西川和久の不定期コラム

シャープ「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」
~Android 3.2.1とモバイルWiMAXを搭載した7型タブレット



 11月16日シャープ株式会社は、7型Androidタブレット「GALAPAGOS」にモバイルWiMAXを搭載した「EB-A71GJ-B」発表した。12月9日の発売にさきがけ、実機が編集部より送られてきたので試用レポートをお届けする。


●ハードウェア編

 今回試用した「EB-A71GJ-B」は、もともと8月にイー・アクセスから発売している「GALAPAGOS A01SH」にモバイルWiMAXを搭載したモデルだ。プロセッサはデュアルコアのNVIDIA Tegra2。以前レポートしたモトローラXOOMと同じで、当時のレポートを見ると、動き的には初代iPadよりは速いものの、iPad 2には劣ると言う雰囲気。この「EB-A71GJ-B」も作動速度自体はあまり差が無いものと予想される。

 メモリは1GB、ストレージは8GB。ストレージの容量は今時のタブレットとしては少ないが、外部ストレージとしてmicroSDメモリーカードにも対応しているので、うまく運用すれば問題無いだろう。最大32GBまでサポートしている。

 液晶パネルは、7型で解像度は1,024×600ドット。iPadは9.7型/1,024×768ドット、モトローラXOOMは10.1型/1,280×800ドット。解像度的にはiPadに近いものの、短辺が168ドット少なくなっている。パネルサイズに関しては、大きくてものが良いとは一概に言えず、小さいと持ち運びしやすく、大きいと写真や動画などの表示に迫力が出る。今回は電子書籍ビューア的な要素が高いため、前者を優先した形だ。

 その他、主な仕様をWi-FiモデルのiPad 2と比較すると以下の通り。

【表】iPad 2(Wi-Fiモデル)との仕様比較

iPad 2GALAPAGOS
液晶パネル9.7型/1,024×768ドット7型/1,024×600ドット
プロセッサ1GHz デュアルコア Apple A5NVIDIA Tegra2 モバイルプロセッサ(1GHz)
メモリ512MB1GB
本体ストレージ16/32/64GB8GB
外部ストレージ無しmicroSDメモリーカード(最大32GB)
OSiOSAndroid 3.2.1
カメラ640×480ドット(VGA)/720p200万/500万画素、AF、LEDフラッシュ
Wi-FiIEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11b/g/n
Bluetooth2.1+EDR
ネットワークN/AモバイルWiMAX本体内蔵/テザリング対応
外部コネクタDockコネクタ、ヘッドフォン出力microUSB×1、microHDMI出力×1、SIMスロット、ヘッドフォン出力、電源コネクタ
サイズ(幅×奥行き×高さ)241.2×185.7×8.8mm195×122×12.6mm
重量601g約396g
価格44,800円(16GB)/52,800円(32GB)/60,800円(64GB)59,800円前後

 サイズは、7型と言うこともあり、195×122×12.6mm(幅×奥行き×高さ)と、タブレット端末にしてはかなり小さい。重量も400gを切っている。試したところジーンズのポケットに半分はみ出すものの、何とか収まった。重量約396gなので、ポケットの形が崩れるほど重いわけでもない。

 サイズ以外で違うのは、リアのAF/LEDフラッシュ付き500万画素、フロント200万画素のカメラだ。iPad 2と比較してスペック的に大きく上回っている。以前、(10型前後の)タブレットで写真を撮るのはカッコ悪いと書いたが、7型のサイズになるとあまり目立たなくなるので、また少し状況が変わってくる。

 外部出力に関しては、microUSBとmicroHDMI出力を搭載。別途特殊なコネクタやドックを用意しなくても、広く市販されている汎用品で接続可能なのはポイントが高い。実際、microHDMI→HDMIケーブルを使って液晶テレビに接続したが、反応も良く、なかなか綺麗で映像そしてサウンドも大迫力。動画を大画面で観たいときなどに有効な手段だ。モトローラXOOMの時にレポートした、角のドットが欠けるような不都合も無かった。

 ネットワーク関連は、無線LANはIEEE 802.11b/g/n、Bluetoothは2.1+EDRに対応する。そしてモバイルWiMAXを内蔵し、テザリングもOK。このGARAPAGOSを無線ルーター替りに使うことが出来る。最大7台まで接続可能だ。

