■西川和久の不定期コラム■
日本HP「Mini 210 Vivienne Tam Edition」
少し前に日本ヒューレット・パッカード「Mini 210」の記事を掲載したが、今回はそのMini 210をベースにしたVivienne Tam Editionだ。単にボディへペインティングしただけでなく、いろいろな部分でかなりこだわった内容になっている。早速その内容をご紹介したい。
●ノーマルモデルとの違い
ベースとなっているMini 210は、CPUにシングルコア/2スレッドのAtom N450プロセッサを搭載。メモリコントローラとGPUのGMA 3150を内蔵した2010年版とも言えるAtomプロセッサだ。チップセットはIntel NM10 Express。Pine Trailプラットフォームとなる。
メモリ1GB、OSはWindows 7 Starter、10.1型1,024×600ドットの液晶パネル、有線LANは100BASE-TXまで、無線LANはIEEE 802.11n対応、そしてUSB 2.0を3つ、Webカメラ、5in1メディアスロットなど、スペックはオーソドックスなネットブックの仕様だ。
これに対してVivienne Tam Editionは、CPUやチップセット、I/O関連は同じであるものの、メモリ2GB、OSはWindows 7 Home Premium(32bit版)、パネルサイズは同じ10.1型でも解像度1,366×768ドットとワンランクアップしている。Windows 7 Home Premiumで2GBのメモリだとストレス無く普通に操作できる上に、解像度も高いので環境としても快適だ。ノートPCを構成する主な部分、メモリ、OS、解像度がこれだけ変わると、ベースモデルとはかなり違った印象を受ける。主な仕様は以下の通り。
HP「Mini 210 Vivienne Tam Edition」仕様 | |
---|---|
CPU | Intel Atom N450プロセッサ(1コア/1.66GHz/キャッシュ512KB) |
チップセット | Intel NM10 Express |
メモリ | 2GB/SO-DIMM(PC2-6400 DDR2-SDRAM/最大2GB) |
HDD | 250GB(7,200rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(32bit版) |
ディスプレイ | 10.1インチ ワイド ハードコート・クリスタルビュー・ディスプレイ、1,366×768ドット |
GPU | CPU内蔵GMA 3150、アナログRGB出力 |
ネットワーク | Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE 802.11b/g/n |
その他 | USB 2.0×3、5in1メディアスロット、Webカメラ、オーディオIN/OUT、ステレオスピーカー、マイク、ワイヤレスマウス付属 |
サイズ/重量 | 268×179×23.5~28.5mm(幅×奥行き×高さ)/約1.18kg |
バッテリ駆動時間 | 最長約4.25時間/3セルバッテリ時 |
HP Directplus価格 | 63,000円~(※4月26日より販売予定) |
先に挙げた部分以外は、サイズや重量も含めノーマルのMini 210と同じとなる。ただし、1,366×768ドットの解像度は、HP Directplusのみの扱いであり、量販店モデルは従来通りの1,024×600ドットなので注意が必要だ。ノーマルモデルが49,980円からなので、約1万3千円高いことになるが、メモリ+1GB、OS Windows 7 Starter→Home Premium、液晶パネルの解像度 1,024×600→1,366×768ドット、ワイヤレスマウス付属などを考慮すると、逆にお買い得と言えよう。
前回、「裏が外れずメモリやHDDの交換が難しい」と、間違った情報を書いてご迷惑をおかけしたが、実際はドライバレスで止めている爪をうまく外して行くと、裏全体が外れる仕掛けになっている。ただし、今回のVivienne Tam Editionに関しては、同じく外れるものの、素材がプラスティックなので、慎重に行なわないと割ってしまう可能性がある。とは言え、標準でメモリ2GB、HDD 250GB搭載しているので、特に外す必要は無いと思われる。
そして何より特徴的なのが、この蝶をモチーフにした「Butterfly Lovers」デザインだ。ノーマルのボディはシルバーとブラックがベースとなったある意味万人向けのデザインだったが、このゴールドをベースにした「Butterfly Lovers」は、若い女性をターゲットにしたものとなる。単体で見るとちょっと派手過ぎる印象を受けるが、実際、今時の女の子に持ってもらうと冒頭の写真のようにばっちりマッチし、第一印象は「可愛い!」だった。
まず物が届いた時に驚いたのは、梱包しているダンボール箱のサイズが大きいことだ。フットプリントはほぼ同じなのだが、厚みが2台分ほどある。「なぜかな?」と思ってあけて見て納得。写真にあるゴールドの箱が出てきた。さらにそのゴールドの箱の中にある封筒までもゴールド。そして、ソフトケースに包まれた本体を取り出すと、蝶にゴールドの天板、底もキーボードもゴールド……と、ゴールド尽くしとなっている。これまでもデザインもののノートPCは、何度か扱ったことがあるが、ここまでこだわっているのは初めてだ。
サイズ268×179×23.5~28.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.18kgと軽量級。これなら女性がカバンなどへ入れ持ち歩くのも大丈夫だろう。
キーボードはノーマルのMini 210と同じアイソレーション・タイプだ。たわみもわずかで、感触も良い。キーピッチも約19mmと十分。約1カ月前にMini 210を触ったため、記憶はあいまいだが、キーボードユニット自体は同じで、カラーリング違いとなっているように思う。ファンクションキーは[Fn]を併用しないパターンで明るさや音量調整などの機能キー、[Fn]キーと併用で従来のファンクションキーとなるため、筆者的にはちょっと使いづらい。
