、HDD 15538、GDI 17241、D2D 2951、OGL 12074

 以上のように日本HP「ENVY 23-1090jp」は、23型のフルHD液晶パネルを搭載し、15倍W録画対応地上・BS・110度CS対応ダブルチューナを内蔵した一体型PCだ。ルックスも独特の雰囲気を持ちクール。加えてBeats Audioにも対応しているのでクリアで迫力のあるサウンドを楽しめる。

 直販と量販店モデルで価格や構成が違うものの、コンテンツの再生が主であればあまりスペックを欲張る必要も無く、値段を抑えることも可能だ。全部入りの一体型PCを探しているユーザーの候補になりえる1台と言えよう。