 モバイルWiMAXを自宅で試したところ、画面キャプチャにあるように、下り約9.7Mbps、上り約2.7Mbps。快適にWebなどを見ることができる。ただ少し気になったのは、YouTubeでHD解像度の動画を再生すると、結構頻繁にバッファリング中となり途切れることが多かったこと。場所を変えるとまた違うのかも知れないが、今回は試用期間が短かったこともあり試していない。

 OSはタブレット用のAndroid 3.2.1。スマートフォン用のAndroid 2.x系とは異なり、2ペイン表示など広い画面を有効に使えるバージョンだ。最近タブレット用/3.x系とスマートフォン用/2.x系を統合した、Android 4.0がリリースされたが、この対応については前向きに検討しているとのことなので、時期は不明だが期待出来そうだ。

 バッテリ容量は約1,620mAh。資料によると駆動時間は書籍閲覧時約7.5時間、動画再生時約6時間、サスペンド時約10日。この値にネットワーク接続は含まれていないようなので、モバイルWiMAXをONにしてインターネットへ接続し、いろいろ遊んでいると、かなり早いタイミングでバッテリの残りが50%前後になる。バッテリ切れになるまで試していないものの、数時間程度の雰囲気だ。少し前のUltrabookの記事でも書いたが、この手の機器は、パネルサイズ=筐体のサイズとバッテリ容量が正比例する関係で、小型の筐体の方が不利になる。またバッテリ交換も出来ないため、使い方によっては駆動時間が気になることも考えられる。

 店頭予想価格は、一括購入と「WiMAXまとめてプラン」と呼ばれる回線契約のセット販売とで違うが、前者で59,800円前後。3GタイプのiPad 2は16GBモデルで56,640円。少し「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」の方が高い。ストレージが半分でパネルサイズは小さいものの、microUSBとmicroHDMIがあるため、「Camera Connection Kit」(2,980円)と「Digital AVアダプタ」(3,980円)などが不要、そして3GではなくモバイルWiMAX搭載と言うこともあり、総じて高価と言うわけではないだろう。

左側中央にフロントカメラ。Android 3.x系なので、[戻る][ホーム]などの物理的なボタンは無い背面。右側にリアカメラとLEDフラッシュ。持ちやすいように、左右に少し凹凸がある上部側面(リアカメラ側)。スピーカー、電源スイッチ、ボリューム、ヘッドフォンコネクタ
下部側面。microSDカードスロット、microUSB、microHDIM、電源コネクタ、スピーカーiPad 2との比較。7型:9.7型ではは、かなりサイズが違うことがわかるiPhone 4との比較と付属のACアダプタ。フットプリントで約4分の1のサイズだ。付属のACアダプタもそれなりに小さい
本体の重量は実測で396gACアダプタの重量は実測で124g。本体と一緒に持ち歩くと500gを超えるモバイルWiMAXの実測値(筆者自宅)。下り約9.7Mbps、上り約2.7Mbps。かなり速く、快適にWebなどを見ることができる

 7型のサイズだが、扉の写真から分かるように、筆者が片手で持つにはギリギリの大きさだ。と言っても両手で持つには小さく、個人的には結構半端なサイズのような気がする。加えて400gを切っているとは言え片手で長時間持つにはやはり重たい。厚みはiPad 2の8.8mmに対して12.6mmと厚く、例えばこれがもっと薄いとまた違った印象を受けるかも知れない。この点についてはもう少し頑張って欲しいところか。

 デザイン的には、光沢の黒と非光沢の黒をうまく使い分け、モトローラXOOMのようなボッテリ感はなく、飽きのこないタイプだ。ただし、液晶パネルのフチがもう少し狭くなるとよりシャープに見えるだろうか。

 7型の液晶パネルは、IPS式では無いため、視野角はiPad 2に劣るが、明るくコントラストも高く、発色も良い。特に黒がしまるので、映像などがより綺麗に見える。タッチパネルの感度も良好でスムーズな操作が可能だ。

