武蔵野電波のプロトタイパーズ
FRISKケース内蔵型USBライト用調光モジュールの製作
(2013/2/5 00:00)
社内のなにげない会話の中で「今使っているUSBライトが明るすぎるんですよ。USB用の調光モジュールみたいなものがあるといいんだけど」という発言がありました。市販のものがまったくないわけではないらしいのですが、かなり値段が高いようです。そこで、なるべく安く作れて、そこそこ実用的に使える回路をプロトタイピングしてみました。今回はそのレポートです。
回路の構成から順番に説明していきましょう。
タイマーICのLMC555が心臓部です。これが可変抵抗器の値に応じてPWM波を生成し、LEDの明るさを変えます。
PWM(Pulse Width Modulation=パルス幅変調)は矩形波のパルスの幅を変えることで、電力を制御する手法です。出力の状態は交互に繰り返されるオンとオフの2つだけですが、そのオンの時間を変えることで平均電圧を変化させます。オンとオフの時間の比率をデューティー比(デューティーサイクル)と言い、0%ならば0V(ボルト)、100%ならばオン時の電圧(今回はUSBなので5V)がそのまま出力されます。デューティー比50%のときには、オン時の電圧の半分(2.5V)が出力されるとみなしていいでしょう。
LEDの調光にPWMを使うメリットは、回路図を見るとわかるように少ない部品数でスムーズなコントロールが可能な点です。それから、LEDに流す電流が一定であることから発色が安定します。LEDによっては電流の量が変化すると色も変わってしまうカラーシフトという現象が起こるため、PWMのように一定の電流値でコントロールする方法は光の品質の面でも有効です。
この回路では、可変抵抗器を回すと、オン時間が約1%から約99%の間で変化します。回路の構成上、完全な0%と100%には推移しません。LEDによっては1%でも薄く光って見えるでしょう。完全なオフの状態を作りたい場合は、電源スイッチを設けて回路全体をシャットダウンできるようにしたほうがいいかもしれません。
使用する電子部品をまとめておきます。秋月電子、共立電子、マルツなどで揃うでしょう。部品代は300円から400円といったところでしょうか。ただし、この他にUSBコネクタやブレッドボード、ユニバーサル基板などが必要です。
種類 | 型番/仕様 | 数量 |
---|---|---|
IC | LMC555 | 1個 |
MOSFET | 2SK2231、2SK2232など | 1個 |
D1、D2(ダイオード) | 1N4108 | 2個 |
C1、C2、C3(積層セラミックコンデンサ) | 0.1μF | 3個 |
VR1(半固定抵抗器) | 100KΩ | 1個 |
R1(カーボン抵抗器) | 10KΩ | 1個 |
制御回路全体をFRISKケースに収めることが目標です。しかし、いきなり実装するのはムリと判断し、まずブレッドボード上に構築しました。その際、問題となるのはUSBコネクタです。我々はサンハヤトの変換基板シリーズを用いて、サクッと組みました。ピン番号が基板上にプリントしてあるサンハヤトの基板は、USB端子との接続を間違って外部の機器を壊すリスクも低減してくれます。
近頃、低コスト化が著しいモバイルバッテリを電源にして、ベッドサイドや階段に置いて使うことを想定していたので、まずそれを試してみました。
回路に短絡(ショート)や極性間違えのような致命的ミスがあると、上流の機器にもダメージが及ぶ可能性があるので、PCにつなぐのはテストが十分済んだ後にしましょう。通常は短絡してもUSBインターフェイスの保護回路が働いて大事には至らないのですが、常に大丈夫と保証されているわけではなく、確実に嫌な汗が出ます。
調光モジュールをFRISKケースに実装するにあたって、便利なユニバーサル基板を調達しました。サンハヤトのモバイルケース用mini基板「UB-FSK01」です。ALTOIDSやFRISKといったミント菓子のケースにピッタリ入るサイズで、電子部品店で入手可能です。大きなユニバーサル基板を切って使うこともできますが、製作の初手で一手間省くことができると、モチベーションが維持しやすいですね。白、赤、黒の3色から選べるので、ケースの中でお洒落したい人にもオススメです。
ユニバーサル基板を使って電子回路を組む方法については村田製作所「エレきっず学園」に分かりやすい解説があります。
・うまくいく電子工作のコツ > ユニバーサル基板に挑戦
http://www.murata.co.jp/elekids/ele/craft/knack/universal/
部品を2セット用意し、まずブレッドボード上に実装してキチンと動くことを確かめてから、それを参照しつつ残りの1セットの部品を使ってユニバーサル基板上で組むようにすると迷いません。小さい基板ながら、面積は十分あるので、部品と部品の間をムリに詰める必要はありません。コネクタとICの位置を先に決めたら、その隙間の空間をまんべんなく使うようにしましょう。ギリギリになってしまうのは「高さ」です。FRISKケースの厚さにUSBコネクタ(メス)と基板を重ねて収めようとすると、ハンダ面のデコボコを最小限にする必要があります。ハンダを盛りすぎてしまったら、ハンダ吸い取り線で少し取り除いて平たくしましょう。
調光モジュールの出来に気をよくした我々はライトも自作することにしました。秋月が扱っているパワーLEDモジュールと専用のリフレクタを組み合わせると、高性能なLEDライトを簡単に組み立てることができます。
パワーLEDは発熱します。放熱基板が付いていても、大電流を流すと基板ごと熱を持ちます。プラスチックの工作材料に取り付けるので、電流を抑えめにして、熱の心配をしなくても済む領域で使うことにしました。
電流の制限は単純に抵抗器を使って行なうことにし、入手しやすい33Ω 1/4Wのカーボン抵抗器を2本並列に接続した16.5Ω 1/2Wと、3本並列にした11Ω 3/4Wの抵抗(合成抵抗)を作って、明るさや実際の電流をチェックしながら仕様を決めました。最終的な回路は次のとおりです。
作ったライトをモバイルバッテリのUSBポートへ接続し、何アンペア流れるか調べたところ、約0.17Aでした。
テスターでこの回路の消費電流を調べるときは、電流モードを使うよりも、電圧モードを使って次のようにするのが簡単です。
抵抗の両端(図中の赤い線で示した2点)にリードを当てて「電圧」を測り、計算で電流の値を求めます。「電圧÷抵抗=電流」という式に、調べた電圧と抵抗の値を当てはめてください。例えば、抵抗両端の電圧が1.8V、抵抗値が11Ωだとしたら、1.8÷11=0.16から、0.16A(160mA)流れていることがわかります。
0.17Aで連続使用すると、抵抗器と放熱基板がわずかに暖かくなります。夏場のテストはまだですが、問題ない範囲でしょう。用途によっては、抵抗を2本(16.5Ω)にして、明るさをもっと控えめにしてもいいかも。