■西川和久の不定期コラム■
富士通は5月9日にLIFEBOOKの夏モデルを一斉に発表、5月17日から順次発売した。今回はその中から最上位モデルに相当する「FMV LIFEBOOK AH78/HA」が編集部から送られて来たので試用レポートをお届けする。国産メーカーらしく、一味違うノートPCに仕上がっている。
今回発表された15.6型ノートPC「LIFEBOOK AH」シリーズは、「AH78/HA」、「AH77/H」、「AH56/H」、「AH54/H」、「AH45/H」、「AH42/H」の6モデル。従来のエントリーモデルに相当する「AH52/GA」も継続される。
それぞれプロセッサ、チップセット、液晶パネルの解像度、ストレージのサイズや種類などが異なる。また、「AH54/H」まではIvy Bridge、「AH45/H」、「AH42/H」そして従来機の「AH52/GA」はSandy Bridgeだ。
今回編集部から届いたのは「AH78/HA」。これまでノートPCハイエンドの位置付けだった17.3型の「LIFEBOOK NH」シリーズが終息したこともあり、その代替として、フルHD液晶やワイヤレスTVユニットなどの構成で追加された、AHシリーズ最上位モデルだ。主な仕様は以下の通り。
富士通「FMV LIFEBOOK AH78/HA」の仕様 | |
CPU | Intel Core i7-3610QM(4コア/8スレッド、2.3GHz/TB3.3GHz、キャッシュ6MB、TDP45W) |
チップセット | Intel HM76 Express |
メモリ | 8GB/DDR3 SDRAM PC3-12800(2スロット/空き0、最大16GB) |
HDD | 1TB(5,400rpm) |
光学ドライブ | BDXLドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 4000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n |
その他 | USB 3.0×3(内1つはPowered)、USB 2.0×2、ダイレクト・メモリースロット、音声入出力、HD Webカメラ、ナノイー発生ユニット、ワイヤレスTV付属 |
サイズ/重量 | 380×258.5×28.5~33.0mm(幅×奥行き×高さ)/約2.9kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約6.1時間 |
実売価格 | 20万円強 |
プロセッサはIntel Core i7-3610QM。4コア8スレッドでクロック2.3GHz。Turbo Boost時3.3GHzまで上昇する。キャッシュは6MB。TDPは45Wだ。チップセットはIntel HM76 Express。メモリスロットは2つあり、4GB×2の計8GBを搭載済だ。最大容量は8GB×2の16GBまで。OSは64bit版Windows 7 Home Premium。HDDは5,400rpmの1TB、光学ドライブはBDXLドライブを内蔵する。
グラフィックスはIntel HD Graphics 4000。液晶パネルはフルHD解像度の15.6型だ。出力はHDMI出力とミニD-Sub15ピンの2系統に対応。またワイヤレス接続の外付けTVユニットも付属し、フルHD画質で長時間15倍録画が可能となっている。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n。これだけのハイエンドモデルにも関わらず何故かBluetoothは非対応だが、特に困ることは無いだろう。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×3(内1つはPowered)、USB 2.0×2、ダイレクト・メモリースロット、音声入出力、HD Webカメラ。USB 3.0は3ポートあり、内1つはPoweredで使いやすそうだ。そして面白い試みとして、ナノイー発生ユニットを搭載している。確かに顔から数十cm以内にこのユニットがあるため効果も高そう。筆者は花粉症ではないので、関係無いものの、春先にこれがあると助かる人も多いのではないだろうか。
サイズは380×258.5×28.5~33.0mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.9kgと、15.6型の2スピンドルノートPCとしては少し大柄で重めだ。バッテリ駆動時間は最大6.1時間。オープンプライスで店頭予想価格は20万円強。海外勢の同クラスと比較すると高めだが、その分、先に上げた日本固有のハードウェア対応や手厚いサポートなどが期待できる。
なお、TVチューナ無し、HD解像度の液晶パネルを搭載、その他のスペックは同じ「FMV LIFEBOOK AH77/H」は、実売価格18万円強となっている。
トップカバーは光沢のブラック(シャイニーブラック)に細かいドット模様が入っている。光沢と言うこともあり、指紋が付きやすい上、ホコリを吸着しやすく、材質が柔らかいのか、細かいキズも付きやすい。丁寧に扱った方が良さそうな雰囲気だ。ちなみに、キーボードに対して180度になるまで倒すことも可能だ。
全体的には光沢のブラックと非光沢のブラックが部分部分で使い分けられ落ち着いたデザインになっている。左サイドには、ロックポート、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0×3。USB 3.0に関しては3つの内1つがPowered。右サイドは、電源入力、USB 2.0×1、BDXLドライブ。そして背面にもUSB 2.0が1つある。裏は小さいパネル2つが各々ネジ1本で外れ、HDDとメモリにアクセスでき、メンテナンスは容易だ。
液晶パネルは十分明るく鮮やかでコントラストも高い。後述する「画面設定ユーティリティ」で、クリアモード/ノーマルモード/ダイナミックモードの3タイプに動画の画質を調整することも可能だ。またIPSパネルでは無いものの、視野角は上下左右共にかなり広く、余程斜めから見ない限り映りの変化は気にならない範囲に収まる。
キーボードはアイソレーションタイプの10キー付き。キートップの周囲は赤いラインで囲まれている。この部分はLEDなどが仕込まれ光っているわけでは無いものの、光の具合によっては光って見え、ちょっとしたアクセントとなる。たわみも無く、しっかりとした感じで特に不満の無いキーボードだ。