 作動速度は冒頭に書いたように、iPad 2と比較すると若干遅めだ。とは言え、必要十分の作動で、特にイライラすることも無く、普通に使うことができる。

 意外だったのは短辺の側面、左右に付いているスピーカー。超小型なので低音が出ず、ミッドレンジ中心のシャリシャリした音になるのは仕方ないとして、最大出力は十分あり、更にステレオ感が結構ある。考えて見ればiPadはもともとモノラル。モトローラXOOMは、裏に付いていることもあり、音は左右に広がらない。GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dも同タイプで同じ傾向だった。スピーカーは左右側面に付いているタイプが良さそうだ。

●ソフトウェア編

 OSはAndroid 3.2.1。タブレット用の3.x系としては最新版だ。先日リリースされたAndroid 4.0でないのは残念だが、現時点でAdobe Flash Playerが未対応など、環境が整っていない部分もあり、現時点ではベターな選択と言える。

 5面あるホーム画面はかなりシンプル。起動時に表示する3面目が主にカスタマイズされ、中でも「GALAPAGOS App for Tablet Widget」と「WiMAX/テザリング/Wi-Fi切替Widget」が特徴的だ。この2つに「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」の全てが凝縮していると言っても過言ではないだろう。

 「GALAPAGOS App for Tablet」については後述するとして、「WiMAX/テザリング/Wi-Fi切替」は非常に扱いやすい。[WiMAX]をタップするとWiMAX ON/OFF、[Wi-Fi]をタップするとWi-Fi ON/OFF。そしてこの両者がどの状態でも[テザリング]をタップするとテザリングのON/OFFとなる。WiMAXとWi-Fiを同時にONするとWi-Fiを優先する。バッテリのことを考えると両方ONは不利だが、Wi-Fiが有効な環境ではWi-Fiを、Wi-Fiが使えない場所ではWiMAXを……と、意識せず自動的に切替えてシームレスに運用可能。いつでもどこでもネットにつながっている環境となる。

 期待のテザリングに関しては、Mac miniで接続して試したところ、下り4.8Mbps、上り950Kbps。本体でダイレクトにテストした時は下り約9.7Mbps、上り約2.7Mbpsだったので、直接使うより遅くなる傾向がある(画面キャプチャではアンテナが2本~3本だが、これは画面キャプチャを撮るのにUSBケーブルへ接続しなければならず、場所を移している関係で、測定している場所はアンテナが最大になっている)。

 さらに少々くせがあり、iPhone 4へ接続し、「Speedtest」アプリを実行したところ異様に遅くなってしまった(Webの表示も遅い)。iPad 2との接続も同様なので、iOSと相性が悪いのだろうか。

ホーム画面(2/5)。メールWidgetホーム画面(3/5)。GALAPAGOS WidgetとWiMAX/テザリング/Wi-Fi切替Widgetが特徴的ホーム画面(4/5)。Evernote WidgetとSnapCap Widget
設定/タブレット情報。Androidのバージョンは3.2.1。3.x系としては最新版だAQUOS RemoteやGARAPAGOS App for Tabletなど、固有のアプリがいろいろある名刺読取以外はAndroidの標準アプリ。Androidマーケットにも対応している
WiMAXやWi-Fiを使ったアクセスポイントの設定などがあるテザリングはWi-Fiだけでなく、BluetoothやUSB接続でも可能テザリングをONにすると、右上のウィジェットがWiMAXとWi-Fiのアイコンを囲むようにブルーとなる
iPhone 4Sから接続。SSIDはAndroidAP。パスワードは任意の文字列を設定可能Mac miniからAndroidAPへ接続して測定。下り4.8Mbps、上り950Kbps。本体から直接使うより遅くなる傾向だ参考までにSoftbank 3Gの自宅での速度。上り3.8Mbps、下り192Kbps

 そして本機最大の目玉「GALAPAGOS App for Tablet」は、「GALAPAGOS STORE」にアクセスできる以外にも、辞書として「明鏡国語辞典MX」、「ジーニアス英和辞典MX」、「ジーニアス和英辞典MX」を内蔵。フォントにも気を配り「秀英横太明朝」、「秀英角ゴシック」、「LC明朝」、「LCゴシック」を搭載し、綺麗なフォントで読書することができる。

