■西川和久の不定期コラム■
2010年は3D TV元年と呼ばれ、デジタルTVは3D対応機が人気だ。もちろんPCも各社からちらほら3D対応機が登場。そのような中、富士通の3D対応オールインワンPCが届いたので早速レポートをお届けする。
同社は6月9日、PCの夏モデル「ESPRIMO(エスプリモ)」を発表した。中でも「ESPRIMO FH」シリーズは、従来の「DESKPOWER F」シリーズに相当する液晶一体型のオールインワンPCだ。
20型液晶パネル搭載モデルは3モデルあり、CPUにCeleron T3300などスペックを抑え地デジ×1を搭載する「FH530/1AT」、3D立体視/地デジ無しの「FH550/3A」、そして今回ご紹介する3D立体視/ダブル地デジの「FH550/3AM」がラインナップされている。それぞれ店頭予想価格は、14万円強、16万円、20万円前後。仕様は以下の通り。
【表】ESPRIMO FH550/3AMの仕様OS | Windows 7 Home Premium 32bit版/64bit版(セレクタブル/32bit版デフォルト) |
CPU | Intel Core i3-350M(2.26GHz/TB無し、3MB L3キャッシュ) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 4GB(2GB×2使用/2スロット、空き0) |
HDD | 1TB(HDT721010SLA360/1TB、7,200rpm、16MBキャッシュ) |
液晶パネル | 3D対応20型ワイドスーパーファインVX液晶、1,600×900ドット |
グラフィックス | Intel HD Graphics |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
インターフェイス | USB 2.0×5、地上デジタル×2、地上デジタルアンテナ端子(F型)×1、音声入出力、Webカメラ×2、B-CASカードスロット、メモリカードリーダ |
その他 | ワイヤレス日本語キーボード、マウス、Office Home and Business 2010 |
サイズ/重量 | 497×391×198mm(幅×高さ×奥行き)/重量約10.4kg |
価格 | 199,800円(WEB MART販売価格) |
CPUはIntel Core i3-350M、クロック2.26GHzだがTurboBoostは無し。L3 cacheは3MBとなっている。チップセットはIntel HM55 Express、グラフィックスはIntel HD Graphicsと、Core iプロセッサを使ったPCとして標準的な構成だ。メモリは、2スロットで2GB×2と既に4GB搭載し、空きスロットは無い。最大8GBまで搭載可能。
OSは32bit版と64bit版のWindows 7 Home Premiumがセレクタブルとなっている。ただし、デフォルトでは32bit版がインストールされ、64bit版にするにはリストアしなければならない。
ストレージは7,200rpmの1TB HDDと、Blu-ray Discドライブを搭載。これなら録画するにも光学メディアを再生するにも十分対応できる。
そして特徴的なのが、偏光板方式3Dに対応した20型1,600×900ドットの液晶パネルを搭載していることだろう。左右の画像を偏光フィルターで合成、偏光フィルターメガネ(バッテリ不要)で再生する。どの程度それっぽく見えるのか興味のあるところだ。
3D表示出来るコンテンツは、Blu-ray 3D、DVD映像(ソフトウェア的に3D化/Fujitsu PowerDVD9 3D Playerを使用)、写真を3D化(TriDef 3Dを使用)、3Dゲーム(3D Game Driver for Fujitsuを使用)などがある。Windows Media Center上で動くデュアル地デジチューナも見逃せないポイントだ。ただし地デジの3D映像化には非対応となっている。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは搭載していない。その他のインターフェイスとして、メディアリーダ、USB 2.0×5、Webカメラ×2などがある。Webカメラについては3D映像で撮影可能だ。キーボード、マウス、リモコンは無線式となっている。
