■西川和久の不定期コラム■
レノボ・ジャパンは24日、英語キーボードを搭載し、18mmとスリムボディのノートPCを発表した。発売は5月27日からで1,000台の限定版だ。実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。
●英語キーボードでデザインにも拘ったノートPC
IdeaPad Uシリーズのラインナップは、液晶パネルが11.6型で、Intel Core i5-430UM/メモリ4GB/HDD 500GBの「U160」、AMD Athlon II Neo/メモリ2GB/HDD 250GBの「U165」の2種類(ほかにもWeb限定モデルなどがある)だった。キャッチコピーは「薄くて軽いスタイリッシュな高性能モバイル」。
そしてこのUシリーズに今回ご紹介する12.5型の液晶パネルを搭載した「U260」が追加された。単にパネルサイズが大きくなっただけでなく、国内のコンシューマ向けブランド製品で初となる英語版キーボードを採用し、サイズ・重量、そしてデザインにもこだわった逸品だ。主な仕様は以下の通り。
【表】レノボIdeaPad U260の仕様CPU | Intel Core i5-470UM (2コア/4スレッド、1.33GHz/TB 1.86GHz、キャッシュ 3MB) |
チップセット | Intel QS57 Express |
メモリ | 4GB(PC3-10600 DDR3 SDRAM)/1スロット空き0/最大4GB |
HDD | 320GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium SP1(64bit) |
ディスプレイ | 12.5型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1+EDR |
その他 | USB 2.0×2、マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ、 Webカメラ、Ambient Lightセンサー |
サイズ/重量 | 318×204.5×18mm(幅×奥行き×高さ)/約1.35kg |
バッテリ駆動時間 | 約4.4時間(4セル) |
店頭予想価格 | 10万円前後 |
プロセッサはIntel Core i5-470UM。2コア4スレッド、クロック1.33GHzでTurboBoost時1.86GHzまで上昇する。キャッシュは3MB。超低電圧版と言うこともありTDPは18Wだ。Intel VTにも対応しているので、XP Modeなども動かすことが出来る。型番からも分かるように、第2世代Core iプロセッサではなく、1世代前のアーキテクチャとなる。
チップセットはIntel QS57 Express。通常このプロセッサそしてコンシューマ向けで一般的なのは、Intel HM55 Expressであるが、薄型軽量のフォームファクターを実現する小型のパッケージ、そしてvPro、AMTなどにも対応したものを採用している(ただし本機はvPro/AMT非対応)。メモリは4GB×1の4GB。スロットが1つなので最大4GBとなる。
グラフィックはCPU内蔵のIntel HD Graphicsで、最新のIntel HD Graphics 3000ではない。プロセッサも含めSandy Bridgeとどの程度差があるかが気になるところなので、後半のベンチマークテストで検証したい。外部出力は、HDMIとミニD-Sub15ピン。最大解像度はそれぞれ、1,920×1,080ドットと2,048×1,536ドットになる。液晶パネルは12.5型でノングレア(非光沢)のHD解像度/1,366×768ドットだ。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/n、加えてBluetooth 2.1+EDRも搭載している。下位モデルのU160もクラスの割には有線LANがGigabit Ethernetなので、同社のこだわりがあるのだろう。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×2、マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ、Webカメラと、メディアスロットが無いなど若干少なめだ。逆にその分、ボディがスッキリして見えるメリットもある。Ambient Lightセンサーは環境光に合わせてディスプレイの輝度を自動調節する機能だ。バッテリ駆動時間は4セルで約4.4時間。
ここまでは、ある意味1世代前のノートPC的なイメージが強くなってしまうが、本機の特徴は、性能上のスペックではなく外装にある。