 特徴的な画面を掲載したのでご覧頂きたいが、書籍の実際の表示は著作権上、問題がありそうだったので、画面キャプチャしなかった。書籍の表示では、マーカー/辞書連携/しおり挿入/目次・移動バー/サムネイル/本文検索/しおり・マーカーリスト/明るさ設定/縦書き・横書き切替/画面自動回転/音量設定/画像・テキスト切替ボタン/横Fitなどの設定が出来、機能しない部分はグレーアウトになっている。マニュアル不要の簡単さだ。

 初代のGARAPAGOSでは表示の遅い部分もあったが、この「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」は、NVIDIA Tegra2のパワーで何のストレスも無く、普通に読むことが可能だ。いずれにしてもAndroid上にうまく専用アプリが乗った感じで、違和感無く、Androidの世界とGARAPAGOSの世界を行ったり来たりできる。

 加えてツール/各種設定/書籍表示・動作で、文字サイズ、フォント種類、ルビ表示、画面サイズ、書籍表示色、横Fit表示、太文字、縦書き/横書き、段組表示、ページエフェクト種類、タップメニュー表示、バイブレーター設定、書籍設定リセットなどがあり、ユーザーの好みに合わせた設定が可能になっている。

 細かい操作方法などを書き出すと、それこそ本1冊分になるため、漫画、週刊誌、書籍をこの「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」で実際読んだ感想を書いて見たい。漫画と週刊誌については、画面サイズの関係から、(拡大表示も可能だが)文字がかなり小さく読み辛い。特に週刊誌に関しては拡大しないと文字が潰れて読めない状態だ。もちろん年齢の関係もあるだろうが、巻頭グラビアも含めて筆者的にはもっと大きい画面で読みたいところ。

 対して書籍に関しては、もともと文字数も少なく、それなりのサイズで表示できるので、非常に読み易く、何冊も本を持ち歩くことを考えると、「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」1台で済ませるのは十分ありだ。この辺りはかなり個人差もあると思われるので、店頭などで実機を触って確かめて欲しい。

GALAPAGOS STORE。今週の新着など、本屋に行かずに一同に見ることができる購入した書籍一覧。いろいろな書籍がカラフルに並んでいる各種設定/ダウンロードマネージャー/サービスからのお知らせ/マニュアル
情報/一般/通信、更に下にある見えてない部分は、書籍表示・動作があるタイトル別一覧著者別一覧

 Android 3.2.1に標準搭載のアプリケーション以外に、プリインストールされているソフトウェアは、「Adobe Flash Player 10」、「AQUOS Remote」、「Documents To Go 完全版」、「NVIDIA TEGRA ZONE」、「McAfee VirusScan Mobile 30日期間限定版」、「名刺読取」、「Evernote」、「Skitch」、「SnapCal」など、どちらかと言えば、仕事系ツールの割合が高い。

 筆者的に初対面のアプリは、Microsoft Office、PDFなどのデータを扱える「Documents To Go」、カメラで撮影した名刺をOCRによりデータ化し管理できる「SHARP名刺読取」、タッチパネルを使った手書きメモの「Skitch」、そしてより高度なスケジュール管理ができる「SnapCal」の4本。あれば便利なツールだ。

 いずれにしてもAndroidマーケットも使えるので、自分の好みの環境をこれらに加えて行けば良いだろう。

「AQUOS Remote」は、AQUOSをWi-Fi経由でリモート操作できる「SHARP名刺読取」。カメラで撮影した名刺をOCRによりデータ化し管理「Skitch」はタッチパネルを使った手書きメモ
「Documents To Go」。Microsoft Office、PDFなどのデータを扱える「SnapCal」は、Evernoteとの共有やTwitter、Facebookとも連携するスケジューラ「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」操作マニュアル

 以上のように「GALAPAGOS/EB-A71GJ-B」は、単に7型タブレットとして見ても、NVIDIA Tegra2、そしてAndroid 3.2.1を搭載し、快適で扱いやすいマシンだ。10型前後と比較して、迫力のある動画は望めないものの、その分機動力が高い。モバイルWiMAXで何処でも高速なインターネットにアクセスでき、テザリング対応も魅力的。加えて同社独自の「GALAPAGOS App for Tablet」により、多くの書籍を気軽に読むことができる。

 気軽に持ち歩き、どこでもネットへアクセス、そして読書の好きなユーザーにお勧めのタブレットと言えよう。