残念なのは、拡張用としてHDMI出力もしくは映像入力、光デジタル出力などは、一切装備していないことだろう。小型とは言え20型なので、このPCを中核としてAVシステムを組みたいユーザーには対応できない。コストとのバランスもあるだろうが、この手のPCには、ぜひ欲しい機能だ。
これまで続けてレビューしたオールインワンPCが全て23型だったこともあり、箱から取り出した第一印象は「結構コンパクト!」だった。たった3インチ違うだけで受ける雰囲気が随分変わる。机の上に置いた時の威圧感は無く、スッと周りに溶け込むイメージ。サイズ497×198×391mm(幅×奥行き×高さ)、重約10.4kgなので、取り回しも楽に行なえる。
偏光板方式3Dに対応した液晶パネルは、非常に明るく最大だと眩しいほど。彩度も高く、原色系の発色はとても鮮やかだ。ただ偏光板方式3Dの関係だろうか、文字などはシャープなのだが、ちょっと横に細い線が入っているように見える。
この手のPCで欠かせない音のクオリティーに関しては、中域を中心とし、なかなかバランス良く高域も低域も伸びている。最大音量はかなり大きく、用途的には十分以上だと思われる。
付属のキーボード、マウス、リモコンは全て無線式だ。コンパクトにまとまっていて、質感もそれなり。バッテリの残量なども確認できる。ただ標準のマウスの設定では、マウスポインタの移動量が多過ぎるように思える。
そして3D映像に欠かせない偏光メガネはプラスチック製で非常に軽く、筆者のように常にメガネをかけている人でも、その上から偏光メガネをかけてもあまり違和感は無い。
さすがにこのサイズに電源は入らなかったのか、電源はACアダプタ形式になっているのが筆者的には残念なところ。その分、熱やノイズに関しては気にならないレベルに仕上がっている。
●3D用アプリケーションをプリインストール初めて電源を入れた時、OSも含め初期化が行なわれる。この時ちょっと興味を持ったのが、HDDのパーティションを設定できることだ。特に初心者で「HDDが一杯になった!」と、見ると確かにC:ドライブは残りが少なくなっているものの、D:ドライブは空のまま……と言うのはよくある話。
「ESPRIMO FH550/3AM」は1TBのHDD(HDT721010SLA360、7,200rpm/16MBキャッシュ)を搭載し、デフォルトではほぼ半々の約450GBをC:ドライブとD:ドライブに割当てられている。これをユーザーの好みに応じて配分を変更できる。これだけストレージが大容量化した昨今、なかなか粋な計らいだ。ただ初心者がこの意味を理解できるかどうかは疑問なので、デフォルトはC:ドライブ1パーティションでもいいのではないだろうか。
Blu-ray Discドライブは「BD-5730S」、地デジチューナはデュアルの「AverMedia A329 MiniCard Dual ISDB-T」を搭載している。
20型の液晶パネルに1,600×900ドットは、文字サイズもちょうど良く、フルHDではないものの、用途的には十分デスクトップも広い。また同社固有の設定として「ポイントを選択し、シングルクリックで開く」になっている。これを一般的な動作に戻すにはフォルダーオプションで「シングルクリックで選択し、ダブルクリックで開く」へ変更すれば良い。
プリインストールされているアプリケーションは、「テレビNaviガジェット」、「ノートン インターネットセキュリティ 2010」、「ウイルスバスター 2010」、「i-フィルター 5.0」、「AzbyClub ツールバー」、「@nifty でブロードバンド」、「知っておきたい7つのポイント」、「サポートナビ」、「かんたんバックアップ」、「PC乗換ガイド」、「AzbyClubガジェット」、「パソコン準備ばっちりガイド」、「アップデートナビ」、「マイリカバリ」、「かんたんバックアップレスキュー」、「3Dカメラビューアー」、「Corel Digital Studio for FUJITSU」、「DigitalTVbox」、「Roxio Creator LJ」、「Corel WinDVD」、「Corel Direct DiscRecorder」、「Fujitsu PowerDVD9 3D Player」、「TriDef 3D」、「筆ぐるめVer.17」、「電子辞書」、「広辞苑第六版」、「リーダーズ英和辞典第2版」、「新和英中辞典第5版」、「現代用語の基礎知識2010年版」、「新漢語林MX」、「三省堂デイリー3カ国語辞典(6種)」、「家庭医学館」、「学研パーソナル統合辞典(4種)」、「デジタル全国地図いつもNAVI」、「てきぱき家計簿マム6」、「うれしレシピ」、「脳力トレーナー 脳年齢脳ストレス計 アタマスキャンfor 富士通」、「柿木将棋VIII Light」、「GAMEPACK 2010F」、「タッチで熱帯魚!」、「PointGrab ハンドジェスチャーコントロール for FUJITSU」……そして「Office Home and Business 2010」など、非常に豊富だ。