タッチパッドは、左上のドットがパッドのON/OFFスイッチとなっており、OFFの時にLEDが点灯する。また、ボタンは無く、タッチパッド自体がシーソーのように若干左右に傾きボタン代わりとなっている。好みもあるだろうが、割とスムーズに押すことができる。
10.1型1,366×768ドットの液晶パネルは光沢タイプだ。1,024×600ドットのパネルと比較して気持ち暗めの感じがするが、コントラストも高く、視野角に関しては上下左右とも、少し広い。
ノイズや振動、スピーカーの音量・音質などは、ノーマルモデルと同じ。気にならないレベルで、音に関しても十分コンテンツが楽しめる。
以上のように、多くの部分が、ノーマルボディと同じであるものの、カラーリングと画面解像度の違いにより、全体的に受ける印象は全く別のモデルと思ってしまう。逆に男性としては、ノーマルボディの高解像度版も欲しいところだ。
●蝶が舞うWindows 7 Home Premiumノーマルモデルではメモリが1GBと言うこともあり、かなり引っかかった動きをしていたが、Windows 7 Home Premiumにメモリ2GB、7,200rpmの250GB HDDと言うこともあり、特に何かに不満があるわけでなくわりと普通に操作できる。ただ前回は東芝MK2556GSYだったが、今回はHTS725025A9A364が使われていた。Cドライブに約222GB割当てられている。
プリインストールされているアプリケーションは、「ノートン・インターネットセキュリティ2010(60日間試用版)」、「HP DVD Suite Essentials」など同じ構成だ。
さて、ボディだけでも十分インパクトのある「Vivienne Tam Edition」だが、そのこだわりは、Windows本体にもあまり他では見られない工夫が施されている。まず、起動時のデスクトップの画面キャプチャをご覧頂きたい。見慣れたWindows 7のデスクトップとは何かが違う。よく見ると「スタート」ボタンのアイコンが蝶に、そしてユーザーアイコンの下にも蝶がいる。壁紙はボディの天板と同じ壁紙だ。
起動時のデスクトップは天板と同じデザインだ。しかもデスクトップ・アイコンは隠れている | デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは7,200rpmのHTS725025A9A364 | HDDのパーテーション。Cドライブには約222GBが割当てられている |
さらにこの蝶の部分、「スタート」ボタンの位置にアイコンを置くと羽がパタパタと動き、スタートメニューが開くと、蝶が飛び回る仕掛けが入っている。これにはさすがに筆者も驚いてしまった。加えてフォルダ・アイコンまでスペシャル。完全にボディのデザインと一体化したWindows環境になっている。
加えて、デスクトップ・アイコンは通常隠れており、デスクトップ上をダブルクリックすると表示/非表示となる。これは壁紙の雰囲気をアイコンで壊さぬための仕掛けだそうだ。飛び回る蝶の動きやデスクトップ・アイコンの表示/非表示は動画としてまとめてあるので是非ご覧頂きたい。
My COLORS/Vivienne Tam Edition | フォルダなどのアイコンもデザインが違う | デスクトップをダブルクリックすると現れるアイコン |
【動画】飛び回る蝶/デスクトップをダブルクリックすると表示ON/OFFするアイコン |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は2.4。内訳は、プロセッサ2.4、メモリ4.7、グラフィックス3.0、ゲーム用グラフィックス3.0、プライマリハードディスク5.9。CPUはシングルコアAtomなので少し低い値だが、他の部分に関しては十分実用範囲となっている。
CrystalMarkはノーマルのMini 210と比較して、少し不思議な結果が出た。同じハードウェアにも関われず、GDIとFPU以外は全体的に速くなっている。特にALUがかなり異なるスコアだ。似ているマシンとして「Mini 5102」と比較してもALUとFPUは随分違う。
BBenchは、電源プランを「省電力」にして、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果、バッテリの残5%で9,674秒(2.7時間)。ノーマルのMini 210でのテストは約2.5時間だったので、電源プランの変更で少し伸びたことになる。いずれにしてもスペック上は最長約4.25時間なので、もう少し持って欲しいところ。外で使うことが多い時は、別売りの6セルバッテリ(8,400円)を用意したい。
YouTubeは480pまではOK(ただし動きが激しいシーンでは若干コマ落ち)。HD/フルHD動画はNGとなる。これはCPUパワーと動画支援機構が無いGMA 3150なので仕方ないところだが、液晶パネルの解像度がHD対応だけに、以前紹介した「Broadcom Crystal HD」など、外付けの動画支援機構が欲しいところだ。
HP「Mini 210 Vivienne Tam Edition」は、単にボディのデザインにこだわっただけでなく、梱包、備品、そしてWindows本体までも全体のイメージに合わせてカスタマイズし、トータルコーディネートを行なっている。いろいろな制限があるネットブックでも、ここまでこだわれば十分魅力的な商品に仕上げることができるという良い例と言える。さらにWindows 7 Home Premiumにメモリ2GB、液晶パネルは1,366×768ドット(HP Directplusのみ)と、純粋にノートPCとして見てもなかなかの実力だ。今後もっといろいろなモデルが出てくることを期待したい。
モデル:木村亜梨沙@Style Corporation
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