まず冒頭に書いたように、コンシューマ向けブランド製品では初となる英語版キーボードを搭載している。当然ASCII配列で、カナ表記が無く、実にシンプル。加えて防水設計でありながら、空気を通し本体の熱を分散する仕掛けで、何か飲みながら作業してもある程度安心できる。
ボディの厚みが18mmというのもなかなか頑張っている。更に「IdeaPad U160」より1サイズ大きい液晶パネルを採用し、フットプリントが318×204.5mm(幅×奥行き)になっているにも関わらず、重量を同等の1.35kg(U160は1.4kg)に抑えているのもポイントが高い。1.3kgから数百g重い軽いは、結構持った瞬間のイメージに影響する。少しでも軽いのがいいのは言うまでもないだろう。
またマグネシウム合金を使った上に繋ぎ目のないワンピース構成になっているボディは綺麗だ。カラーはモカブラウン一色。個人的な好みだとブルーが欲しいところ(またレッドもいいかも知れない)。レザータッチのパームレストも斬新。全体的にシンプル&洒落た感じに仕上がっている。
店頭予想価格は10万円前後。上記のプレミアム部分をどう思うかで評価は分かれそうな雰囲気だ。
トップカバーのカラーは「モカブラウン」。渋めのゴールドと言った感じだ。写真からも分かるように、ボディの裏も同じで、どちらもワンピース構造。裏まで色があるのは珍しくなかなか綺麗な仕上がりだ。ただしこの関係で、裏側にはメモリやHDDにアクセスする小さいパネルも無く、バッテリも固定となっている。均一で厚さ18mmのボディは持ち易く、最近は手前と奥の厚みが違うボディが多いだけにある意味新鮮だ。
12.5型の液晶パネルはノングレア(非光沢)。ギラギラした派手さは無いものの、落ち着いた発色で色乗りはしっかりしており特に不満は無い。視野角は上下が少し狭い。
パームレストはブラックのラバー貼り。多くのケースでは、この手の合金を使ったボディは冷たい感じがするが、このラバーのおかげで温かみのある雰囲気を持っている。手に馴染み、何となく落ち着いて作業できそうだ。タッチパッドは軽く段差がありツルツルした金属、そしてボタンは左右独立して2つ。少しストロークは深いものの、ソフトで指が疲れることはない。
キーボードはアイソレーションタイプ。押し心地はこれまでのIdeaPadと言うより、ThinkPad X100に近く、X100よりはソフトな感じだ。キーピッチは実測で約19mm確保され、加えて英語キーボードなので、どこか一部の配列が破綻することもなくスマートに収まっている。
ノイズや振動はほとんど無いが、パームレスト右側がほんのりと熱を持つ。左側が冷たいので余計にそう思うかもしれない。
キーボードの上、左右に配置されたステレオスピーカーは、中・高域よりのエネルギーバランスで低音が明らかに不足。シャリシャリした音質だ。最大出力自体は、ニアフィールドで聴く限り(若干不足気味だが)問題無いレベル。今一歩チューニング不足と言うところ。
パッケージ。後ろが外箱、手前が中箱の2段になっている |
ちなみに、パッケージはIdeaPadとしてはかなり凝った構成となっている。2段構成の箱で、どちらもブラック。中箱の中にiPadやiPhoneのパッケージのような形でボディが収まっている。以前ご紹介した「HP ENVY14 Beats Edition」もこんな感じだった(ただし袋は無い)。ボディ同様、プレミアム感を出すための演出となっている。
●超低電圧版のCore i5-470UMでまずまずの性能
OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。ただしIEは9ではなく8のままだ。メインメモリをIntel HD Graphicsと共有しているので実質3.8GB。デスクトップ左側は、同社のIdeaPadでお馴染みのショートカットが並んでいる。タスクトレイに常駐しているソフトウェアは「Intel HD Graphics」、「ハードディスク・アクティブ・プロテクションシステム」、「Energy Management」、「McAfee アンチウィルスプラス」、「Lenovo VeriFace」、「Synapticsポインティングデバイス」、「Bluetoothデバイス」とシンプルだ。
HDDはHTS543232A。5,400rpmの320GBでキャッシュは8MB。パーテーションは、C:ドライブ約254GB、D:ドライブ29GBの2パーテーションとなっている。C:ドライブの初期起動時の空き容量は236GB。
そのほか、BluetoothコントローラとしてBroadcom BCM2070、Gigabit EthernetコントローラにAtheros AR8151、Wi-FiコントローラにBroadcom 802.11nアダプタが使われている。