中でも特徴的なのが、「PowerDVD9 3D Player」、「TriDef 3D」、「タッチで熱帯魚!」(「3D Game Driver for Fujitsu」を使用)、そして「PointGrab ハンドジェスチャーコントロール for FUJITSU」この4つだろう。前者3つは3D映像、最後の1つは離れた場所で手を使ったPCコントロールを可能にする。いずれも文字では書き辛いので動画を撮影した。
既存のDVD映像を3D化するには、「PowerDVD9 3D Player」画面キャプチャの「TrueTheater 3Dを使う」側にチェックを入れる。3D映像に関してはこの状態で録画しても立体的には見えないが雰囲気だけでも味わって欲しい。写真を3D化するにはエクスプローラーの右クリックで「TriDef 3D Media Playerで再生」を選択する。
個人的な感想としては、どちらもこれまで無かった新しい体験であることは間違いなく、なかなか面白い仕掛けだ。ただ慣れの問題もあると思うが、ちょっと試した範囲ではハンドジェスチャーに関しては操作が難しかった。掲載している動画も4テイク目だったりする。うまく扱えるようになれば手だけで音量などをコントロールできるので便利だろう。
肝心の3D映像は、まず3Dに見える範囲がエリアが狭くピンポイント。モニタからの距離にもよるだろうが、ちょっと首を振るだけで両サイドが二重に見えたり不自然な映像となる。この関係もあり複数人数で楽しむ用途には向いていない。1人専用と思って欲しい。また3Dと言っても昔良く見かけた立体的に見えるパネルのような映像で、2Dの映像や写真に奥行き感だけ加わった雰囲気だ。ソースのクオリティにもよるだろうが、個々の被写体(?)は平面的で、例えば人の顔は丸みを帯びた立体感は無く、顔は平面でその背景が奥にあるような見え方となる。
また、筆者の場合は長時間の視聴後、目の疲れあり、メガネを外すと何も見てもピントが合わない状態がしばらく続いた。この件に関しては、小型液晶パネルで高解像度表示するのと同様、個人差がかなりあると思われるので、店頭などで試して欲しい。
【動画】ジェスチャーコントロール。左右に手を振り、コントロールパネルを起動。音量調整は手を左(音を小さく)または右(音を大きく)に回転させる |
【動画】3D映像。再生すると中央から左右2つに分離している映像が1つに見える。メガネ無しだと何かダブった感じだ |
ベンチマークはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.6。内訳はプロセッサ6.2、メモリ5.5、グラフィックス4.6、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9。Core i3-M330(2.13GHz)を搭載したThinkPad 201iと若干凸凹はあるものの、ほぼ同じスコアといなっている。
CrystalMarkはHDDが7,200rpmタイプなので1万越えと速い。こちらもCore i3+Intel HD Graphicsの組合せとしては一般的な値だ。
試しにGPUを使わないFlash Player 10でYouTube 1080pの動画を再生したところ、コマ落ちも無く非常にスムーズに再生された。この時、CPU使用率は50%前後。GPUを使用するFlash Player 10.1で再度テストしたところ25%前後とCPUの使用率は半分になった。いずれにしても十分なパフォーマンスだ。
以上のように「ESPRIMO FH550/3AM」は、Intel Core i3-350M/HM55 Express、地上デジタル×2を搭載したオールインワンPCとして見た場合、ちょっと洒落たマシンであるものの性能的には平均的。やはり最大の特徴である偏光板方式3D対応をどう捉えるかで本機の評価は分かれるだろう。いち早くPCで3D体験したいユーザーに向いた製品と言えよう。