■西川和久の不定期コラム■
デルは10月26日、A4ノートPCのミッドレンジからハイエンドに位置付けする「XPS」シリーズを発表した。従来の「Studio 15/17」の後継機種に相当する。編集部からラインナップ中、最上位となる「XPS 17」が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
●ハイエンドのマルチメディアノートPC
XPSシリーズのラインナップは、14型1,366×768ドットの液晶パネルを搭載した「XPS 14」、15.6型1,366×768ドット(オプションでフルHD)の液晶パネルを搭載した「XPS 15」、そして今回ご紹介する、17.3型1,600×900ドットの液晶パネルを搭載した「XPS 17」と、3つに分かれている。
「XPS 17」の基本構成は、Core i5-460M(2コア/4スレッド、2.53GHz/Turbo Boost 2.8GHz、キャッシュ3MB)、メモリ4GB、HDD 640GB(7,200rpm)、GeForce GT 435M(1GB)、Blu-ray Discドライブ、64bit版Windows 7 Home Premiumとなる。価格は109,980円だ。BTOでいろいろなカスタマイズができ、今回手元に届いたスペックは以下の通り。
【表】XPS 17の仕様CPU | Core i7-740QM(4コア/8スレッド、 1.73GHz/Turbo Boost 2.93GHz、キャッシュ6MB) |
チップセット | Intel HM57 Express |
メモリ | 8GB/DDR3-1333、4スロット空き2、最大16GB |
HDD | 500GB(7,200rpm)×2 |
光学ドライブ | Blu-rayコンボドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit版) |
ディスプレイ | 17.3型ワイド光沢液晶、1,600×900ドット |
GPU | NVIDIA GeForce GT 445M/ビデオメモリ3GB、 HDMI(HDMI 1.4/Blu-ray 3D、 3D TV出力対応)出力×1、mini DisplayPort×1 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×2(1つはeSATAと併用/powershare対応)、 メディアスロット、Webカメラ(720p)、内蔵マイク、 ヘッドフォン出力×2(1つはS/PDIFと併用)、マイク入力、 地デジチューナ、JBL製スピーカー5W×2と12Wサブウーファー |
サイズ/重量 | 414.9×287.3×32.8-38.5mm(幅×奥行き×高さ)/約3.43kg |
バッテリ駆動時間 | 約2.8時間 |
価格 | 基本構成で109,980円(税込)から |
CPUは、Core i7-740QM。4コア/8スレッド、クロックは1.73GHzでTurbo Boost時2.93GHzまで上昇する。キャッシュは6MB。チップセットはローエンドで一般的なIntel HM55 Expressではなく、Intel HM57 Expressだ。一番の違いはRAID機能の有無となる。メモリは最大16GBで、今回は4GB×2の計8GB、4スロットあるため、2スロットが空きになっている。
HDDは7,200rpmの500GBが2台。先に書いたようにRAID構成にもなるのだが、普通の2ドライブ構成になっていた。光学ドライブはBlu-rayコンボドライブ。
GPUは、ビデオメモリ3GBを搭載したNVIDIA GeForce GT 445M。NVIDIA Optimusに対応し、省電力作動時にはCPU内蔵のIntel HD Graphicsに切り替わる仕掛けになっている。出力は、HDMIとmini DisplayPortが1つずつ。加えてこのHDMI出力はHDMI 1.4で、Blu-ray 3D/3D TV出力対応し、“外部に3Dテレビを接続”すると3D映像を観ることができる(本体の17.3型液晶パネルは対応していない)。NVIDIAではこれを「3DTV Playテクノロジー」と呼び、同社のノートPCとしては初搭載となる。
17.3型ワイド光沢液晶の解像度は1,600×900ドット。HD/1,366×768ドットより解像度は高いものの、フルHD/1,980×1,080ドットよりは解像度が低い。XPS 15では選べたフルHD液晶パネルがBTOに無いのは残念なところ。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0に対応している。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×2、メディアスロット、720pのWebカメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン出力×2、マイク入力、地デジチューナ、JBL製2.1チャンネルスピーカーとなる。なお、USB 2.0の1つはeSATAと併用、電源OFF時にもUSBバスパワーで充電できるpowershareにも対応だ。ヘッドフォン出力の1つはS/PDIFとの併用となっている。同社のノートPCとしては地デジチューナを内蔵するのは初めてだ。
BTOでは、 CPUはデュアルコアのCore i5や、最大16GBまでのメモリ、GPUにGeForce GT 435M(1GB)またはGeForce GT 445M(3GB)を選択可能。HDDは全て7,200rpmで、320GB~1.5TB(750GB×2)を選べる。HDDの代わりに256GBや512GB(256GB×2)のSSDも選択可能。このほか、光学ドライブをDVDスーパーマルチドライブ/Blu-rayコンボドライブ、地デジチューナの有無、バッテリ(6または9セル)、無線LAN、OSなどの選択ができる。
このようにハードウェアスペックは、USB 3.0、地デジチューナ内蔵、NVIDIA Optimus/3DTV Playテクノロジー対応と、AV指向が強く、なかなか高性能な内容となっている。
サイズ414.9×287.3×32.8~38.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約3.43kgはさすがに大きく重い。ほとんどオールインワンPCの乗り。デザインは明るいシルバーと暗いシルバーとを使い分け、非常にシンプルでチープな雰囲気も無く好印象だ。