起動時のデスクトップ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。Intel HD Graphicsとメモリを共有するので、実質3.8GBとなっている | HDDはHTS543232A(320GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)。BluetoothデバイスはBroadcom BCM2070が使われている | C:ドライブ約254GB、D:ドライブ29GBの2パーテーション |
プリインストールアプリケーションは、「YouCam」、「McAfee アンチウィルスプラス」、「i-フィルター」、「Lenovo VeriFace 3.6」、「OneKey Recovery」、「Lenovo Energy Management」、「Lenovo DirectShare」、「Lenovo EasyCamera」、「Lenovo EE Boot Optimizer」など、最近同社のノートPCとしてはよくある構成だ。 起動時間最適化ツールの「Lenovo EE Boot Optimizer」を試したところ、何回か再起動している間に36秒から27秒へと9秒短縮された。
ただこれまでと少し変わったのは「Google Chrome」がインストール済みなのと、「Lenovo Security Suite」が追加されている点だ。特に前者はこれまでいろいろなノートPCを試用してきたが、プリインストールなのは初めてだ。
Lenovo Security Suite | Lenovo DirectShare | Lenovo EE Boot Optimizer |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.4。プロセッサ 5.6、メモリ 5.6、グラフィックス 3.4、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 5.9。
少し前に掲載した第2世代Core iプロセッサ搭載「IdeaPad Z570」(Core i5-2410M、2コア/4スレッド、2.13GHz/Turbo Boost 2.9GHz、キャッシュ3MB)は、プロセッサ6.9、メモリ5.9、グラフィックス5.7、ゲーム用グラフィックス6.2、プライマリハードディスク5.9だった。多くはグラフィックス系の違いで、プロセッサは-1.3、メモリは-0.3の差だ。グラフィックスに関しても普通に操作するのならスコア差ほどの違いは体感では感じない。
試しにYouTubeのHD動画を再生したところ、コマ落ち無しでウィンドウ/全画面表示共に30fpsで再生OKだった。Flash Player 10.2以降、描画が軽くなりこの手のマシンでもHD解像度は問題無く再生出来るようになったと思われる(筆者の所有するThinkPad T43でさえも再生できる)。
1080pに関してはコマ落ちは無いものの、fpsが半分未満となった。搭載している液晶パネルがHD解像度なので、更に高解像度の外部ディスプレイを付けない限り気になる事は無いだろう。
CrystalMarkは、ALU 19068、FPU 19155、MEM 13384、HDD 9214、GDI 6924、D2D 1058、OGL 1484。「IdeaPad Z570」は、ALU 40094、FPU 40242、MEM 34751、HDD 11428、GDI 14171、D2D 1368、OGL 2448。ALUとPFUがほぼ半分、MEMが約3分の1、グラフィックス関連は少しマイナスの差だ。クロック差が倍近くあるので、ほぼスペック通りの違いとなる。
BBenchは、「Energy Management」の「電力セーブ」モード、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残0%で11,055秒(3.0時間)。スペック上の4.4時間には届かなかった。バッテリが本体内蔵で固定のため、この3時間は主で外で使うにはちょっと短い。例えば普段は室内だが、たまに気分変えて近所のカフェで……と言った用途になるだろうか。
以上のようにIdeaPad U260は、英語キーボードとスリムなデザインにこだわったボディが印象的。国内の店頭ではあまり見かけない洒落た雰囲気を持つノートPCだ。
プロセッサがCore i5-470UMと1世代前、バッテリ駆動時間が短めと気になる部分もあるが、普段使いならパフォーマンスは十分。他人とはちょっと違ったものを持ってみたい人にお勧めの1台と言えよう。