パームレストは15.6型と言うこともあり、十分なスペースを確保。四角い「フラットポイント」(表面はザラザラしている)と丸い「スクロールパッド」(表面はツルツルしている)にタッチパッドが分かれているのが印象的だ。ボタンは物理的に2つあるタイプ。
熱や振動、ノイズに関しては十分許容範囲で、操作中に気になることは無い。サウンドは、スピーカーを斜めに配置しているため、直接耳に届き易く、最大出力も十分。さらに「DTS Ultra PC II Plus」によって臨場感のある再生となる。ただし、音質自体は若干こもった感じで抜けや透明感がいま一歩だろうか。
●Core i7-3610QMのパワーに独自機能をプラスOSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1を搭載。グラフィックスがメインメモリ共有型のIntel HD Graphics 4000だが、メモリを標準で8GB搭載しているため余裕がある。
デスクトップは同社固有のシングルクリックで起動する設定になっている。画面中央上にあるのは「F-Launcher」。左側のショートカットも含め全体的に賑やかな設定だ。
1TBのHDDは「WDC WD10JPVT-16A1YT0」。回転数5,400rpmで、SSDや7,200rpmのストレージより転送速度は劣るものの、容量を優先した形だろう。標準ではC:ドライブとD:ドライブの2パーティション構成で455.6GBずつ割当てられている。ただし、初期起動時、この割合を任意に設定することが可能だ。BDXLドライブは「MATSHITA BD-MLT UJ260」を搭載。
プリインストールされているソフトウェアは、Corel Digital Studio for FUJITSU、Corel WinDVD、Cyberlink YouCam、NetworkPlayer/サーバー、e解説 Office 2010教室、うれしレシピ、Sense YOU Technology設定、ナイノー ユーティリティ、@メニュー、マイフォトミュージアム、リモコンマネージャー、クイックスタート設定、ワンタッチボタン設定、お手入れナビ、パソコン準備ばっちりガイド、富士通モビリティセンター拡張、スクリーンセーバー for FUJITSU PC、節電ナビ、F-Launcher、電子辞書、テレビ出力ユーティリティ、サポートナビ、電源オフUSB充電ユーティリティ、バッテリユーティリティ、ピークシフトユーティリティ、F-LINK、省電力ユーティリティ、らくらく手書き入力、アップデートナビ、ウォーキング日記、Microsoft Office 2010、DigitalTVbox、PIXELA Digital MediaServer、Roxio Creator LJ、FJ Camera、Norton Internet Security、DigiBookBrowser、いつもNAVI PC、筆ぐるめ、PC乗換ガイド、センシング統合ユーティリティ……など(コントロールパネル/プログラムと機能から抜粋)。
書き出すのも大変なほどの量となる。特に~ナビや~ユーティリティと名の付くものが多く、ビギナーを意識したソフトウェア構成と言えよう。
特徴的なソフトウェアとして「Sense YOU Technology」があげられる。この機能は人の顔を検出し、「“おまかせポーズ”機能により、コンテンツ再生中にPCの前を離れると一旦停止、戻ると自動的に再生開始」、「“休憩おすすめタイマー”機能で、長時間のPCの使用を知らせる」、「PCから離れると画面OFF、戻ると画面ON」などの機能を持つ。
この「Sense YOU Technology」と「ナイノー ユーティリティ」に関しては、工場出荷時はOFFになっているので、使用する場合は設定が必要となる。
3波対応のワイヤレスTVユニットと無線LAN経由でテレビが観られる「DigitalTVbox」の設定は非常に簡単で、8ステップあるものの、ユニット側がB-CASカード挿入、アンテナ接続、電源ONの状態であれば自動的に検出し、基本的に[次に]を押して行けばOK。チャンネルの切替もそこそこ早く、快適に操作することが可能だ。
ナノイー ユーティリティ | Sense YOU Technology 設定 | DigitalTVbox/番組表 |
DTS Ultra PC Ⅱ Plus | 画面設定ユーティリティ | 節電ナビ |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.6、メモリ 7.8、グラフィックス 6.5、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9。プライマリハードディスク以外はさすがに4コア/8スレッドのCore i7と言ったところ。
CrystalMarkは、ALU 66696、FPU 55719、MEM 58128、HDD 13141、GDI 17080、D2D 2550、OGL 7235。こちらもHDD以外はかなりの高スコアだ。これだけのパワーがあれば、コンテンツの再生だけでなく、動画編集などクリエイティブな作業も十分にこなせる。
BBenchは、Battery Savingモード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残11%で12,683秒/3.5時間。初期設定で5%までとなっているノートPCが多い中、11%でOFFとなり、より安全性を保っている。最大約6.1時間には全く届いていないが用途的には十分だろう。
なお、作動モードは、OS標準のバランス/省電力に加え、独自の省電力ユーティリティにより、オーディオ/無線LAN/有線LAN/ディスプレイ/CPUパフォーマンスの細かい設定が可能になっている。今回はオーディオ:ミュート/無線LAN:有効/有線LAN:無効/ディスプレイ:明るさ1/12(最小)/CPUパフォーマンス:低パフォーマンスで測定した結果だ。
以上のように、富士通「LIFEBOOK AH78」をみてきたが、スペックも申し分ない上、ナノイー発生ユニットを内蔵したり、外部にワイヤレスTVユニットを設置できたり、顔を検出して自動で手助けしする「Sense YOU Technology」を搭載したりと、同社ならではの工夫が盛り込まれている。国産そして全てメーカーお任せで安心なスタンダードノートPCを探しているユーザーの候補になりうる1台と言えよう。