興味深いのは、USB 3.0×2、地デジチューナ用アンテナコネクタ、HDMI出力、mini DisplayPortが背面にあること。このサイズなので、両サイドにスペースがあるにも関わらず、後ろ側に配置している。これは据え置き型に近い形で使用するシーンを想定してのことだろう。後ろにケーブルが集中するので、フロント側から見た時、スッキリして見える。
17.3型の液晶パネルは光沢タイプだ。発色もコントラストも高く、最大輝度は明るい。視野角も広いため、正面だけではなく、少人数でコンテンツを鑑賞しても大丈夫になっている。
キーボードはテンキー付きで、アイソレーションタイプではなく普通の形状だ。キータッチが少しソフトな感じで、従来のものとは異なる。キーピッチも20mmと、ほぼフルキーボード並みに確保されている。1点気になったのは、矢印キーの面積が極端に狭いことだ。この原稿を書くため、いろいろ操作したが、どうもこの部分だけ押し辛かった。
タッチパッドとパームレストはボディサイズに余裕があるため十分広く、ボタンも軽過ぎず硬過ぎず、調度良い感触だ。
スピーカーは、パームレストの左右手前と、裏にサブウファーが1つ付いている。いわゆる2.1チャンネル。以前別の機種で同タイプのものを聞いた時、サブウーファーのカットオフ周波数が高いためか、低音も含め音が全体的に偏って聞こえたが、XPS 17ではその様な事もなく、ノートPCとしてはなかなかパンチの効いた音質となっている。最大出力も十分あり、音楽や動画コンテンツを迫力のある音で楽しめる。
ノイズや振動などは、特に感じず、動画や音楽に集中できる。ボディが大きい分、この辺りの処理はうまくできているのだろう。
●十分なパワーと快適な再生環境OSは、64bit版のWindows 7 Home Premium。メモリを8GB搭載しても全て利用するとこができる。デスクトップは、画面中央上にある同社固有の「Dell Dock」にいろいろなショートカットがまとめられているため、何も無く非常にスッキリしている。CPUがCore i7-740QM、メモリ8GBと言うこともあり、何をしても余裕で動き快適な環境だ。これだけのマシンなので欲を言えば、解像度は1,600×900ドットではなく、フルHDの1,980×1,080ドットであれば更に良かった。
HDDはSeagateの「ST9500420AS」、500GB/7,200rpm/キャッシュ16MBが2基。光学ドライブは、ソニーの「Internal Slim Optical BD COMBO BC5540H」、Wi-Fiユニットは「Intel Advanced-N 6200」が使われている。
HDDのパーティションは先に書いた様に、チップセットがIntel HM57 Expressなので、RAID対応可能なのだが、今回は2ドライブ構成だ。1つはC:ドライブとして約451GB、もう1つはD:ドライブでまるまる約465GBが割当てられている。
起動時のデスクトップ | デバイスドライバ/主要なデバイス | HDDのパーテーション |
まずXPS 17の特徴でもあるJBL製2.1チャンネルオーディオのコントロールに「Dell Audio by Realtek」が使われている。キーボード右上/右側のボタンを押せばこのパネルが表示される。マイク/スピーカーのボリューム調整に加え、「Waves MaxxAudio」でサウンドのコントロールが可能だ。OFFよりONの方がより音が豊かになる。また音の傾向をプリセットで選べ、筆者が試した範囲だと「音楽」が一番それらしく聞こえた。主にダイナミックレンジ/周波数特性/ステレオ感を改善している様だ。「Andreaマイクロフォンテクノロジー」はノイズキャンセリングのプラグインとなっている。
「Windowsモビリティセンター」は、同じく機能キー/左側を押す。ここからBluetoothのON/OFF、機能キー中央のアプリケーション設定などが行なえる。
同社初となる内蔵地デジチューナは、Windows Media Centerを使って操作する。リモコンは付属しないが、17.3型液晶パネル搭載のノートPCなので特に問題はないだろう。
そしてもう1つ、720pのウェブカメラ、マイクのノイズキャンセリング機能搭載と言うこともあり、Skype認定のもと、ソフトウェアが標準でインストールされている。ノートPCとしては、このXPSシリーズが初認定となる。
Dell Audio by Realtek | Windowsモビリティセンター | 地デジチューナはWindows Media Centerで操作する |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は5.9。内訳は、プロセッサ7.1、メモリ7.1、グラフィックス6.8、ゲーム用グラフィックス6.8、プライマリハードディスク5.9。全体的にハイスコアだが、バランス的に7200rpmとは言え、HDDの遅さが目立つ格好だ。ここはプライマリドライブにSSDを使いたいところか。
CrystalMarkは、総合147,289、ALU 34,221、FPU 32,183、MEM 23,733、HDD 11,345、GDI 9,567、D2D 12,118、OGL 24,122。ビデオメモリ3GBのNVIDIA GeForce GT 445Mを搭載していることもあり、グラフィックス系はかなりのハイスコアとなっている。ビデオメモリ1GBのGeForce GT 335Mでは、GDI 9,462、D2D 6,195、OGL 19,290だったので、ワンランク違うことがわかる。
BBenchは、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残3%で10,851秒(3.0時間)だった。システムを考えるともっと短いと思っていただけに、3時間は良い意味で意外な結果だ。ただサイズがサイズなだけに、室内での移動がメインとなり、省電力モードではなく、フルパワーで動かしたままバッテリ駆動してもこの値なら安心だろう。
以上のように、同社としては初の地デジチューナ内蔵、JBL製2.1チャンネルオーディオ、GeForce GT 435M、1,600×900ドットの17.3型液晶パネル、Blu-rayドライブなど、AV指向の強い製品となっている。もちろんCPUはCore i7-740QMなので、パワーについても申し分ない。その割りに基本構成で109,980円(税込)からと、価格も抑えられているのが魅力的だ。メインで使え、デスクトップPC並みのノートPCを求めている人にお勧めの一台と言えよう。